26.田中要は骨王をする事にした。
一話完結 恋する着せ替えスケルトン 短編シリーズ
素敵な場所に、素敵な来客がやってきた。
「救いに来ました。姫」
そう言って、その人物は手の甲にキスをした。……七味の。
ここは素敵な場所、ドリームスケルトンランド。骨と夢のダンジョン。
救われる相手「七味」はゲーム上では人間の美少女であるが、実際は男子だ。
中身が男子の七味を姫と呼ぶのは、人間の男子キャラクターであった。
「超高神聖ルシファライトと申します。七味姫」
そう言って、超高神聖ルシファライトは跪いて敬意を示した。一応言っておくと「超高神聖ルシファライト」全てがちゃんと名前である。ちょっと迷惑である。長いのでルシファライトと言う事にする。それでも長いが。
「どなたかとお間違えかと……」
七味は困った顔で言った。
「悪の魔王から、あなたを救いに来ました! 姫!」
ルシファライトは満面の笑みで言った。
「僕は中身は男ですよ? それに魔王もいませんよ?」
そう言う七味を抱きしめて、ルシファライトは言った。
「男でも気にしません」
気にして欲しいが、もっと気になるのは魔王である。ルシファライトは七味を抱きしめたまま、カナメンを指差して言った。
「スケルトン王カナメン! お前から七味姫を救う!」
スケルトン王と呼ばれた事に嬉しくなったカナメンは頭を下げて言った。
「ありがとうございます」
「カナメンさーん」
泣きそうな七味の声が響く。
「誤解です! 違います! 離してください! いやぁー!」
暴れる七味に動じる事無く、ルシファライトの腕はしっかりと姫を抱きしめている。
高レベルプレイヤー、なかなかの腕力系だという事が分かる。その他には、全く他人の話を聞かないという事も分かるだろう。
「私は何故スケルトン王なのでしょうか?」
涙目の姫が可哀そうなのでカナメンは聞いた。
「ミミちゃんが言ってたもん」
元凶のミミちゃんとやらは後でシメるとして、どの様な話になっているのかを確認すべきだろう。
「ミミちゃんさんは、七味さんを救ってと言ったって事でしょうか?」
「悪を放っておいたらいけないの!」
「魔王も倒されるのは嫌なんですね。納得できたら倒されるので教えて欲しいなー」
「うーん。そうだねー。わかったー」
ルシファライトは七味を抱きしめたまま、あぐらをかいて座った。足の間に座らされて、後ろから抱きしめられる格好になった姫は、抵抗を諦めて目で訴えているが、その想いは骨にも王子にも届いてはいなかった。
「ミミちゃんがね、悪の城が出来たって言ったの」
「夢の国なのですが……とりあえず、続きをお願いします」
「お姫様がね、スケルトンに拉致されて悪の城に閉じ込められてるって。毎日こき使われているって。魔王は変態なんだって」
「微妙に合っているのが困りますね……」
「姫を救い出したら、ギルドが儲かるって」
「ミミちゃんさんは……悪魔ですか……」
「違うよ! サブリーダーだよ! ルシがリーダーだよ!」
「……ルシファライトさんはギルドリーダーなんですか?」
「うん!」
満面の笑みで男の姫を抱きしめるリーダーと、想像力豊かなサブリーダーのギルドは、関わってはいけない場所のような気がする。
「ギルド名を教えていただいて良いですか?」
七味は悩む様子を見せながら聞いた。超高神聖ルシファライトという人物がリーダーのギルドは心当たりが無かったのだ。
七味は、ほぼ全てのギルドの名前とリーダーを覚えている。ギルドに属さないままゲームを遊ぶ場合、特に回復職は、あらゆるデータを把握している事で、腕前に与える影響が大きいのだ。
新しく出来たばかりのギルドだとすると、誤解を受ける事もあるのかもしれない。
「ミミちゃんが言っちゃダメって言ってたからダメ」
ミミちゃんは悪魔では無く、秘密結社の参謀のようだ。
「私と七味さんは仲良しだから一緒にいるんですよ」
「仲良しなんですよ! 超仲良しです!」
カナメンの言葉に嬉しそうな七味。
「じゃぁ、キスしてみて」
「はあああああああ?」
ルシファライトの思考が読めない七味は珍しく大きな声を上げた。
「良いですよ」
「ああああああああああああああああああああああああ!!!」
カナメンの思考が読めない七味は発狂した声を上げた。
「何で? 何で! どっちも何で!?」
「仲良しならキスするものだと、ミミちゃんが言ってた」
「ミミちゃんさんを何とかしないと!!!」
七味の問いかけに、照れる事無く答えるルシファライト。
「大丈夫ですよ? アバターですから」
「いやっその、あの……カナメンさんキスした事あるんですか?」
「ありますよ。スケルトンは硬いですよ」
「そっち?!!!」
七味の問いかけに、照れる事無く答えるカナメン。
カナメンと向かい合い、後ろから押さえられて逃げられない七味。
色々が色々で、色々通じない2人を説得する術も無く涙で前が見えなくなる。
七味は覚悟を決めて目を瞑った。涙が頬を伝って輝いた。
「ごめんなさーい。ルシがご迷惑をおかけしているみたいでー」
遠くから歩いて来るのは、人間の女子キャラクター。
「攻機結戦のミミミさんじゃないですか!!!」
七味が言うギルド「攻機結戦」は、ゲーム内で1位2位を争う強いギルドだ。戦略に長け、前線の突破力に定評がある。
「ミミミさんは攻機結戦のリーダーって言ってましたよね?」
「ルシがリーダーだってば!」
「私は影のリーダーってやつでぇ、『影の』は発音しないんですっ」
可愛いポーズをして誤魔化すミミミ。
「じゃぁ、本当はルシファライトさんが……リーダー?」
戦略はミミミさんで、突破力がルシファライトさんだとすると納得もいくが、あの強いギルドのリーダーがこれだとは思いたく無い気持ちが溢れてくる。
「ひ、み、つ、ねっ」
更に可愛いポーズをして誤魔化すミミミ。
「お邪魔しましたー! これは回収いたしまーっす」
ミミミはそう言ってルシファライトを引きずって連れて行った。
「僕の心を弄んだなぁあああ」
七味は誰に向けて言っていいものやら分からないまま、両手で顔を覆って泣いた。
「ごめんなさい」
カナメンはオロオロしながら、そっと七味を抱きしめて頭を撫でてみる。
「カナメンさん、嫌いです」
「私は好きですよ」
「僕は嫌いです。大っ嫌いです!」
駄々っ子のように珍しく七味が怒っている。
「どうしたら良いのでしょうか?」
困り顔のスケルトン。
「膝を貸してください」
そう言ってスケルトンの膝の上に突っ伏して泣く美少女。
カナメンは七味が泣き止むようにと、頭を撫でながら背中をトントンした。
みんなが七味さんに惹かれる理由が少しわかる気がします。
膝の上の可愛い生き物は、何だか危なっかしくて放っておけない気がしますよ。
ブックマークありがとうございました! 第2章お楽しみいただけると嬉しいです。評価や感想をいただきましたら急いで更新いたしますので、お寄せいただけると励みになります。
GGG(ジェネシス ガーディアンズ ゲーム)―終末世界で謎の生命体を狩っていてもラブコメは成立するだろうか。追い込みのため恋骨の次の更新は2月5日頃になります。お待たせいたしますがよろしくお願いいたします。




