15.田中要は静観をする事にした。
一話完結 恋する着せ替えスケルトン 短編シリーズ
「映画を観にいきませんか?」
美少女が声をかけてきた。
声をかけた方は人間の美少女キャラクター「七味」中身は男子の皆川七見。
声をかけられた方はスケルトンの骨男子キャラクター「カナメン」中身は女子の田中要だ。
2人はVRMMORPG GGL (ジェネシスガーディアンズライフ)という、仮想空間を使ったゲームで遊んでいる。
七味は先日ゲーム内で寝落ちをして、カナメンに肩を借りてしまった埋め合わせがしたいらしい。
謝る必要も、埋め合わせをする必要も無いと思っているカナメンなのだが「カナメンさんが好きそうな映画なんです」と言われたら気にはなる。
「シースルー ~真実の恋の物語~」
勘の良い方はお気づきだろうが、スケルトン映画である。
お金持ちでカッコいいモテモテ男が、スケルトンになってしまうというお話だ。そっからどうにかこうにか、真の恋に目覚めて、色々あってのラブロマンスに持って行くお話らしい。誰が頑張ってお話を捻り出し持って行く事になるのかは考えたくないが。
VR技術の発達により、映画はヘッドマウントディスプレイを使って観るようになっている。大きなスクリーンが無くても映画館が作れるようになったので、ショッピングモールには必ずと言って良いほど映画館があり、常に沢山の映画が上映されている。
映画館に行く必要が無さそうだが、誰かと一緒に同じ物を見て、その帰りに感想を話しながら帰るというのも、なかなか乙なものである。
要たちが普段遊んでいるVRMMOとVR映画の違いはというと、MMOの場合はキャラクターを作って自分で動かす事が出来るのだが、映画の場合は指定された視点で見るという点が違っている。
今は遠くから見て欲しい、今は主人公になりきってみて欲しいという、映画監督の指示が自然に入ってくるのだ。VRなので、上下左右に多少の自由はあるが、それも場面や映画に寄りけりである。
超大作のファンタジー映画になると、360度どっぷりとファンタジー世界に浸れる。まるでそこに立っているみたいな臨場感だ。
恋愛映画となると、ほぼ部屋なので、予算が少ないものなどは後ろが真っ黒なんて事も起こる。
ホラー映画は……言うのは止めておこう。
映画館の神経接続は、防犯上弱く設定しており、途中で外しても大丈夫なように作られている。映画の外の世界の音も小さく聞こえるので、少しの会話ぐらいなら出来る感じだ。
お洒落でゆったりとした座席。薄暗くしてある部屋。落ち着いて観れる防音の空間。ちょっと贅沢な雰囲気に気分も上る。観るのはスケルトン映画だとしてもだ。
『シースルー ~真実の恋の物語~』
「なんてこったい!」
トムは煙だらけの研究室で叫んだ。
「最悪だ。俺の美貌が透けている」
トムは優秀な研究者だ。しかし、大発明は大爆発した。その爆発から起こった肉体のシースルー化。透明人間になれるならそれも良かった。
だけれども……鏡に映ったトムは骨を残して透明になっていたのだ。つまり、スケルトンだけが残っていた。
映画はそんな感じの始まり方だった。
トムは骨を隠すために超厚着。カツラにマスクとサングラス姿で、肌の部分には化粧をして会社に向かう。
上司に怒られサングラスを奪われると、まぶたの上に目が描いてある。顕微鏡をのぞいている時以外は目をつぶって話す所で、2人は同時に笑ってしまった。
その後は、海で全身に砂を付けて乗り切ったり、博物館で展示物に間違われてポーズを取った所など、笑いのツボが近かった。少し嬉しく思う。
田中要はふと肩に重みを感じる。皆川七見は眠ってしまっていた。疲れていたのだろう。もちろん今回も寝かせておいた。
映画館から借りたブランケットをかけたから今日は安心。ゆっくりおやすみ。お疲れ様。
GGG(ジェネシス ガーディアンズ ゲーム)――終末世界で謎の生命体を狩っていてもラブコメは成立するだろうか 2章の前半が完結いたしました。丁度良い区切りで落ちが付いておりますので、読んでいただければ嬉しいです。
3日連続で恋するスケルトンを更新いたします! ブックマークや評価などいただけましたらお話を急いで更新いたしますので、お寄せいただけると励みになり嬉しいです。よろしくお願いいたします。




