25.田中要は開園をする事にした。
一話完結 恋する着せ替えスケルトン 短編シリーズ
その日、ドリームスケルトンランドは賑わっていた。とうとうオープンを迎えたのだ。
VRMMORPG GGL (ジェネシスガーディアンライフ)キャラクターになりきって遊べる、仮想空間を利用したゲーム内に新しい狩場が出来た。
ガラス張りで100階建ての高層ダンジョンは、中心が空洞の円柱状になっていて、1階にはレイドモンスターが展示されている。
レイドモンスター「ホネタウロス」は角の生えた屈強な骨太スケルトンだ。
1時間以内にモンスター全種類を倒すと動き出すという条件があるため、普段は博物館よろしく触ったり、近付いても問題が無いようになっている。
レイド討伐中は、塔の中のモンスターを倒すとホネタウロスを弱体化できるため、ランクが低い冒険者もレイド討伐に参加出来るようになっている素晴らしいダンジョン。なのだが、全てのモンスターがスケルトンという、マニア向けになっている。
1階はクエストを受けられる案内役のPHIのカウンターがある。
ファイはエルフ女子であり、人工知能AIであり、人見知りであり、根暗である。仕事は出来る、乳もある。ただ、他人と目が合わせられないだけだ。
何でこのような人物が案内役なのかというと、だれも骨しかいない職場で働きたくないためだ。むさ苦しい職場に可愛い女子が山ほどいるなんてのは幻想だ、夢物語だ、給料が高いかだ。
「先着300名にスカルフラッシュ、プレゼント中です!」
スケルトンは声を上げた。
スケルトン男子「カナメン」というキャラクターで遊ぶ田中要は働いていた。自分の夢が叶って、スケルトンだらけのダンジョンが出来上がった。真っ先に遊びたいと思うのが普通ではあるが、このスケルトンは一味違う。
自分にそっくりなスケルトンが倒されるのがとても嬉しいのだ。変態で、マニアックで、大人なのだ。
GGLというゲームで、プレイヤーが操作できる種族は「人間」「獣人」「スケルトン」となっている。異彩を放つスケルトンを選んで遊ぶ奇人は、要のみである。
スケルトンの魅力を普及したい。そのため、前々から「スカルフラッシュ」を作って準備してきた。
スカルフラッシュというのは、光るだけの機能を持った頭蓋骨だ。スケルトンのスキルで作る5センチぐらいの小さな頭蓋骨は、真っ暗なダンジョンなどで活躍する。普通は丸い玉の「スケルトンフラッシュ」という物なのだが、要の努力で頭蓋骨バージョンがあみだされた。
「ご来場ありがとうございました」
カナメンが頭を下げる姿はどう見てもゲームマスターだ。感謝一杯の低姿勢だ。普通のプレイヤーだと忘れてしまいそうなほどだ。
ゲームマスターは皆、スケルトンのキャラクターを使っている。全てのスケルトンの中で、ゲームマスターよりもカナメンが一番腰が低いと言えてしまいそうだ。
「是非、またいらっしゃってください!」
大勢のプレイヤーでごった返すドリームスケルトンランドの一番輝いている日であった。
その後の事は……。
広い空間、静かなスペース、輝くガラス、博物館のような建物。幻想的で神秘的で素敵なダンジョン。
なのに、毎日ここで狩りをするのは「カナメン」と「七味」だけ。
スケルトンしか倒す事が出来ない狩場は、最初は物珍しさから賑わったが、1週間もすると人の姿は明らかに減って、完全に過疎狩場と化してしまった。
残念スケルトンランド。寂しいこの場所で、カナメンと七味は狩りをする。
アンデッド狩りにおいては回復魔法が使える七味が攻撃役になる。七味は人間の美少女キャラクターだ。中身は男子なので、骨に怯える事も無い。というか、毎日骨と一緒に遊んでいる。
カナメンはモンスターを集める引き役になる。
カナメンはスケルトンフラッシュを取り出した。光る機能しか無い丸い玉だ。右手には鞭が握られている。骨と鞭……飴と鞭……何でもないです……すみません。
放り投げたスケルトンフラッシュは宙を舞う。鞭を振るうと、しなやかな鞭は球体を捉えた。モンスターの体に当たると、跳ね返り、壁に当たる。
そこから部屋の中央へ飛び出すと、カナメンの振った鞭がまた捉えた。勢いを増しモンスターに当たり、壁や天井に当たり、球体は部屋中のモンスターをまとめていく。
鞭が一振りされると、スケルトン達の目標はカナメンへと移った。
一斉にスケルトンがカナメンに襲い掛かる。それを器用にかわすカナメン。
骨の稼働範囲に熟知しているカナメンは攻撃を避けるのに特化していた。モンスターからダメージをもらう事無く、集団をまとめ上げていく。
「ホーリー ムーブメント!」
七味の詠唱と共に、多数の魔法陣が地面に描かれる。
ホーリームーブメントは魔法陣を生成し、上を通過した相手に回復魔法をかけるものだ。死せるアンデッドにとって、回復はダメージを与える攻撃へと意味を変える。
魔法陣は混ざり合うかのように素早く動き回る。一度に多くの数の魔法陣を作れ、位置を動かせるのは手練れにしか出来ない。七味は上位のプレイヤーなのだ。
カナメンによって、まとめられた大量のスケルトンが、重なり合った魔法陣の上に来ると、光を発した。そして、スケルトンモンスターは一斉に姿を消した。
「幸せだ」
澄んだ心で、澄んだ狩場をカナメンは堪能していた。混んでいても空いていてもここは最高の場所。
過疎っていても心は錦。
次話から第2章になります! 田中要がとうとうスケルトン王に?!「26.田中要は骨王をする事にした。」 ブックマークをいただけた嬉しさで、次話更新早めました! 感謝です!
GGG(ジェネシス ガーディアンズ ゲーム)――終末世界で謎の生命体を狩っていてもラブコメは成立するだろうか。恋骨の更新がお休みの日にお読みいただけると嬉しいです。




