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#1 プロローグ 異世界のお姫様

 ここは天聖界と呼ばれる地球では無い場所。

 今日も天聖界のシンボルである天聖山の上には7つの星が輝いていて、この世界が平和である事を住人全員が感じながら生活を送っていた。

 

 少し離れて天聖界の片隅に存在感を放っている巨大なお城がある。

 ここには天聖界を収める王族が住んでいるのだった。

 王は王妃に先立たれてしまったが、娘の王女はすくすくと育っていて今年10歳になるまで成長していた。

 

「お父様、今日も天聖山の星が綺麗ね」

「ああ、あの星がある限りこの世界の平和は約束されているのだからね」

「さて、今日は何をしてすごそうかしら」

「ん? 今日はお茶の練習だったと思うんだが?」

「そ、そう言えばそうでしたっけ。 ……あら? 天聖山の様子が少しおかしくないですか?」

「そんな事を言って習い事を抜け出そうとしても――――ん? 確かに普段となにやら違う気が」

「お父様、あれを見て下さい」


 平和なはずの天聖界に突如、黒い雲が現れて天聖山を覆っていく。

 

「お父様、天聖山の星が」

「いかん、あの星が無くなったら天聖界は――」

 

 天聖山を雲が覆い隠した瞬間、山の上に輝いている星の色が少しずつ消えてしまい真っ黒な星になってしまった。

 

「お父様、これは一体?」

「やはりオババの言い伝え通りになってしまったか。ええい、誰か占いオババを呼んでまいれ」

 

 王は周りにいた従者に指示を飛ばすと数分して、紫色のローブに身を包んだ老婆が王の前にやってきた。

 

「オババ、これが予言にあったと言うあれか?」

「ヒッヒッヒ、いかにも。――黒い雲が天聖山を覆い隠す時、天聖山に輝く星が色を無くし古の魔王が蘇るであろう」

「そんな、それでは私達はいったいどうなってしまうのですか?」

「安心せい、占いには続きがある。オババ続けてくれ」

「御意に。――されど魔王蘇りし時、時を同じくして天聖界を救う救世主も現れん」

「それは本当ですか?」

「しかし、オババの占い通りに救世主という者を探していたが一向に見つかる気配はなかったぞ。よもや予言が間違っているとはいうまいな?」

「ヒッヒッヒ、いえいえそのような事はありません。救世主はこの世界の住人では無いですからの」

「えっ。それは一体どういう事なのです?」

「ええい、オババ説明せい」

 

 老婆は懐から水晶玉を取り出して何やら呪文を唱えた後、2人に水晶玉を差し出す。

 

「救世主はここにおりまする」

「む? いったいここはどこなんだ?」

「……わっ。見たことの無い建物が沢山!?」

 

 水晶玉には現代の建物が映っていて、公園で遊んでいる子供達の姿も見えた。

 

「ヒッヒッヒ、天聖界を救いたくばこの世界に行って救世主を呼んでくるのです」

「……して、ここに行く方法は?」

「今ならこの国の外れにある天聖池からこの世界へ行くことが可能かと。されど安全の保証はできませんがな――ヒッヒッヒ」

「仕方ない。ではこの国の精鋭達を引き連れてワシ自らおもむこう。お前はここでオババと――」

「でしたら私が行ってきますね」

 

 王は姫の突然の言い出しにキョトンとしてしてしまう。

 王は姫を止めようとしたが時既に遅いようで――。

 

「い、いかん。お前はこの国の姫なのだぞ」

「では――天姫あまひめ、救世主様のお迎えに参ります」

 

 天姫と名乗る少女は天守閣から身を乗り出して、その場所から飛び降りた。

 

「――あのじゃじゃ馬め。ええい、誰か姫を捕まえろ」

 

 王は大声をあげて兵士を呼んだが、その声は少女に届くことは無かった。

 

 ――5階建てのお城の最上階から飛び出した少女は胸元から小太刀を取り出してお城の壁に突き立てる。

 少女の落下速度は次第に減少していったが、まだ危険な速度である事には代わりは無い。

 

「あそこでいっか」

 

 少女は小太刀を引き抜くとそのまま壁を蹴って下にある草山に頭から飛び込んだ。

 

「痛った~。――けど、脱出成功っと。こんな面白い事、他の人に任せてたまるもんですか」

「姫~。お待ちくだされ~」

「いけないっ、もう追手が来るなんて。こうなったら――――来てっ、セキト」

 

 少女が口に指を入れて口笛を吹くと何処からともなく赤い馬が駆けてきた。

 少女は馬にまたがると手綱を握り指示を出す。

 

「天聖池まで行くわよ」

「ヒヒーン」

 

 馬は了解したかのように鳴き声を発声してから目的地に向かって走り出す。

 姫を捕まえようと追いかけて来た兵士も馬を呼んで追いかけようとするが、どんどん差は広がっていった。

 

「ふふん、セキトの早さに着いてこれる馬なんてこの国にいるもんですか」

 

