16.田中要は所望をする事にした。
一話完結 恋する着せ替えスケルトン 短編シリーズ
「旅行ですか?! 指輪ですか?! 何でも言ってください!」
七味の剣幕に後ずさりしながら、カナメンは言った。
「何もいらないです」
「違うんだ!」
「落ち着いてください、七味さん」
ここは、VRMMORPG GGL (ジェネシスガーディアンズライフ)という、仮想空間を使ったゲームの中だ。
七味と呼ばれている美少女はカナメンというスケルトンに迫っていた。
何でこんな事になっているかというと、眠ってしまったお詫びに行った映画で、七味こと皆川七見は眠ってしまったからだ。
『シースルー ~真実の恋の物語~』が面白くなかったのが理由ではない。主役がスケルトンだったからではない。疲れていたのだ。
疲れているのを知っていたので、カナメンこと田中要は寝かせておいた。その失敗を更に埋め合わせしようと七味は迫っている。
「本当に良いのですよ」
困り果てた声でカナメンは言った。欲しい物は何もない。スケルトンが大好きな要は、カナメンで遊べているだけで幸せだし、七味がカナメンと遊んでくれているのが何よりの報酬だからだ。だけど今回は何かを所望しないと修まりそうにない。
「何でも良いんです! 希望を言ってください。お金でも体でも! いや! 違う、そういう意味じゃなくて!」
いつも可愛らしい美少女がここまで取り乱すとは、少し面白い。
「何か考えますので。待ってもらえますか?」
カナメンの言葉にようやく七味は冷静さを取り戻した。
「すみません。はい。待ちます」
落ち込んでいる姿も可愛いとは罪な男だ。
そう。この美少女の中身は男子である。メンズスケルトンの中身が女子である時点で、色々間違ってはいるのだが、好きなアバターを選んだらこうなったのだから仕方がない。否、寧ろ良い。
「じゃぁ、倉庫整理を手伝ってください」
カナメンは言った。
「これ貰ってください。自分では使わないので」
そして、キャラクターの洋服を七味に手渡す。
「違うんだ!」
「七味さんに似合うと思いますよ?」
何かをあげたかったのに、逆に貰ってしまった事に七味は困惑する。
「着て欲しいな」
「分かりました! 着ます!」
可愛い美少女の出来上がり。素晴らしい目の保養だ、おおいに癒された。
要は可愛い物とスケルトンが大好きなのだ。ただし、可愛いスケルトンでは決してない。同列であり、別物である。混ぜるな危険なのである。
七味は服のセンスが無い。センスというか、オプション重視で気にしないので、いつもちぐはぐな装いだ。
田中要の部屋には、可愛い服が沢山ある。しかし、着る用の服では無い。見る用の服だ。決して着ない。似合わないからだ。
パーカーにジーンズ姿が最高に似合う。胸にさりげないスケルトン刺繍を施したパーカーがお気に入りで、色違いも持っている。
自分が欲しくて作った物だ。他には、パーカーの紐に小さなスケルトンがぶら下がっている物もあり、こちらもおすすめだ。
これらのパーカーのおかげで、南桔梗と知り合ったラッキーアイテムでもある。
要が勤めている会社の社長、桔梗とはアンデッドフェスティバルで出会った。
桔梗は美しいゾンビを作る。血だとか腐敗とかのグロテスクではなく、生きているような美しい中に、死が閉じ込められているフィギュアを作っている。
「ブライトゾンビ」と名付けられたそれらは、死と生の狭間にある妖艶な姿。消えて無くなる儚い一瞬の美。花の散る瞬間のようなものだなのだ。
田中要は「可愛い花、美しい花があるように、可愛いゾンビ、美しいゾンビもあるのだ」と言いたい!
血の気の無い肉体に、死んだのにほとばしる生命感が好きなのが桔梗で、人の基本となる骨に、死んだのにほとばしる生命感が好きなのが要だ。
より人間に近い方が好きなのが桔梗で、物体に近い方が好きなのが要だ。それは本人たちの性格にも近い。
生きている人間が苦手で、だけれども、どうしても人間が好きなのだ。そこが、2人の共通点であり、仲が良い理由だ。
ゾンビが好きという言葉だけで、才色兼備な桔梗は急にモテなくなる。
いつかゾンビごと受け止めてくれる人が現れると良いなと思う。だけど、抱きしめる時はゾンビが前で桔梗が後ろの挟む感じになるので、難しいかもしれないが。
GGG(ジェネシス ガーディアンズ ゲーム)――終末世界で謎の生命体を狩っていてもラブコメは成立するだろうか 2章の前半が完結いたしました。丁度良い区切りで落ちが付いておりますので、読んでいただければ嬉しいです。
明日も恋するスケルトンを更新いたします! ブックマークや評価などいただけましたらお話を急いで更新いたしますので、お寄せいただけると励みになり嬉しいです。よろしくお願いいたします。




