18.田中要は対決をする事にした。
一話完結 恋する着せ替えスケルトン 短編シリーズ
その日、VRMMORPG GGL (ジェネシスガーディアンズライフ)というゲームの仮想世界は賑わっていた。珍しいイベントが行われるからだ。
「ゲームマスターVSプレイヤーのスケルトン対決」
対決するのは人工知能AIのTAUとカナメンである。
田中要はスケルトンキャラクター「カナメン」としてゲームを遊んでいる。要はスケルトンが大好きで遊んでいるのだが、このゲームの中で、キャラクター種族をスケルトンに選ぶような風変わりな趣味の人間は1人しかいない。
そのため、スケルトンだけが持つスキル「冥府の門」を見た事が無い人がほとんどだ。
今回のイベントは「冥府の門、開門対決」である。普段見る事の出来ないものが見られるとあって、沢山の観客が集まっていた。
「解説のミフネさん」
ゲームマスターのOMICRONは言った。
オミクロンはタウの先輩であり、そして、オミクロンもAIである。やっぱり見た目はスケルトン。GGLというVRゲームはAIがプログラム、運営、管理をしている。
司会はオミクロン。そして、解説に呼ばれたのは、ギルド「ブロッサム」の「ミフネ」であった。ブロッサムはゲームで一番有名なギルドである。そのギルドリーダーのミフネもまた、優秀なプレイヤーだ。
「今回の対決はどちらが有利と見ますか?」
オミクロンの質問にミフネは軽快に答える。
「プレイヤーとしては、カナメンさんに勝って欲しい所ですが、カナメンさんは既に1%を出しているのでそこをどう見るかですね」
冥府の門は、99%混沌を生むという、迷惑極まりないスキルだ。
異界とつながった門を召喚し、そこから何かの骨が出てくる。その骨は肉体を持ち、攻撃をするというものなのだが、「99%の混沌」が示すように何が生まれるかもわからない上に、大抵ハズレといういわくつき。
スケルトン自体がいない上に、使う場面が限られるこのスキルは、ほとんどの人が見た事が無いのも当然だった。
自信満々に腕組みをして睨み付けるタウ。恥ずかしそうにしているカナメン。
何とも対照的な状態なのは、カナメンに勝つ気がないからである。注目される事に慣れておらず、こんなに人が集まるとは思っていなかったので、早く終わって欲しいと願う気持ちの方が強かった。
「GMタウ対カナメン、冥府の門3本勝負! スタートです!」
オミクロンの掛け声でイベントは開始された。
イベントでは冥府の門を出して、中から出て来たモンスター同士が戦い、勝ち負けを決める。スキル詠唱は途中まで一緒に行い、最後の開門は先攻の選手が先に行う形だ。その勝負を3回繰り返して勝敗を決める事になっている。
「第一試合、先攻はGMタウ選手です。では詠唱を開始してください」
オミクロンの指示で、タウとカナメンはスキルの詠唱を始める。
2人は両手を前に伸ばした。
「冥府の門よ」
詠唱を始めると、右手の甲が青く光る。
「死の番人よ、生の守護者よ」
左手の甲が青く光る。
「我が声に答えて、門の前に立て」
伸ばした手の平の先に青い魔法陣が現れる。
「我が心に応えて、門の扉を叩け」
魔法陣は回転を始めた。
「我が命に応えて、門を開け放て」
タウの後ろには中規模の門が現れた。
カナメンの後ろには……門が無かった。
「カナメン選手、不発でしょうか?」
オミクロンが残念そうな声を上げる。
「いえ。門は出ていますね」
ミフネは冷静に言葉を返した。
そこには、膝ぐらいまでの高さしかない小さな門が立っていた。
「これは門が小さい! 小さすぎるぞ!」
先攻のタウは叫んだ。
「開け! 冥府の門、ジェネシス ガーディアンズ ゲート!」
鈍い音を立てて門は開く。扉の奥から骨が闇と共にやってくる……門をくぐると骨は激しく煙をあげながら肉体を形作り、二足歩行で屈強な肉体を持つモンスターになった。
「これは、ギガンテスですね。なかなか強いですよ」
後攻のカナメンは叫んだ。
「開け! 冥府の門、ジェネシス ガーディアンズ ゲート!」
軽い音を立てて門は開く。扉の奥から骨が可愛らしい感じにやってくる……門をくぐると骨はほんの少し煙をあげながら肉体を形作り、四足歩行の小さなモンスターになった。
「これは、イージーラビットだー! 勝負ありですね!」
オミクロンが自信満々に言った。
ギガンテスは強力な肉体と凶暴性を併せ持ったモンスターだ。それに対して、イージーラビットは、小さなウサギ。誰にも勝負ありと見えた。
「まだ分かりませんよ。倒せなければ勝利にはなりませんから」
ミフネは冷静さを保ったまま言った。
ギガンテスはイージーラビットを攻撃する。イージーラビットはキュゥという鳴き声を上げながら、2つに分裂した。ギガンテスがもう一度攻撃をすると、イージーラビットは更に分裂して増えた。
