13.田中要は召喚をする事にした。
一話完結 恋する着せ替えスケルトン 短編シリーズ
『デートいつにする?』
ミフネからメールが届いた。正確には御船健吾からのメールだが。
『何の話ですか?』
田中要はメールを返す。
『約束しましたよ』
『いつですか?』
『バグズドラゴンを倒した時に』
あー。あったような、無かったような。
正直行きたくない。何度も断っている。断っているのにしぶといのが御船健吾だ。でも、今回は流石に行かない訳にはいかないよね。ゲーム内でお世話になったし。
2人は仮想空間で遊べるゲーム、VRMMORPG GGL (ジェネシスガーディアンズライフ)を遊んでいる。御船健吾が操るのは「ミフネ」人間の青年の姿をしたキャラクターだ。
ちなみに、田中要が操るのは「カナメン」スケルトンの男の姿をしたキャラクターだ。毎回言うが、間違いではない。骨のスケルトンで、かつ男子だ。とてもお気に入りだ。
「フネ君は優しいよ。行ってみたら良いじゃん」
そう、ヒヨコは言った。
ここは、仮想空間のGGLというゲームの中だ。ヒヨコは狼の耳と尻尾を持つキャラクターで、ミフネがリーダーを務めるギルド「ブロッサム」のサブリーダーをしている。
その言葉を受けた要のキャラクター「カナメン」はがっくりと肩を落とした。
「断るべきだ」と言われると予想していたのだ。
「付き合ってみたら良いじゃん。別れた彼女でゲーム続けてる人多いし、みんな仲が良くて友達増えるかもよ?」
ヒヨコは付き合う事までもすすめた。
「御船君は変わった所はあるけれど、女子に優しいし、気が変わるかもしれないから一度行ってみたら?」
そう、南桔梗は言った。
ここは、現実世界の仕事場だ。小さな部屋をオフィスとして利用している。ゾンビを愛する桔梗が、ゾンビグッズを売るために作った会社だ。最近は、要がデザインするスケルトンの方が売れているが。
その言葉を受けた「カナメン」では無く、スケルトンキャラクターの中身の「田中要」はがっくりと肩を落とした。
「断るべきだ」と言って欲しかったのだ。
「付き合ってみたら良いと思うんだけどな。別れた彼女とも仲が良いままだし、ダメだったとしてもリスク少ないわよ?」
桔梗までもが付き合う事をすすめた。
「早かったね」
目の前の男性は言った。御船健吾は、高そうなスーツに身を包んでいる。それに対して要は、桔梗に借りたニットのアンサンブルに、これまた借りたスカートという服装に身を包んでいる。
ホテルの最上階。足が沈み込む豪華な絨毯が、要を転ばそうと仕掛けてくる。ぎこちない歩き方で、御船健吾、つまりミフネの後ろを必死に追うが、どんどんと距離は離れて行く。
真っ白な布のかかったテーブル、店員に引かれて座る椅子。スマートなオーダーの後に運ばれてきた、目の前に並ぶ豪華な食事とワイン。全てが夢の中のように、静かにゆったりとした時間を作り出している。
『この食事は……何スケルトン分?』
「彼女になってくれたら、払わなくても大丈夫だよ?」
まるで心でも読んだかのように、ミフネにこやかに微笑んだ。
「デートの相手には払わせないのが主義だから安心して」
要の慌てる様子を見て、ミフネは小さく笑った。
『ミフネさんは確かに優しいし、条件は良いのだと思う。だけど、私は自分らしくいられる人の方が好きなんだ』
しばらくの歓談の後、意を決して要は言葉を発した。
「私、好きな人がいて……」
「要ちゃん。嘘を言っても無駄だからね。俺、嘘付かれているのか分かるから。赤色でも七味でも無いよね? 誰?」
読まれてる!!!
『たっ助けて、骨子さん! ……ってそうか! もう一度、冥府の門を召喚します。呪文詠唱っ!』
田中要はゲーム内のごとく、呪文を唱えた。
「仕事でゲームを辞めてしまった人なのですが……凄く、素敵な人なんです。優しくて。憧れていて。でも、会えなくて。でも、忘れられないんです。ごめんなさい」
恋だったなんていうのも思い込みなのかもしれない。骨子さんの何を知っているのかと聞かれたら何も知らない。ただ思い出すと、胸の奥がギュッと痛いだけ。
「そうか……間違っていたらごめんね、要ちゃん。女の人だね、相手の人」
「……はい(人工知能AIに性別ってあるのか分からないですけど! 多分!)」
「そうかぁ。要ちゃんは女の人が好きだからか……通りで靡いてくれなかった訳だ」
「……(それが理由では無いのですが、諦めてくれたら何でも良いです!)」
「分かったよ。教えてくれてありがとうね」
「誘っていただいたのに、すみません(やったー!)」
こうして二匹目のボスモンスターも骨子さんによって倒されました。
田中要の世界にも、平和が訪れたのである。めでたし、めでたし。
今回はミフネとのデートでした。次回は七味が登場です! お楽しみに!
恋するスケルトンは1話完結でサクサク読める短編です。お話が思い付きましたら、不定期で週1回ぐらい追加する予定です。ブックマークや評価などいただけましたらお話を急いで更新いたしますので、お寄せいただけると励みになり嬉しいです。よろしくお願いいたします。




