冬①
短いです。
「うちの学校から3人も選ばれるとは!先生は鼻が高いぞ!」
1月……俺と坂本、そして龍二の3人がベスト30に入り最終選考まで残った。
いよいよ次で最後……ベスト20で賞金10万円。
ベスト10で書籍化だ。
「なー京平。帰りにあのパン屋よってかねぇ?」
「話しかけるな。俺たちはもうライバルだ。いきたきゃ一人でいけよ。俺は忙しいんだ。自分は余裕だって自慢したいのか?」
「……」
俺は龍二をガチガチに意識していた。
なんだか坂本の気持ちがわかった。
下から追いかけてくる奴が怖くて仕方がない。
坂本が19位俺が25位龍二がギリギリの30位。
怖いのは龍二が書いているのは冒険小説でもファンタジー小説でもないことだ。
疑うことなく『実力』だけでここまできた……
『俺は流行にのっているだけでは?』『いつか飽きられるのでは?』という不安が常にある。
「つまんねーの。じゃあ一人じゃつまんねえしひとりで帰るか……」
「……」
龍二はカバンを持って教室から出て行った。
……自分の小ささにイヤになる。
俺は小説で龍二をモデルにした主人公を痛めつけ、とうとう瀕死にまで追いやった。
小説を使った八つ当たりだ。
その日龍二はトラックに轢かれて意識不明になった。
「……」
俺は龍二の見舞いには一度もいかなかった。
「龍二が小説を更新しないならチャンスだ」と思った。
1日複数更新した。
最新話を消して投稿し直したりした。
それでも……龍二の小説は
人気が落ちず、俺のすぐ後ろまで迫っていた。
怖かった。
「俺が小説で龍二を痛めつけたから……?あの日一緒にパン屋にいかなかったから……?」
罪悪感で死にたくなる。
だけど……どうしても龍二には負けたくなかった。
俺の小説と龍二の小説はとうとう坂本を追い抜いた。