「イージーラビットは物理攻撃を受けると分裂する性質があります。弱点は魔法。倒すには魔法を使用するしかありません。しかし、ギガンテスは物理攻撃しか出来ないため、あと10時間もすれば、イージーラビットの集団でギガンテスを倒せるでしょう。これは、カナメン選手の勝利ですね」
ミフネは不適にニヤリと笑いながら解説をした。
「なるほど! この試合、カナメン選手の勝利とします!」
オミクロンにより、カナメンの1戦先取が告げられた。
歓声に沸く観客たち。悔しさに骨を噛むタウ。
「第二試合、先行はカナメン選手です。では詠唱を開始してください」
オミクロンの指示で、タウとカナメンはスキルの詠唱を始めると、タウの後ろには中規模の門が現れた。カナメンの後ろにも中規模の門が現れている。
「同じぐらいの大きさですね。良い勝負になりそうです」
「開け! 冥府の門、ジェネシス ガーディアンズ ゲート!」
先攻のカナメンは叫んだ。
鈍い音を立てて門は開き、四足歩行の骨がやってきた……門をくぐると骨は煙をあげながら肉体を形作り、腐った犬のモンスターになった。
「ゾンビイーヌですね。こいつは仲間を呼ぶので、同じぐらいの相手が1体であれば、有利になりますね」
「開け! 冥府の門、ジェネシス ガーディアンズ ゲート!」
後攻のタウは叫んだ。
またもや、四足歩行の骨がやってきた……そして、ゾンビイーヌに変化した。
「なんとー!!! 双方、ゾンビイーヌです! ミフネさんこの場合どうなりますか?」
「ゾンビイーヌは雄叫びで仲間を呼びます。しかし、このモンスターは最初は攻撃をしてこないんですよ。敵に攻撃をされたタイミングで、全員による集中攻撃をするモンスターです」
「ということは?」
「引き分けですね」
「この試合、引き分けとなりました! カナメン選手が第三試合で勝利又は引き分けでもカナメン選手の勝利となります!」
絶望の表情をしたタウは、スキルを取得し始めた。
「運+」「運+」……「運+」
周囲の観客から不満の声が上がる。
「これはどうなんでしょうか……不正に当たるのでしょうか……」
不安そうにオミクロンはミフネに助けを求めた。
「途中でスキルを取ってはいけないという規定はありませんので……グレーゾーン……ですかね。運が上がっても勝てるとは限りませんので、何が出るかは門を開けてみるまでわかりません。これで負けたら凄く恥ずかしいですけどね」
「第三試合、先攻撃はGMタウ選手です。では詠唱を開始してください」
オミクロンの指示で、タウとカナメンはスキルの詠唱を始める。と、大きな歓声が上った。
タウの後ろには天まで届く、そして立派な装飾の施された大きな門が現れた。カナメンの後ろには大きいけれど、装飾は無い真っ黒な門が現れている。
「大きさは同じ、されどGMタウ選手の門に描かれた豪華な装飾は、高グレード確定でしょう!」
「開け! 冥府の門、ジェネシス ガーディアンズ ゲート!」
先攻のGMタウは叫んだ。
鈍い音を立てて門は開く。扉の奥から巨大な骨が暗黒を纏ってやってきた……その姿は、激しい煙と共にドラゴンへと変化を遂げる。
「ど、ドラゴンです! ゲーム最強モンスタードラゴンが登場しましたあー!!!」
オミクロンの言葉にガッツボーズをするタウ。
カナメンがドラゴンを出さなければこの勝負はタウの勝ちとなる。しかし、ドラゴンを出すのは1%を引き当てるという事だ。2人ともドラゴンとなる訳が無かった。
1対1の引き分けで、延長第四戦で決着を付ける形になる。
「開け! 冥府の門、ジェネシス ガーディアンズ ゲート!」
後攻のカナメンは叫んだ。
鈍い音を立てて門は開く。扉の奥から二足歩行の巨大な骨がやってきた……しかし、その姿は変化せず骨のままだ。
「どういう事でしょう。カナメン選手失敗でしょうか? まさかの肉体までスケルトンか?」
みんなが不安そうに騒ぎ始めると、骨は言葉を発した。
「我が名はゲームマスター、ALPHA。タウの上司だ」
オミクロンは噴いた。
「アルファ課長何してるんですか!!!」
「それはこっちのセリフだ。状況を見て見ろ」
GMアルファの言葉の通り、周囲は地獄への階段を着実に上っていた。
イージーラビットはギガンテスに殴られ増え続け、ゾンビイーヌは仲間を呼び続けている。そして、ドラゴンがゾンビイーヌの1匹を踏んだ瞬間、噛みつかれたドラゴンが激しく暴れ始めたのだ。
ドラゴンに踏まれて増えるイージーラビット。ドラゴンを追いかけるゾンビイーヌ。暴れるドラゴン。イベント会場は阿鼻叫喚を極めた。
――ブッツン――
参加者全員の視界が真っ暗に……負荷によりサーバーが落ちたのだった。
公式サイトには、メンテナンスのお知らせと、カナメンの勝利が告知されていた。
恋するスケルトンはサクサク読める1話完結の短編集です。評価や感想をいただきましたら急いで更新いたしますので、お寄せいただけると励みになります。




