表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

#6 鳳凰の燈火

「――――ふぅ、やっと着いたぁ」

「やれやれ、思ったより遠かったな」

「どうやらあれが最初の目的地の火の神殿ってわけね」

 

 ボク達は第一階層の中心部に位置する火の神殿が見える高台に到着していた。

 火の神殿の頂上に置かれている燭台にはボク達が目印にしてきた炎がメラメラと燃え上がっていて、今も誰かを導くように煙が天高くまで登っている。

 そして、神殿の壁には炎を纏った鳥の様な石碑が描かれていた。

 

「ところでミサキよ。どうやって精霊の力を借りるつもりなんだ?」

「えっと、それはね――――」

「それは?」

「…………」

「――――」

「どうすればいいんだっけ?」



 ズコーと先生は地面に倒れ込んだ。 

 そういえば勢いだけで旅に出たけど、目的を聞いただけで目的地でどうやって精霊の力を借りるのか聞くのを忘れていた。 

 

「ま、まあ天姫なら知ってるよね? なんだってボクをこの世界に連れて来たわけだし」

「ん? 私は何も知らないわよ」

「――――え?」

「私がミサキの世界に行ったのは、ただ異世界に行きたかっただけだよ。――まあ深く考えずに悪い奴を倒したら精霊が出てくるんじゃない?」

「…………そんな適当なぁ~」 

 

 あてにしていた天姫がどうすればいいのか知らないとか、ボクはこれからどうしたらいいんだろう。

 というか知らないのなら何の為にボクを追ってきたんだ。

 多分、面白そう以外の理由なんて無いんだろうけど。

 

「まあ、こんな場所でじっとしていても変わらないし、ひとまず神殿の近くまで行ってみないか?」

「そうだね。じゃあ行こっか」

 

 ボク達は高台から迂回してしばらく歩いて火の神殿の入り口へと辿りついた。

 入り口には巨大な門がボク達の行く手を阻むように立ち塞がっている。

 

「う~ん。流石にこのままだと入れないなぁ。どうしよっか?」

「ふぅ――――どうやら押してもびくともしないみたいだぞ」

 

 先生が扉を押してみたけど並大抵な力では扉は開きそうになさそうだ。

 

「押してダメなら壊せばいいのよ!」

「――――え。ちょ、ちょっと天姫?」

 

 天姫は大剣を両手で構えると、思いっきり振りかぶって門に大剣を振り下ろした。

 

「――せいっ!」

 

 ――ドゴン。

 と大きな音が周辺にとどろく程の衝撃で叩きつけたのにもかかわらず、門には傷1つ入らずに相変わらずボク達の侵入を阻んでいた。

 

「――いったぁ。何よこの門、固すぎでしょ」

 

 天姫は痺れた手をプラプラとさせながら足で門を軽く蹴った。

 ガシッと軽い音がしたけど蹴ったくらいじゃびくともしない。

 

「姫さんでも傷1つ付けられないんじゃ、たぶん俺も無理そうだな」

「どうしよっか?」

「ならロボを呼んで必殺技で攻撃するとかどうかしら?」

「う~ん。そんな事したら中に入れたとしても精霊が力を貸してくれない気がするんだけど…………」

「そんな事で力を貸してくれない精霊の力なんて借りる必要ないわよ」

「――いや、借りないと魔王を封印出来ないんだけど」

「――シッ。お前ら静かにしろ」

「どうしたの先生?」

「あそこを見るんだ」

「どれどれ? あ、確かあれはこの前戦った魔王の部下ね」

 

 先生が言った方向を見ると、機械兵達が火の神殿の横の方へとぞろぞろと向かっていた。

 

「何かあるのかな? みんな行ってみよう」

「おうよ」

 

 ボク達は機械兵達が向かっていった方向に向かって行くと――

 

「あれ? 誰もいない!?」

「おかしいわね。確かにこっちに行ったはずなのに」

「――どこかに隠れているかもしれないから気を付けるんだ」

 

 念の為に周辺を確認してみたけど、この辺りには特に隠れるような場所も無さそうなので敵が隠れている事は無さそうだ。

 

「って事は多分神殿の中に入っていったと思うんだけど――――」

 

 ボク達が今いる場所は入り口からずっと進んで右に曲がった所で、ぱっと見で壁しか無いみたいだ。

 

「後ろ側に回ったのかな?」

「アイツ等そんなに足が早そうには見えなかったけど?」

「ふむ――――よし、ここは俺に任せてもらおうか」

 

 先生は懐から長い棒状の物を2個取り出して両手に持った。

 

