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恋骨!~恋するスケルトン~田中要はVRMMOゲームでスケルトンになって恋をする事にした。  作者: 熊谷わらお
第1章 スケルトンは恋の夢を見るのか? 1話~25話【完結】
14/83

14.田中要は推理をする事にした。

一話完結 恋する着せ替えスケルトン 短編シリーズ

「お出かけしませんか?」

 美少女が声をかけてきた。


 街では無い。仮想空間でだ。VRMMORPG GGL (ジェネシスガーディアンズライフ)は仮想空間を使って遊ぶゲームである。


 声をかけた方は人間の美少女キャラクター「七味(しちみ)

 声をかけられた方はスケルトンの骨男子キャラクター「カナメン」


 女子が男子を誘うのは珍しい事では無いが、この2人はややこしい事に、美少女である七味の中身が男子の「皆川(みながわ)七見(ななみ)」であり、スケルトンの中身が女子の「田中(たなか)(かなめ)」である。

 男子が女子を誘っているのでそれも珍しい事では無いが、美少女がスケルトンを誘っているのは、珍しいと言えるのかもしれない。


「海を見に行きませんか?」

 七味の言葉にカナメンは動きが止まった。この所、立て続けにお出かけしている。

 赤色(あかいろ)53号こと(たちばな)瑞稀(みずき)とビルの最上階で食事。ミフネこと御船(みふね)健吾(けんご)とホテルの最上階でディナー。今度は七味こと皆川七見と……。


 田中要はモテる訳では無い。というかモテる要素が無い。好きな物はスケルトン。中身の見た目は地味。そんなに社交的な性格でも無い。むしろ部屋に籠ってゲームをするのが日課。仕事が終わったらすぐゲームがしたいので、真っすぐ家に帰るほどなのだ。

 着飾るのも大変だし、気を張って疲れてしまう。そんな事が立て続けに3度ともなると、こちらの事情とはいえ断ってしまいたい気持ちにもなる。


「お疲れですか?」

 七味の可愛い顔が残念そうに(うる)む。中身が男子なのに、この可愛さだ。

「大丈夫ですよ。行きましょう」

 少し元気が出た。よし、がんばるか。


「では、ここから少し歩くのですが」

「え?」

「どうしました?!」

「いえ。思っていたより近かったので」

「遠くの海が好きですか?」

「近い方が好きです」


 現実世界の海だと思っていたなどとは、恥ずかしくて言えない。そういえば、七味はゲーム内で散歩をするのが好きな人だったと思い出していた。2人が出会ったのも、七味が散歩中に穴に(はま)って動けなくなったからだった。


 嬉しそうに歩く美少女の後ろを、楽しそうに歩くスケルトン。一見すると、ストーカーと被害者だが、二人の心は通じている。大丈夫だ。


 仮想世界には海も山も、街もお城もある。無いのは遊園地ぐらいか。


「良い場所を見つけたんです。カナメンさんと一緒に来たかったんですよ」

 七味は少し赤くなりながら言った。

「可愛すぎるだろ!」という言葉が()れそうになったが、カナメンはぐっとこらえて「それは楽しみですね」と平静を装った。


 サスペンスドラマに出てきそうな(がけ)に着くと七味は言った。

「ここから飛び降りてください」


 スケルトンは水死体になっても、スケルトンだよな。そんな事を考える余裕は一応あった。七味が後ろから押すまでは。


「危ないです! 七味さん! 落ちます!」

「落ちるんですよ! カナメンさん!」

 和やかな雰囲気から一転、本気でサスペンスじみてきた。犯人の美少女は涙しながら語るのだろう。「無実です」と。


「もう。仕方がないですねー。先に落ちますよ?」

 そう言って七味は海の藻屑(もくず)へと……ならなかった。崖の途中に小さな(くぼ)みがあり、そこに飛び降りただけだった。

「ここに落ちて来てくださーい」

 それを先に言ってくれないと……。恐る恐る飛び降りて、海の方を見ると、視界は全部海で埋まっていた。

(すご)いですね」

 カナメンの言葉に、七味も満足そうな顔をした。2人は並んで座り、海を見ながら話をした。


 カナメンは冥府(めいふ)の門の召喚を成功させた事を、凄かった、偉かった、頑張ったと、とても沢山(ねぎら)ってもらった。

 カナメンからしたら、直接ドラゴンと戦った七味の方が凄いと思うのだが、この人は自分が凄い事をやってのけても、今みたいに他人を労う事を忘れない。そんな所がやっぱり良いなと思った。


 ふと肩に重みを感じて見ると、七味は眠ってしまっていた。この所ずっとお仕事が忙しかったのだ。疲れていたのだろう。

 時間に間に合わないと、ネットカフェからログインしてくれて、そうやってこの人は生きている。だから沢山の人に好かれている。


「大変だよね」

 この人は自分の身を削っている。少し面倒がってしまった自分を反省したけれど、無理をしたら、もっと気を(つか)わせてしまうんだろうなぁと思う。だから、今は堂々と肩を貸そう。風邪を引かないぐらいの時間は、寝てて良いよ。お疲れ様。


 3人それぞれのデートプランとなりました。誰のデートがお好みでしたでしょうか!


 恋するスケルトンは1話完結でサクサク読める短編です。お話が思い付きましたら、不定期で週1回ぐらい追加する予定です。ブックマークや評価などいただけましたらお話を急いで更新いたしますので、お寄せいただけると励みになり嬉しいです。よろしくお願いいたします。

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