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恋骨!~恋するスケルトン~田中要はVRMMOゲームでスケルトンになって恋をする事にした。  作者: 熊谷わらお
第1章 スケルトンは恋の夢を見るのか? 1話~25話【完結】
12/83

12.田中要は信頼をする事にした。

一話完結 恋する着せ替えスケルトン 短編シリーズ

『飯いつにする?』

 赤色(あかいろ)53号からメールが届いた。正確には(たちばな)瑞稀(みずき)からのメールだが。


『何の話ですか?』

 田中(たなか)(かなめ)はメールを返す。


『約束しただろが』

『いつですか?』

『バグズドラゴンを倒した時だ』


 あー。あったような、無かったような。


 正直行きたくない。行きたいような気もするが、とても緊張するのだ。緊張しているのをかえって面白がるのが橘瑞稀だ。でも、今回は流石(さすが)に行かない訳にはいかないよね。ゲーム内でお世話になったし。


 2人は仮想空間で遊べるゲーム、VRMMORPG GGL (ジェネシスガーディアンズライフ)を遊んでいる。橘瑞稀が操るのは「赤色53号」人間の少年の姿をしたキャラクターだ。

 ちなみに、田中要が操るのは「カナメン」スケルトンの男の姿をしたキャラクターだ。間違いではない。骨のスケルトンで、男子だ。とてもお気に入りだ。


「遅い」

 目の前の男性は言った。橘瑞稀はセンスの良い、だけど少しだけラフに着崩した服装に身を包んでいる。それに対して要は、ブラウスにカーディガン、そしてジーンズという服装に身を包んでいる。


「食えないもんとかあるか?」

「いえ、好き嫌いは、ほとんど無いです」

「ゲテモノしか食えないとか言わなくて良かったわ」

 要は橘瑞稀、つまり赤色を(にら)んだ。


 駅から少し歩いてたどり着いたビルは、首が痛くなるほどの高さがあった。ガラス張りのビルの入り口は、回転扉になっている。吸い込まれるように中に入ると、そこには異世界があった。

 ビルの中にも天井まで続く空間が広がっている。まるでファンタジーに出てくるダンジョンみたいだ。そんな色気のない感想だが、それは要にとっての最高の()め言葉である。


「凄い!」

 喜びが我慢出来なくて、赤色の顔を見る。

「凄いだろ」

 共感してもらえたのが嬉しいかのように、赤色も満面の笑みであった。


 2人を乗せたエレベーターは上を目指して上る。ガラス張りでキラキラとしたダンジョンは、要の心を(とりこ)にした。

「また、みんなで来ような」

「はいっ!」


 ビルの最上階。少し暗くライトを落とした店内は、雰囲気が良い音楽が流れている。店員に導かれて座った席は、前面がガラス張りで、横に並んで座るため、夜景が綺麗に見える席だった。


「お酒は飲めるか?」

「少しだけなら」

 スマートなオーダーの後に運ばれてきた、目の前に並ぶ美味しそうな食事と甘いカクテル。全てがキラキラと魔法のように、静かにゆったりとした時間を作り出している。


(おご)りだから、沢山食えよ」

 まるで心でも読んだかのように、赤色はいやらしく微笑んだ。


 お酒と夜景とお店の雰囲気と優しい人間と、全てが心を解きほぐす。

 解かれた心は、あの時の緊張と安堵と喪失を思い起こし、要は少し涙ぐんでしまった。

「よくやった」

 赤色はそっと要の頭を()でた。いつもみたいに抵抗するには、ここは雰囲気が良すぎた。大人しく肩を貸してもらう。言葉は交わさないけど、居心地は良い。まるで仮想世界の中のようだった。


「みんなが待ってるから、そろそろ行くか」

 そう言って赤色は席を立った。


 ガラスは、並ぶ田中要と橘瑞稀を映す。

 要の目には「お似合い」だなんて、決して思えなかった。それが少し悲しい。


 いつものネットカフェの近くには、3人が立っていた。

 1人は「七味(しちみ)」こと「皆川(みながわ)七見(ななみ)」だ。という事は、スーツ姿の七味を追いかけまわしている女の子が「ヒヨコ」こと「小田(おだ)珠子(たまこ)」であり、2人の間に立たされ、七味に盾として使われているのが「イヌカイ」こと「犬飼(いぬかい)(まこと)」という事になるのだろう。


 イヌカイと思われる人物は、お洒落な大学生という風だ。

 ヒヨコと思われる人物は、クルクルと巻かれた長い髪を、フワフワと(なび)かせている。可愛らしくて、女の子らしい服装もしている。

 つい、ため息と共に声が()れてしまう。

「ヒヨコさん可愛いなぁ」


 要の言葉を受けて、赤色は言った。

「俺は要の方が良いけどな」

 びっくりして、赤色の顔を見る。目線は前に向いたままで赤色は言葉を続けた。


「七味も苦手なタイプだから安心しな。イヌカイは好きみたいだけどな。あれに捕まったら絶対、尻に敷かれるっての」


「ミズキっ!」

 2人の姿を確認したヒヨコが、赤色に向かって走り、抱きつく。が、それを赤色がかわして、後ろにいた要へ。


 咄嗟(とっさ)に前に出した要の手が、ヒヨコの胸を鷲掴(わしづか)みする。


『大きい! 柔らかい! 良い匂い! 助けてー!』


 男達の足は、そんな要の心と、(もつ)れる女子2人を置いたまま、ネットカフェへと向かって行くのであった。


 今回は赤色とのデートでした。次回はミフネとのデート。次の次は七味とのデートになります! お楽しみに!


 恋するスケルトンは1話完結でサクサク読める短編です。お話が思い付きましたら、不定期で週1回ぐらい追加する予定です。ブックマークありがとうございました! もう1話更新いたしますので、また読みに来て下さると嬉しいです。

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