「こんな事もあろうかと用意しておいた俺のエレクトログッズだ」

 

 先生はダウジングをするようにゆっくりと棒を先に向けて壁沿いに進み始めた。

 ――しばらく歩くと棒が左右にゆっくりと開いていって、そこに何かが隠されているのを指し示した。

 

「おおっ。なんか来たぞっ!?」

「もしかして隠し扉とかがあるのかも」

 

 ボク達は手分けして壁を調べてみると、一箇所壁の薄い場所が見つかった。

 

「――あれ? なんだかここから風が吹いてくるよ」

「ホントね。それにここは他と比べて壁が薄いみたい」

「おい、ミサキ。こっちに何かあるぞ」

 

 先生に呼ばれた場所にはパズルのような紋章が壁に埋まっていて、手で動かしてみるとカタリと音をさせながらパズルが横にスライドした。

 

「多分これを完成させたらいいんだと思う――」

「ねえ、ミサキ。ここは私に任せてくれない?」

「大丈夫だって。ボクはこういうの得意なんだよね」

 

 ボクは順調にパズルを完成させていく。

 元の世界でちょくちょくパズルゲームをやって遊んでたのがこんな場所で役に立つとは思わなかったけど。

 

「あとちょっとだ――」

「――あ~もう、おそ~い。やっぱり私がやるわ!」

 

 ボクが最後のパネルを移動させようとした瞬間、横から凄い音と同時に何かが崩れる音がして、何事かとそっちを向くと神殿の壁が崩れ去って隠し通路が現れていた。

 

「ほら。やっぱり私に任せてくれた方が早かってでしょ?」

「え、任せるってそっちだったの!?」

「――まあ中に入れるようになったんだし先に進むとするか」

 

 ボクが最後のパネルを移動すると、微妙に残っている部分の壁がガタガタと動いて入り口が少しだけ広がった。

 

 ――ボク達が隠し通路から神殿の中に入っていく。

 しばらくは何も無い薄暗い道が淡々と続いていたけど、少し歩いた所で開けた場所に到着した。

 

「ここは!?」

 

 ――どうやらボク達は火の神殿の内部に入れたみたいだ。

 電気とかは無いけど、そこら中に燃え盛る火がくべられている燭台や松明が置かれているので、じゅうぶんに明るい。

 ――そして、機械兵達がそこら中を徘徊している。

 

「ミサキ。あれを見ろ」

 

 神殿の奥の方には、ひときわ警備の厚い場所があって丸い円盤の様なレリーフが置かれていた。

 

「――なんだろ、あれ?」

「あいつ等が守ってるって事はたぶん大事な物なんじゃない?」 

「どうする、ミサキ?」

「よし、取りに行こう。――けど、どうやってあそこまで行こっか?」

「そんなの正面突破すればいいじゃない」

「俺達が敵を引きつけるから、その間にミサキはあれを手に入れてくれ」

「え、ちょ、ちょっと2人共!?」

 

 ボクの言葉が終わる前に2人は敵のいる方に突撃して行った。

 

「あ~、こうなったら仕方ない」

 

 ボクも剣を抜いて後に続いて走る。

 

「私の相手がしたいならかかってきなさい!」

 

 天姫は高い所からジャンプして落下の勢いに任せて大剣を地面に叩きつけた。

 落下の衝撃で周囲の敵が何人が吹き飛んで、その場で大剣を横に振り払い更に何人か吹き飛ばす。

 先生も別の場所で健闘中だ。

 ボクは手薄になった目的地に一直線に走り出す。

 何人か敵をやっつけながら進んでいって、必死の思いでレリーフの前に辿り着いた。

 30センチくらいの大きさのレリーフには鳳凰の絵が描かれていた。

 

「――これって、確か神殿の入り口で見た絵と同じだった気がする」

「お~い、早くこっちに来るんだ~」

 

 先生達はどうやら上の階に昇る階段を発見したようで、ボクがくるのを敵を倒しながら待っているみたいだった。

 

「待ってて~、すぐ行く~」

 

 ボクは鳳凰が書いてあるレリーフに手をかける。

 

「あれ? 結構軽いな」

 

 思っていたより重くはなくて、レリーフはすんなり取る事が出来た。

 少しだけ熱がこもっているようで、ほんのりと暖かさを感じる。

 なんとなくだけど、このレリーフが火の精霊の力を借りる重要なアイテムな気がした。

 

 ――それからボクは先生達と合流して、階段を登って2階に上がると外へ出る事の出来る扉を発見したので、一旦神殿の内部から外部に出てみる事にした。

 

