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ペ天使 -幸か不幸か高校生活-  作者: 海老尻尾
第3話 高校生活、最初が肝心!って塾の先生言ってたけども
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高校生活、最初が肝心!って塾の先生言ってたけども <四>

「いやー、うめぇわー。めっちゃうめえよあんたの唐揚げ。しかもこんなでかいの貰っちゃって、悪いな、なんか。サンキュー、えーと……」

「あ、俺、櫨村。櫨村誠」

「サンキュー櫨村君。こんな俺のために」

「まったくのぉ。登校2日目で弁当を忘れて、初対面のやつに食べ物を恵んでもらうとは。お前と同じ中学出身であることが恥ずかしいわい」

「うるへぇ。」

「あ、やっぱり2人同じ中学なんだ」

「ああ。俺は、たちばな 泰騎たいき。で、こっちの田舎野郎が岩柴俊介いわしば しゅんすけ。2人そろって白河岸西中出身。市街地から結構離れた田舎中学だけどな。まあ、つってもコイツの田舎っぷりとなまりっぷりは俺らの中でも異常だったけど」

「うるさいのぉ。お前はホントに。俺のなまりは郷土愛の表れじゃい。それに、自分の自己紹介くらい自分でするわい。岩柴 俊介じゃ。よろしくの」


さっきまでの孤独が嘘のように、箸を片手に仲良く談笑する俺。


唐揚げ1個という生け贄で、「新たな仲間との対話の場」を手にした俺。

“食は人を繋ぐ”

という言葉に、これ程共感したことはない。


うん。もう言わせてもらうわ。

……めっちゃ今ホッとしてます、俺。

いやー、寂しかったわー!1人弁当。

すげぇ惨めだったわー!1人弁当。

ぶっちゃけ唐揚げとかに全然未練なかった!

さっきまで意地はってただけでした!

喜んで差し出しました!はい!


何?この安心感。前に向かい合ってる人がいるっていう安心感。

一緒に飯を食べる人がいるっていう安心感ハンパじゃねーな!

初対面だけどすげーいい人にみえるよこの2人。


「入学式の日さあ、俺、櫨村君とちょっとだけ話したよね。覚えてる?」

と言ってきたのは、そのいい人に見える2人の、橘君のほうであった。


「ああ。覚えてるよ」


忘れるわけがない。

入学式が終わり、LHRが始まるのを待つ時間帯。

まどかさんと一馬との例の事件の後、トイレから帰って席につくと、

右隣のやつからあらぬ疑いをかけられた。


【「ね、ね、ね。」

なんか、妙にそわそわしてる。

「な・・何?」

「もしかしてさ、付き合ってんの?」

「へ?」

な、なんだ?何言ってんだコイツ・・。

「いやだからさ、さっき2人で教室入ってきたじゃん、時間ギリギリに。ほら、あの子と。」

と、指差したのは、まどかさんであった。】


で、その右隣のやつが今目の前にいる橘君なわけである。

あのときはやたらと馴れ馴れしいやつだなとか思ったが、

こうやって共に飯を食う事で、それが偏見だと気づくのに時間はかからなかった。


「いやー、あんときはごめんな。変なこといっちまって」

「あー、気にしなくていいよ。うん」

「……なんだかよくわからんが、入学式の日も橘が迷惑をかけたようじゃな……。

すまんのぉ。櫨村君。本人は悪気はないようじゃから、許してやっておくれ」

「保護者かテメーは!俺の!」


橘君とのやりとりでいい味をだしている岩柴君も、最初に俺の中で設定した“明らかに間違ってる人達”の中の、“朝から早弁してる人”であったわけだが、そのなまり、というより爺さん婆さんが話しているような喋り方も相まって、すぐ打ち解けることができた。


「……さっきから気になってんだけど。その……橘君、席、俺の隣だよね?」

「ああ。それがどうした?」

「何で、弁当の時だけ、俺の前の席で食ってんの?……なんでわざわざちょっとだけ移動してんの?自分の席で食えば……」

そう。

さっきから俺が地味に気になってたこと。

入学式でも、さっきのテストでも、確かに橘君の席は俺の右隣だったはずである。

なのになぜ……

「見てみ。横」

「……?」

言われるがまま、ちらっ、と視線を右側にやる。


本来の橘君の席には、女子が座っていた。周りの女子たちと笑って話している。

ちなみに、その周りの女子の中にまどかさんは含まれていなかった。……ちっ。


ショートヘアで、小柄の、なんというか、身体全体から“ボーイッシュ”感が漂う女子であった。

「南部 梨香。あいつも俺らと同じ白河岸西中出身のやつだよ。

“あそこらへんの机使って、女子数人でグループ作って弁当食べるから、アンタの机使わせろ。”って言ってきたから、別に拒む理由もねーから、な。」

と橘君。

「で、橘が俺のところにきたんじゃが、俺の机の周りも女子ばっかでのー。ちょうど2つここが空いてたから2人で逃げてきたわけじゃ。」

と岩柴君。


「……成程ね。橘君が南部?さんに席を譲ったわけか。」

「まあそうだな。半ばアイツの強制だけど。なにせアイツ男は皆自分のしもべだと思ってるからな。気をつけろよ。」

「橘、この距離でそういうこと言うと、聞こえるぞい。」

と、岩柴君が言うと、ホントに聞こえてたようで、

「うるはいなぁ。あんはら。」

と、口に頬張っていたおかずのエビフライかなんかを飲み込みながら、南部さんがこっちを向いてきた。

「男がしもべなんて思ってねーわ!ていうか、橘、岩柴、ホントやめてそういう適当な事言うの!いきなりアタシのイメージ崩さないで!」

「……もともと崩れてっから心配すんな。つーか俺の机なんだから綺麗に使えコラ。」


「……あー、そういう態度とる?橘。いいの?……言うよ?」

南部さんがそういうと、さっきまで余裕かましていた橘君の顔が一瞬青ざめた、気がした。

「は!?・・いや、何?言うって何?あー、わけわかんねーわー。マジで。」

「いや、別にアンタがどう言おうと勝手だけど、ただアタシに対する態度次第では、言うよ?色んなこと。マジで。周りの人たちに。」

「……すいませんっした」


……ええ!?早!折れんの早!つーかもろっ!つーか南部さんの揺さぶり怖っ!

どんだけ弱みにぎられてんだよ橘君!!内容気になってしょうがねーわ!


「まあ、ご覧のとおり男勝りなやつでの。特に橘と南部はいつもこんな感じじゃ。まあ、悪い奴じゃないんじゃがな。」

「岩柴も余計なこと言わなくていいの。」

「……すまんの」

……あ、岩柴君も既に支配下に置かれてる感じ?あ、そう……。

南部さん。怖いわぁ・・。


「すごーい梨香!」

「ほんと、なんかオーラでてたよ。オーラ。」

恐怖する男子とは裏腹に、南部さんに称賛をあびせるのは、さっきまで南部さんと盛り上がってた女子たちである。


……なんだかんだで、面白そうだな……このクラス。

何て思ったりする。


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