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ペ天使 -幸か不幸か高校生活-  作者: 海老尻尾
第3話 高校生活、最初が肝心!って塾の先生言ってたけども
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高校生活、最初が肝心!って塾の先生言ってたけども <三>

いやー、いやいや。はっはっはっ。


人間ホントにやばいと笑えてくるってのはマジな話なようで。

俺・櫨村誠は「新入生実力テスト」の最後の科目の英語が終わったそのとき、

自分の席で1人、笑っていた。


いやー、ホントにね、なんでか知らないけど、笑いたくなるんですよ。うん。

ここまでテストが出来ないともう逆に開き直るしかないというか。

唯一手ごたえのあった数学は良しとして、国語と英語はもう完全に破滅しちゃいましたよ。

はっはっはっ。もう笑うしかねーよホント。

ま、勉強してねーし?こんなもんよ。うん。

はっはっはっ。


・・・・・・・・弁当食うか・・。


12時20分にテストが全教科終わり、1時20分まで昼食を含めた昼休み、という時間帯。

弁当、ねぇ・・。

ふと、周りを見渡してみた。

すると、

女子は、俺が唯一知っているまどかさん含め、徐々に打ち解け始めてる感があるのがわかる。が、

男子はチキンが多いのか、まだグループを作って弁当を食ってるやつらは少ない。1人で食べてるやつも何人かいる。

……まあ、これなら1人で食っても、別に……大丈夫だよね?


いや、まあ1人で食うのが前提となっている時点で既にもう結構な負け犬なんだけど。


今日は仕方ない。うん。

そう自分に言い聞かせ、自分の席で1人、弁当箱を開ける。


お、唐揚げじゃん。今日。しかもでかいの3個。

そうだ。もし、今日他の人と弁当食ってたら確実に唐揚げ持ってかれてたよ。うん。小さいの5~6個みたいな配分だったらまだ少ないダメージで済んだけど、でかいの3個だったら最低でも3分の1持ってかれるから、それは避けたいよね。

今日は仕方ない。

唐揚げを守るために、俺は1人で食ってるだけだ。

誰にも話しかけられないんじゃなくて、話しかけないだけ。

いや、もう明日の昼休みとかは、皆でわいわいやってると思うけど。

今日は……。うん。まだ……。

そう自分に言い聞かせ、むなしさと共に黙々と白飯を口に入れる。


1人で静かに食ってると、いつも以上に、周りの会話が余計に聞こえてくる。

特に、前の席で話しながら弁当を食う2人の男子の会話。

え、いや?別に中に入れてほしいとかそんなんじゃないからね?決してそういうわけじゃないけど、やたらと耳に入ってくる、前の2人の会話。


「サンキュー、岩柴。マジ助かるぜ」

「古い付き合いじゃ。このくらいはな。それに野菜炒めならたんまりはいっとったからの」

「確かに昔からオメーの弁当は多かったからな。つーかお前、朝の時点で早弁してたくせにまだあんのか弁当。どんだけ持ってきてんだよ」

「俺の場合、登校から体力使うからの。いくら食っても太らん」


この時点でここまで気さくに喋ってるってことは同じく中学かなんかだろうか。

2人のうちの岩柴と呼ばれていたほうは喋りにやたらとなまりを感じる。遠い方から通ってる人だ多分。

で、もう一方の人は、机の上に弁当箱がないし、岩柴って人から野菜炒めを貰ってるところから、弁当を忘れてきたんだろう。


「いやー、しっかし相変わらずうめーな、お前んちの料理は。」


「当たり前じゃ。そのお前にやった野菜炒めも家の畑で採れた野菜をつかっとるからの。なかなかのもんじゃろ。」


「確かにな。でも……まあ、こんなこと言うのもアレなんだけど……。

ちょっと物足りないかなっていうか。

お前んちの野菜炒め凄いうまいのはいいんだけど……。

テスト終わって疲れた俺の体が求めてるのは野菜じゃなかったんだよなぁ……。なんかこうもっと、さ、主役級の輝きを放ってるおかず達が欲しかったかな。

……唐揚げとか?あるじゃない」


「うるさいやつだのぉ。あいにく唐揚げははいっとらんわ。人から飯貰ってるくせに文句言うなぁアホが。というか弁当忘れる時点で既にお前はアホじゃ。アホ」


「うるせぇ田舎っぺ大将!野菜炒めじゃダメなんだよ、物足りねーんだよ!

確かにお前んちの野菜炒めはクソうめーよ?マジでレベル高い野菜炒めであることは認めよう。うん。けどな、野菜炒めはいくら成長しようと野菜炒めなんだよ。脇役なんだよ。メインデッシュのやつらには敵わねーんだよ!あー、唐揚げ食いてーわ」


「……黙って聞いてりゃいい気になりおってお前ぇ!!野菜炒めなめんなぁ!コイツは、確かに脇役じゃ。お前のいう唐揚げやらハンバーグには敵わないかもしれん。けんども、コイツは、それを分かりながら、こうやって生きてんじゃろうが!

自らの位置をわきまえて、あえて嫌われ者を演じる、主役の引き立て役に回る、それは、俺たちの想像を超えるような勇気がないと出来ん行動じゃと、俺は思う」


「いや知らねーよ!どんだけ野菜炒めに肩入れしてんだテメーは!わかったから!野菜炒めが勇者だってことはわかった!けど!けど俺は今唐揚げが食いたいんだよ!今日の弁当唐揚げ入ってたのを台所で確かに見たんだよ!もーすげー楽しみにしてたのによぉ……」


「しゃーないじゃろ。いまさらわめいても。とにかく俺の弁当には唐揚げははいっとらん。諦めるんじゃな」


「……どーにかなんねぇかなぁ……。もうどうしよう。諦めきれないんだけど。最初の方は別にそこまで唐揚げに固執してなかったけど、だんだんすげー欲求が胸から押し上げてくるんだけど。今世界で一番食いたいものが唐揚げなんだけど。」


「小学生か、お前はぁ。唐揚げ唐揚げうるさいのぉ」


「小学生だろうと高校生だろうと唐揚げテンション上がるだろーが!……あーあ、何か、何か奇跡が起きて俺の目の前に唐揚げが現れたりしないかなぁ……」


「あのー……」

「んあ?」

「……良かったら、俺の弁当の……唐揚げ、食べる……?」


……そう言うしかないじゃないですか。

前の席でそういう会話されたら、……あげるしかないじゃないですか。

声掛けるしか、ないじゃないですか……。

唐揚げが俺の大好物で、弁当に大きめのが3個しか入ってなくて、3分の1をあげることになっても、

声掛けるしか、ないじゃないですか……。


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