「あ、皆。ちょうど頂上まで行ける道に出たみたい」

 

 ボク達が出た前には長い階段があって、そのまま真っすぐに階段を登っていけば頂上にある燃え盛る炎に辿り着けそうだ。

 

「あともう少し。みんな急ごう――」

「ミサキ、危ないっ」

 

 突然ボクは後ろから何者かに突き飛ばされてしまい壁へと激突した。

 その衝撃でボクは手に持っていたレリーフを落としてしまい、そのままころころと床を転がっていきボクを突き飛ばしてきた相手の足元で止まった。

 

「ダメじゃないか、これは厳重に保管してたのに勝手に持ち出しちゃあ。これじゃあここに封印してある精霊が力を取り戻してしまうじゃないか」

「誰だお前は!」

「俺は魔王さまからこの階層を任されている者だ」

「レリーフをこっちに返しなさい!」

「欲しかったら自分の力で奪ってみるんだな」

 

 魔王の部下が指を鳴らすと、後ろにロウソクの様な形をしたロボットが現れた。

 頭の部分からは炎が燃えていて凄く熱そう。

 

「これにはこんな使い方もあるんでな!」

 

 部下はレリーフをロボに向かって投げると、胸の部分にカシャリと収まって頭の炎が更に勢いを増して燃え出した。

 

「まさか精霊の力を使ってロボをパワーアップさせたのか!?」

「ははは、その通り。こうなった俺はもう無敵だ」

 

 どうやらこっちもロボを呼んで戦うしか無さそうだ。

 

「――先生!」

「おう、解った!」

 

 ボクと先生はお互いにロボを呼んで敵と対峙する。

 数ではこっちが勝ってるんだ、絶対に負けない!

 

「おっと、このままだと不利なんでこっちも仲間を呼ばせてもらうぞ。――――お前ら出番だ!」

「ぐへへ、待ちくたびれたぜ」

 

 神殿の柱の影からボクがここに来た時に倒した村から電気を奪うロボと森で木を切っていた巨大なハサミを使うロボが現れた。

 

「ふふふ、これで形成逆転だな!」

「うっ、3VS2だとちょっとピンチかも――――」

「――あら? 誰か忘れて無いかしら?」

 

 天姫が大剣を構えながら敵の前へと向かい出す。

  

「いくら何でも生身でロボと戦うなんて無茶だよ!」

「大丈夫、時間稼ぎくらいはしてみせるわ」

「ミサキ、来るぞ!」

 

 ボク達の準備が終わる前に敵が一斉に襲い掛かって来た。

 

「仕方ない、天姫。絶対に無理しちゃダメだよ?」

「任せときなさいって」

 

 やる気満々の天姫は大丈夫だと笑顔でピースをしているが、やっぱり心配なので早くボスをやっつけなくっちゃ! 

 

 ボクの相手はこの階層ボスの炎で攻撃してくる奴だ。

 敵は頭の上で燃えている炎から火の玉を出して攻撃してきた。

 

「斬るんだ、天龍騎!」

「おう!」

 

 ボクは火の玉を剣で斬り裂いて攻撃をかわす。

 2つに斬られた火の玉はそのまま空中でシュッと音を立てながら消えていった。

 

「よし。これなら何とか行けそうだね」

「ミサキ、次が来るぞ!」

「理解った!」

  

 火の玉を剣で斬ることで直撃はしないけど、このままじゃ近付く事も難しいかもしれない。

 

「せめて、こっちも何か飛び道具でもあれば――」

「今の私には剣しか武器は無い。すまないがこれだけで何とか戦ってくれ」

「うん、大丈夫。きっと何処かにチャンスはあるはずなんだ」

 

 せめてあのレリーフさえ外す事が出来たらなんとかなるかもしれないのに……。

 

「――――くくく。なかなかやるようだが、果たしてこれはかわせるかな」

   

 敵は手を合わせると、今までとは比べ物にならないくらいでっかい火の玉を作って投げつけてきた。

 

「避けれる?」

「どうやら剣で持ち応えるしか無いようだ」

「理解った、じゃあ行くよ!」

 

 ボクは剣で火の玉を真ん中から斬りつけた。

 けど、さっきとは比べ物にならないくらいの力に押されて、天龍騎の体は少しずつ後ろへ押されて行く。

 

「ミサキ、衝撃に備えろ」

「――ぐあああああっ」

 

 ボクは火の玉を受けきれずに直撃を受けてしまい吹き飛ばされてしまう。

  

 

「もう1度直撃を受けたらまずいかもしれない」

「…………どうしよう」

「ミサキ、待たせたな!」

「先生!?」

 

