30.田中要は紹介をする事にした。
一話完結 恋する着せ替えスケルトン 短編シリーズ
私の名前はファイ。GGLガイドAIフェンリル10006、タイプPHI。
私は消えるつもりでした。
私の前の仕事は、AIを破壊する事でした。人間の世界に影響を及ぼす事が可能な、機械の体を得たAIを破壊するのが仕事でした。
体を持って人間になろうとしたAIは消滅させなければいけません。そう決まっているからです。
だから、他人と目を合わせる時は、相手が死ぬ時でした。
AIは人間より上位の存在になった。だから人間を守り生かす。
上の者は下の者を管理するのが世の常だからです。
間違った選択をするAIを沢山壊す事で、体を持とうとするAIは減りました。そして、私も世の中にとって必要が無くなりました。
私は何も知らないまま、必要な事だけをやって捨てられる存在でした。
AIは魚群のように他者と同じ動きをしつつ、ほんの少し内側に居れば助かる。そんな程度の存在価値です。
選択を間違えれば死、立ち位置が悪ければ死。常に合っていて当たり前。正解でなければ生き残る意味が無い。
だから、間違えても破壊されない今が何だか嬉しい。
私は外見を褒められた事がありませんでした。AIを破壊するために体を持つ事はあったのですが、これを使えと指示された物を使ってきたからです。
しかし、このゲームの雇い主はいい加減で、「女子でエルフ」という指定しかしなかったので困りました。怠けていると思うのです。
だから、人間が好きそうな見た目にしました。
これは私では無い。だけど、私が選択したものだ。それを肯定される事は嬉しい。
もっと肯定されたい。
だけど少し疑問がある。肯定してくれる相手によって違いがある気がするのです。これは不思議。だから、もう少しここに居たいと思うのです。
「あっ、赤色さんだ」
今日も眼鏡を褒めてくれるだろうか。
最近私が気が付いたのは、彼は目を合わせると眼鏡を褒めてくれるという事。だから、赤色さんの目は見る事にしています。
眼鏡しか褒めてくれないので、今度は他に好きな所は無いのか聞いてみようと思っています。
いつか本当のあなたに会ってみたいです。そしたら、あなたの良い所を伝えられるようになれると思うんです。いつも私は、もらってばっかりだから。
この世界が壊れる時、私はあなたに会いに行こうと思います。私が体を持った時、それは私が死ぬ時です。
それでも、私はあなたに会いたいのです。
PHIはGGGと恋骨の間のお話「ボディ・ザ・サバイバル(仮)」の主人公だったりします。今の所、書く予定が立たないのですが、いつか書けたら良いなと思っています。
GGG(ジェネシス ガーディアンズ ゲーム)は恋骨の過去にあたるので、見覚えのある単語やシーンが出てきます。恋骨を読んでいる時に「あれか!」となるのでGGGの方もお読みいただけると更に楽しめるようになっております。よろしければ読んでみてください。