 少女は馬に乗ってしばらく野を駆けると巨大な池が見えてきた。

 

「アレねっ!」 

 

 少女は池の前でセキトから降りると軽く頭を撫でた後、お願いをする。

 

「私はこれから異世界に行ってくるからセキトは帰って待ってて」

 

 セキトは一緒についていくと言いたげに軽く鳴き声を発する。

 

「心配なんてしなくていいって、絶対に救世主様を連れて戻ってくるからセキトはお城で待ってて――ね?」

 

 セキトは少しだけ不満気だが、こう言い出した少女は絶対に引かないと本能で理解している為、渋々後ろに向き直ってお城へと戻っていった。

 

「ありがとセキト」

 

 少女はセキトを見送ると、改めて天聖池に向き合う。

 

「……来たのはいいんだけど、どうすれば異世界に行けるんだっけ?」

 

 天聖池と大層な名前は付いているけど、ぱっと見どう見ても普通の池だった。

 どうした物かと立ちすくんでいると、誰かに見られている感じがする。

 

「誰かいるの?」

 

 返事は無い。

 

「……いるわけ無いか」

「――――こっちだ」 

「えっ!?」 

 

 少女の頭に謎の声が鳴り響く。

 

「誰? どこにいるの?」

 

 人の気配は全く無い。

 声の主を探そうと周辺を見ている時に、ふと1つ寂れた小さな祠が池の片隅に建っているのが見えた。

 

「なんだろ?」

 

 少女はひっくりと何かに導かれる様に祠に近付いていく。

 

「これを開けろって言うの?」

 

 祠の扉は閉じていたが、鍵のかかっている様子は無く簡単に開きそうだ。

 少女は意を決して扉を開くと中には小さな指輪がひとつ置いてあるだけだった。

 

「指輪?」

 

 少女は右手の人差し指に指輪を通す。

 

「痛っ」

 

 指輪を付けた時、何かに刺されたような感覚があって指から血が滴り落ちる。

 

「今ここに契約は成った」

「また、さっきの声!?」

 

 少女は声の方を振り向いた。

 今回は声だけでは無く、声の主の姿もそこに存在している。

 

「貴方が私を呼んでいたの?」

「如何にも」

 

 少女の前には巨大な鳳凰が少女の目を優しげに見ていた。

 

「私は救世主様に会いに行きたいの。貴方ここにいるのなら何か方法を知ってたりしない?」

「我はこの地に危機が訪れた時に契約者を救世主の元へ送り届ける物なり」

「お願い。私を救世主様の所に連れて行って。契約が必要なら何だってする」

「契約は既に成っている」

「成っている? 私、契約なんて――」

 

 少女はふと先程はめた指輪に目が行った。

 

「もしかして、これが?」

「その指輪は契約の証。我が力が戻った暁には共に戦おうぞ」

「共に戦う? 一緒に戦ってくれるの?」

「――まだその時では無い。今は救世主のいる地へと参ろうぞ。我の背に乗るがいい」

「え、ちょっと一緒に戦ってくれないの?」

 

 鳳凰は答えずにじっと少女の目を見ているだけだった。

 

「わかった。でも力を取り戻したら力になってくれるのね?」

「然り」

「――姫様~。何処ですか~」

 

 遠くから兵士の声が聴こえてくる。

 

「いけないっ。そう言えばお城を抜け出して来たんだった。お願い急いで」

 

 少女は鳳凰の背中に飛び乗ると、鳳凰は翼を広げて空へと飛び出した。

 

「わっ。高っ!?」

「振り落とされないよう気を付けておくがいい」

「わかってる」

 

 少女はガッシリと鳳凰にしがみつく。

 鳳凰もそれを確認すると、音を超える速度で彼方へと飛び去っていった。

 

 ――ここはとある山のある場所。

 そこにある巨大な池の横にある木の下に着物を着た少女が倒れていた。

 木の葉から滴り落ちる水滴が少女の頬を撫でると、少女は意識を戻して目を覚ます。

 

「あれ? 私、気を失って?」

 

 周りを見てみるが鳳凰の姿は何処にも無かった。

 

「……もしかして夢だった?」

 

 次第に戻っていく意識の中で何が起きていたのか少しずつ思い出していく。

 

「えっと……確か私は池で大きな鳥に会って……」

 

 そういえば、何か重要な使命があったような……。

 

「そうだ! 救世主様を探さないと。――けど、本当にここがその場所なの?」

 

 周辺を確認してみたが、この辺りはあまり自分がいた世界と変わらないようだった。

 がっかりしていても仕方がない、ここは何か行動を起こさないと。

 

「仕方ない、とりあえず山を下ってみますか」

 

 少女は山を少しずつ下っていく。

 山を下にくだるごとにそれは次第に少女の目に見えてきて、山から出たらハッキリとその姿を現す。

 

「――これは!?」

 

 少女の目の前には水晶玉で見た景色が広がっていた。

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