 先生がボクの隣に並ぶ。

 

「先生の相手は?」

「ああ、もうやっつけた。ミサキはだいぶ苦戦してるみたいだな?」

「うん。なんとかあのレリーフさえ取り返せたらいいんだけど」

「――――よし、ここは俺に任せろ」

「どうするの?」

「こうするんだ!」

 

 先生は敵に向かって走り出した。

 

「わざわざ的になるなんてバカな奴め。喰らえぃ!」

 

 敵はまた巨大な火の玉を出して先生に向かって投げつけた。

 先生は火の玉に向かって正面から体当たりをした。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおっ。こんな物おおおおっ」

 

 先生は無理やり火の玉をかき分けて敵に体当たりを食らわせた。

 

「なにぃ!?」

 

 お互いに倒れた瞬間、先生は敵の胸の部分からレリーフを引き抜いて、ボクの方へと投げる。

 

「ミサキ、受け取れい」

「ありがとう、先生!」

 

 なんとかレリーフを取り返す事が出来たけど、先生の機体が敵の攻撃で受けた炎で燃えだして、内部から煙が出ている。

 

「あちっ、あっつ、あっつ」

 

 先生は機体の窓を開けて、中に入れてある燃えている物を外へと投げ捨て始めた。

 燃えかけている布団やゲーム機がどんどん外へと捨てられて行く。

 

「――大丈夫?」 

「ああ、内部が少し燃えてしまったようだ。すまないが、ここから先はミサキに任せる」

「うん、任せて」 

 

 レリーフは何とか取り返した。

 後はこれを火の神殿の頂上に持っていけば何かが起きると思うんだけど。

 

「さっきはよくもやってくれたなぁ!」

 

 ――こいつの攻撃をかわしながら頂上に辿り着けるんだろうか。 

 

「ミサキ、私が行くわ!」

 

 下の方から天姫の声が聴こえる。

 良かった、無事だったんだ。

 

「わかった、お願い」

 

 ボクはレリーフを天姫に渡すと、天姫は頂上に向かって階段を駆け上がり始めた。

 

「行かせるかよ!」

 

 天姫と戦っていたもう1体のロボが行く手を阻むように階段に立ち塞がった。

 

「いい加減しつこい!」

 

 天姫は立ち止まらずに更に走る勢いを上げて、空中に飛び横に回転しながら敵ロボを横一閃に斬り裂いた。

 敵ロボは横に真っ二つにされて、操縦していた奴は何処かへと飛んでいってしまう。

 

「よ~し、このまま一気に行くわよ!」

 

 天姫はそのまま頂上へと一気に駆け上がった。

 頂上には巨大な炎が燃えている燭台があって、そこには何かが外されたような丸い穴があいている。

 

「――ちょうどこれがハマりそうね」

 

 天姫はレリーフを丸い穴へとはめこんでみる。

 

「あら? ちょっと上手くハマらないわね――あ~もう面倒くさい!」

 

 天姫はゲシゲシとレリーフを蹴りながら、無理やり穴へとはめこんだ。

 燭台にレリーフが収まった瞬間、燭台の炎が更に燃え盛り、天姫の前に1匹の鳳凰が現れた。

 

「――久しいな、姫よ」

「えっと、貴方が火の精霊だったの?」 

「――然り」

「なら話が早いわ。私達に力を貸してくれない?」

「ならば我が名を呼ぶがいい、さすれば我もお前達と共に戦おうぞ」

「なら名前を教えて!」

「名なら既に知っていよう」

「私、貴方の名前なんて知らないわよ」

「…………」

 

 鳳凰はそれ以上言葉を発しないで天姫を真っすぐに見つめている。

 下ではミサキと敵が戦っているので一刻も早く戻らないと行けないのに、どうしようもならない自分に少し苛立ちを感じていた。

 記憶を思い返してみたけど、ミサキの世界に行った時に合った時には名前を教えてはくれなかった。

 なら――いつ教えて貰ったんだろう。

 記憶には無いけど何か引っかかる物を感じる。

 名前を聞いた覚えは無いけど、彼の名前には覚えがある。

 自分でも何で知っているのか理解らないけど今はその名前を呼ぶしか無い。

  

「…………鳳……凰……騎……?」

 

 天姫の口から自然と言葉がこぼれ落ちる。

 天姫は火の精霊である鳳凰と向き合って高らかに彼の名前を叫ぶ。

 

「――力を貸しなさい、鳳凰騎!」

 

