表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ペ天使 -幸か不幸か高校生活-  作者: 海老尻尾
第1話 What is your name?
4/19

What is your name? (2)

「いやぁー、長かったなあ、校長の話よぉー。」

横を歩いている鮎原一馬が、何か喋っている。俺に。

その数メートル先で、何か友達と喋っている。あの子が。

「・・・つーかやっぱ多いなあ1年生なあ。可愛い子も、まあぼちぼち・・・な?」

「あー。」

「・・・おい。誠。」

「・・・・あ、え?」

「・・遅えよ気付くのが。」


校長の長い話が終わり、教頭の閉会の言葉と共に入学式は午前中のうちに終了し、

新入生は、各クラスごとに教室へ戻った。

予定としてはこの後LHRが30分程度あって今日の日程は終了。

今は、LHRが始まる12時20分まで、しばしの休息。

教室に戻ったとき時計は、12時ちょうどを指していた。

机に20分間座ってるのもつまらないし、教室には、まあ・・あの子はいたが、ずっとじろじろ見てるのもあれだしなあ、ということで、廊下にでると、

似たような境遇の一馬を見つけ、なりゆきで二人、廊下の壁によりかかって冒頭の会話・・にはなっていなかったが、そこにいたる。


まあつまり、よりかかった壁からちょうど4組の入り口付近で喋っているあの子が

視界に入ったので、無意識に見つめていて、一馬の話は上の空。

そういう状況である。


でもそういう状況だ、と横の一馬が納得するはずもなく、

「誠・・。お前大丈夫か?熱とかあんのか?」

と、結構マジ顔で心配してきた。

「いや、大丈夫だって。うん。」

ぱっと一馬の方を向き、笑う。

「・・・ほんとか?」

いぶかしげな目でこっちを向く一馬。

「ほんとだって。」

「そうか。・・で?」

「え?・・で?って何が?」

「いや、だから、結構可愛い子もいるな、って話。」

と、一馬が言った瞬間、自分の体温が2度ぐらい上がるのを感じた。

「え?ああ、お、おお。まあな、うん。いるよな。うん。」

あれ?まずい。なんか変に意識しちまってる・・。自然な会話だろ。うん。落ち着け!

「・・?なんでお前がそんなテンパってんだよ?」

「い、いやテンパってねーし。いやまあうんいるよな、可愛い子はな。」

「へー。お前のクラスにも?どんな人?」

「え!!??いやお前、ど、どんな人ってお前そりゃ・・・あの、女の子だよ。」

「・・・・・・・。」

急に、一馬が黙りこくった。で、俺のほてった顔をじっと見てくる。

「な・・なんだよ。」

「いや・・・面白いくらいわかりやすいなー、お前。」

「へ?」




全部話した。っていっても初めて会ったのが朝だし、全部話して主要時間2分。

「あははっ。ぶつかって一目ぼれって・・。ベタだなー。」

「ベタベタだよ。」

結構まじめなトーンで話したつもりだったが、話を聞いていた一馬は、終始笑っていた。まあ、うん。こんなやつだ。

「で?どこにいんの?その一目惚れした人は?」

興味津津に聞いてくる。そのテンションに、軽く引く。

「・・・ほら、4組の入り口にいる、あの・・あれ?」

気付かれないようにあの子の方を指さした、つもりだったたが、さっきまでいたところに、あの子はいなかった。あの子と一緒に喋っていた女子数人はいるのに。

「あ、いまいないな。ま、いずれ分かるだろ。」

「ふーん。成程ねぇ。入学早々青春してんなあ、誠君バカヤロー。」

親戚に1人はいる威勢のいいおっさんみたいなノリで、がんっっと肘で小突いてきた。

「いてーよ。」

微妙な反抗。

「あ、わりい。あ、つかトイレ行かね?時間もあとちょっとだし。」

「・・いいけど、今結構人いっぱいいるぞ。向こう側の講義室のあたりのトイレにしない?」

「おお。そだな。」

廊下を歩く時も、さりげなくあの子を探してみる。でもいなかった。

わざわざやって来た講義室側、西側のトイレだったが、思いのほかぼろかった。

看板もとれかかっている。他の生徒もトイレ付近にはいなかった。

「・・なんでこんなぼろいんだここ。」

「俺が知るかよ。」

とかいいながら、ドアノブを回し、中に入る。


と同時に、一瞬思考が停止した。

あまりにもトイレが臭かった、のではない。

ゴキブリがかさかさと動いていた、のでもない。


ドアを開けて正面の蛇口にいたのは、

ゴキブリではなく、

女子だった。新品のチェックの制服を着ている。

え?なんで?女子がいんの?

鏡を向いている後姿でも、正真正銘女子だとわかる。

コンマ数秒の、沈黙。

横の一馬も、固まっている。

鏡越しに、ふと、後姿の女子の顔が見えた。

と同時に、全身の毛穴から変な汁が出てきた。ように感じた。

おいウソだろ・・・。


あの子であった。見間違いでなければ。

いや見間違うはずがない。

え?まさかそんな・・そんな事って・・

なんであの子が男子トイレに・・!?

「いやアホかお前!鈍すぎやろ!」

もし横に関西のツッコミ上手な芸人がいたら、そう俺にツッコんでいたに違いない。

でも残念ながらここは関西でもないし、横にいるのは、固まっている一馬だけだ。


少しづつ復旧していくおれの脳内回線とともに、正常な思考を徐々に取り戻していく。

そしてようやく、過ちに気付く。


ああ、ここ女子トイレじゃないですか。

僕らがドアノブを開けてあほ丸出しでインターしたのは、そう

女子トイレじゃあないですかあ。


だから前にはあの子がいるんだな。

偶然にも最悪な状況で居合わせてしまったわけだな。うん。納得。

やっと状況理解。


でも、遅すぎた。あの子は既に気付いていた。

鏡越しにこっちをもう、すげーガン見してる。


おいおいおいおいおいおい・・・。まじかよ。

やっっべぇぇぇぇ~~~~~~~~~~~~・・・・・・。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