200文字 それゆけ 作者: 囘囘靑 やなせたかし先生がナくなったという。 何のためにイきて、何をして喜ぶのか。 僕はまだその答えが分からない。 正月三ヶ日に届いた喪中の知らせ。 屋根に降りつむ雪。 僕は名宛人の名さえ知らない。 目の前のトラックに跳ねられる一人。 「うわあ、あ、あ、あ、あ、!」 身近なシ。尻餅。 この声は僕の声か。――そのとき、 「それゆけ――!」 誰かの声。声の主は歩きながら駅へ消える。 僕はその人を知っている。 半袖を着たい、のどかな春。 やっちまった。