 鳳凰はピューイと鳴き声をあげて天空へと翼を広げて飛び立った。

 そして、炎を纏いながら地上に落下しながら鳥の形をしたロボットへと变化していく。

 さながら戦闘機の様なフォルムのロボットへと变化した鳳凰は、空中に留まりながら天姫が登場するのを待っているようだ。

 

「――さあ、乗るがいい」

「ふふん、任せなさいって」

 

 天姫は鳳凰騎に乗り込んでミサキの元へと向かっていく。

 いまだに下ではミサキと敵が激闘を繰り広げていた。

 

「――ミサキ、待たせたわね」

「天姫!? ――って、その機体は何?」

「火の精霊の力――――よっ!」

 

 天姫の乗った機体はそのまま敵に体当たりを食らわせて再び空へと舞い上がる。

 

「ねえ、天姫? 火の精霊の力なら体当たりじゃなくて火を使った攻撃とかは無いの?」

「はぁ? そんなまどろっこしいの使わなくてもいいわよ」

「でも、そんな無茶な攻撃ばっかりしてたら機体が持たない気が――」

「心配ご無用。結構丈夫みたいだし、炎を纏って体当たりするだけでじゅうぶん!」

 

 ある程度の高さまで上昇した天姫は再び落下を始めて機体に炎を纏わせながら回転して敵へと突撃していく。

 ――が、今度はあっさりと避けられてしまった。

 

「――なんで、かわされるの!?」

 

 ……そりゃあ一直線に体当たりするだけだし、来る方向が解ってれば敵も簡単に避けられるだろうな。

 

「――ミサキ、聞こえるか?」

「どうしたの、天龍騎?」

「どうやら火の精霊の封印が解けた事で、私にも新たな技が使えるようになったみたいだ」

「そうなんだ。――よし、早速使ってみよう」

「ならば炎の龍をイメージするんだ」

「――わかったよ」

 

 ボクは頭の中で炎の龍をイメージすると、右手が少し熱を帯び始めた。

 ――今なら出せる!

 そう確信したボクは敵に向かって必殺技を繰り出した。 

 

「いくぞっ、火炎龍!」

 

 火で出来た龍が敵を包み込んで燃やし尽くす。

 いくら火属性のロボでも火の精霊の力を借りて撃ち出した攻撃には炎耐性も役にはたたないみたいだ。

 

「ぐわああああっ」

「――今だ、ミサキ!」

「行くぞっ!」

 

 ボクは火炎龍を受けて体勢を崩した敵に向けて剣を構える。

 

「――必殺、天龍斬!」

 

 天龍騎の必殺剣で敵を斬り裂いてボクはこの階層のボスをやっつける事が出来た。

 ――とりあえずボクは天龍騎から降りて、みんなと合流する事にした。 

 

「――えっと、これが火の精霊なの?」

「ええそうよ。それに私達の力になってくれるみたい」

「これはかなり頼もしいんじゃないか?」

 

 今、鳳凰はロボの姿から最初の時に見た鳥の姿に戻ってボク達の前にいる。

 

「よくぞ私の封印を解いてくれた」

「これでこの階層は平和になるの?」

「ああ、魔王の手下も逃げていったようだし、魔王を倒すまでは私がこの階層を守っていくとしよう」  

「――え、それじゃあ私達に力を貸してくれないの?」

  

 天姫はせっかく自分も敵のロボットと戦える力が手に入ったのに、ここでお別れと聞いて少しだけ残念そうだ。

 またここに魔王の手下が攻めてきて、もう一度鳳凰が封印されても困るし仕方が無い事なんだけど。

 

「案ずるな」

「――どういう事?」

「共に行動する事は出来ぬが、少しの間ならここから離れる事も出来るだろう」

「ホント? なら貴方の力が必要になったら呼ぶ事にするわ」

「ああ、戦いで我の力が必要な時は私の名を呼べばすぐにでも駆けつける」

 

 鳳凰の火の能力と空を飛ぶ能力はとても協力なので仲間になってくれて凄く心強い。

 

「ミサキ、まだまだ封印を解く必要がある精霊は沢山いるんだ。早く次の階層に向かった方がよくないか?」

「そうだね先生。――――じゃあボク達はもう行くね、鳳凰」

「ならば第2階層へは我が送っていってやろう。さあ我の背中に乗るが良い」

 

 鳳凰は背中を向けてボク達に乗るように言ってきた。

 ボク達が鳳凰の背中に乗ると、翼をはためかせながら空へと飛び立っていく。

 

 ――次の目的地は水の神殿がある第2階層だ。

 次の階層もどんな悪い奴が待ち受けているのが解らないけど、ボク達は絶対に負けないぞ!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