ドラゴンとの出会い
『やる気がないなら帰ってくれないか?みんなの迷惑になるから。なろうは遊びじゃないんだよ』
腹立つ……音楽を聴いていたらなろう総合ランキング200位、書籍化経験もある「坂本雄馬」にそう言われ、俺はすごすごと教室から逃げだした。
あんな奴……なろう道がなければただのチビガリなのに……
「こうなりゃ……ヤケだ」
高校三年にして初めてのサボり。
俺は町にくり出した。
(……でこれだよ)
「三千円かよ……しょっぺーなー!」
「ねーよかましだべ?」
町にでた瞬間俺は学ランを着た金髪中学生二人組にカツアゲされた。
つまんねぇ。
どーなってんだよ?現実……?
強キャラすぎねぇ?
「三千円じゃなにも……あれ?うおおお!」
アロハシャツの大男が中学生から財布を取り上げて中学生の髪を掴んでおもちゃみたいにぶん投げた。
ぶん投げられた中学生は壁にぶつかってピクリとも動かなくなった。
「なにすんだオラァ……国光君!?」
大男の顔を見た瞬間中学生は面白いほどふるえ始めた。
「義務教育だからってサボんなや。ガッコーいけ」
「はい!失礼しました!おい!大丈夫か?ほれ、いくぞ!生きてっか?」
失神した中学生を引きずりながら立ち去った。
「おめー雛高生か?サボりかよ?」
「は……はい!」
「ガッコーいけよ」
「はい!」
大男の髪の色は右側が赤、真ん中が黄色、左側が青……信号機みたいな髪の色だ……。
「俺も雛高生でサボりだから実はなにもえらそーなこと言えないんだけどな!ハッハッハッ!しかも受験生だぞ?みえねーだろ?じゃあな」
この男が同級生!?
そんなことより……
国光と呼ばれたこの男が中学生をぶん投げた時に俺の頭に電撃が走った。
今の現状を打破する名作のアイデアが浮かんだのだ。
『異世界でドラゴンに転生して無双する……』
なろうにありがちだがこの男をモデルにすれば……
このまま黙って男を見送ってはダメだ!
つまらない日常から抜け出す最後のチャンスの気がした。
「あの!」
「ん?」
「僕と……お友達になってくれませんか!?」
「……はっ!?」
こうして俺と『国光龍二』は友達になった。
俺たちはとりあえず公園のベンチに座った。
「俺は18年生きてるけど……『お友達になってくれませんか!?』って言われたのは初めてだよ」
そりゃそうだろう。
アロハシャツの三色カラーヘアーの大男と友達になろうなんて奴はそうはいない。
「俺は国光龍二。お前は?」
「近藤京平」
「近藤……京平か!?……ふーん……京平はまたなんで俺と友達になんて……」
あれ?俺のこと知ってる?そんなことより。
「突然だけど国光君を主人公のモデルにした小説を書いていいかな!?」
「なんなんだお前は……?アクティブだなぁ。小説?もしかして『なろう道』選択?」
自分でも驚いている。
俺の憧れ『宇宙の誘惑』の主人公『恭兵』は『めんどうなことはゴメンだぜ』な性格なのに……。
「なんかスッキリした……これが『俺』か……そうか俺は今まで……」
「勝手にスッキリしてんじゃねーよ……」
恭兵のようになりたくて……恭兵のように黙っていても女の子が集まり慕ってくれる青春がおくりたくて……俺は恭兵を演じていたんだ。
でもこのままじゃダメなんだ!
高校生活は残り一年もない!
恭兵みたいにある日突然婚約者が宇宙「ソラ」から降ってくることなんてない!
幼なじみも可愛い後輩も美人の先輩もいない!
今気づいた!あー!ちくしょーーー!部活ぐらいやりゃよかったーー!
俺は「近藤京平」として青春をつかみ取る!
このまま『学校にいって授業が終わったら帰ってくる』みたいな毎日をおくって卒業なんていやだ!
まずは坂本!
おめーをぶっ潰す!
「なー……座れよ。坂本?婚約者?なんだよお前?帰っていいか?」
……俺は立ち上がって全部声に出してたらしい。