天使、一切関係ないけど。
桜が舞ってる。
空が晴れてる。
完璧だ。まさに。
これ以上ない、入学式にあるべき最高のシュチュエーション。
……シュチュエーション?シチュ……シュチエ……あれ何だったけ?
……まあいいや。
とにかく。
西暦2014年4月7日、土曜日。
県立奈津野高校入学式の天候は、快晴だ。
そう。
これがどれほど意味のあることか。
この俺の過去を知っているものならば分かるだろう。
小学校入学式。雨。
小学校大運動会。台風。
小学校卒業式。雨。
中学校入学式。豪雨。
修学旅行。台風。
中学校卒業式。……雨。
という、おそらく史上最強のTHE・雨男としての経歴をもつこの俺、櫨村 誠にとって、高校の入学式を太陽の下で迎えられるということは、かなりの奇跡なのだ。
やったぜ櫨村(自分)。俺の高校ライフは眩しく輝やいているぞ。
今日を持って雨男のレッテルはめでたく返上……。
と1人で浮かれていると、
「よっ」
という声ともに、トン、と後ろから肩を叩かれた。
それが誰なのか、振り向かなくても分かる。
「遅かったな鮎原」
「いやあ、まあ5分前だし?セーフっしょ全然」
鮎原 一馬。
俺と同じ矢音芽中学校出身。一言で人物紹介をするならば、
基本なんでもそれなりにこなすヤツ。といったところか。
一応小学校からの付き合いだし、気心は互いに知れてる仲だ。
「よし。じゃあ行くかー」
「そだな。えーと、まず校舎前の張り紙で自分のクラスを確認だっけか」
すでに校舎の入り口は新品の制服をきた新入生達(俺もだけど)と、その親とでごった返していた。
「うひゃー。多いな。どうする?一馬」
「……めんどくせーけど人ごみかき分けてクラスだけ確認しようぜ」
一馬がたるそうに前へ進みはじめた。
「あっ、ちょ待てよ一馬……」
そそくさと人ごみの中を進んでいく一馬を必死に目で追いながら、ぎこちなく前へ進む。
「相変わらずせっかちだなあいつ……」
とつぶやきながら行きかう人の群れに目をくれ、
……こいつらが俺の同級生になんのか、などと考えてみる。
いろんなヤツがいるなあ……ってあれ?
「やべ」
目で追っていたはずの一馬が、いつの間にかいない。
あれ?どこだ?
と、前へとゆっくりと進む人ごみのなか、1人立ち止まる。
そうすると、まあ当然……
がんっ
後続の行く手を遮り、衝突。
「あっ……すいません!」
ぱっと後ろを振り向き、少々焦りながら謝る。
女子だった。
身長は自分よりチョイした。ショートヘア。
まあどこにでもいる普通の……いや、そうでもないな……。まあ、ちょっと可愛いかも。
……って、あれ?何だ?なんで俺、こんな心臓バクバクしてんだ?
「あ、こちらこそ、前見てなくて、ごめん……」
「あ、いや、全然……」
あれ?なんでこんな声うわずってんの?つーかはやく前進めよ俺!
前つっかえてんだろーが!
という心の叫びが聞こえ、バクバクした心臓をおさえながら、
「あ、じゃ、ごめんね。うん」
と、テンパりながらもう一回謝り、再び校舎入り口に向かい始めた。
入学早々やってしまった。
おそらくこれはあれだ。うん。……いわゆる、
あきたこまち。……いや違う。それじゃない。
ひとめぼれ。そうそれ。
(まじかよ……。なんだよこの展開。ベタすぎだろ!!こんなプロローグ主人公としてぜってえ認めねえぞこのヤロ……。
でも畜生……。可愛かったあの子……)
「……つか、一馬のやつどこいった?」