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第二姫様付き侍女のお話  作者: REDPINE
本編~ニナ視点~
6/10

5

※少し官能的?な表現があります。

ご注意ください。

 当然の様に服を脱げと言ってくるノクバース様に、私は羞恥に頬を赤く染めつつどう説明しようか悩んだ。

 だってこの世界って、肌見せは夫婦間でのみ!みたいな考えが常識なんだよ?

 それを、今日初めて口を利いたお方(しかもイケメン!)に、いくら私と言えど、あっさり肌を見せれるような太い神経は持ち合わせていない。


 確かに、生前は何の躊躇(ちゅうちょ)もなく(いや、初めてそれ着る時は恥ずかしかったけど…それ以降は慣れた)キャミだけとか背中パカーとか肩見せとかショーパンやらミニスカやらキュロットやらで、生足見せとかやってましたよ?

 けど、もう何年この世界で生活していると思っているんだ!

 約20年だよ!?

 約20年間も肌は侍女か夫となる人にしか見せてはいけませんよと言われて育ちゃあ、恥ずかしさの一つや二つは生まれますって!

 どうにか上手い言い訳を言おうとして、アーだのウーだのでもだのと私が言っていると。



「それでは治療がいつまで経っても終わらないだろう。

ウダウダ言ってないで早く脱げ。」


「~~~~~~~っ!?」



 彼は無情にも、痛みで動けない私をあざ笑うかのように手早く身体の下に己の手を突っ込んで、声の無い叫びを私があげているにも拘らず無視して(というか、声が出てないから気付いてないのか?)、あれよあれよという間に胸側にあるボタンを全て外して、肩から肌蹴(はだけ)させ、服を下げた。


 一気に顕わになる私の背中。

 季節は秋も終わろうかというこの時期だ。

 少しひんやりとした空気が露出した私の素肌(せなか)を舐めていく。

 若干寒い……。

 袖は未だに腕に通っている為、侍女服で腕も体(ワンピース型なので腰まで服を下ろされている)も拘束されて身動きが取れなくなった。

 どうしようどうしようと焦っていた私だが、逆にパニックになり過ぎて体が硬直して、まるで観念して大人しくなったかのように動けなかった。

 そんな私を良い事に、ノクバース様はフムと言いつつ、そっと手を私の背中に当てる。



「ひゃっ!?」


「ああ、すまない。

俺の手が冷たかったか?

けれど、少しの間だけだから我慢してくれ。」



 ひんやりとした彼の大きく筋張った、剣ダコの出来ているらしい手が私の背中に触れる。

 途端、ビクリと肩を揺らし、驚いて変な声を上げてしまった。

 そんな私に彼は冷静な口調であっさりと謝罪し、けれども治療をするために我慢しろという。


 もう肌は出してしまったし、治療してるんだし、これ以上の羞恥はないはず!


 私はそう考えてコクリと一つ頷いた。

 すると、彼は何故かクスリと妖しく艶やかな、色香まで纏わせているような笑い声を漏らし……。



「良い子だ。」



 男性特有の低い声音でそう言って、背中に置いていた手を動かし始めた。

 ひんやりと冷たい彼の大きな手が私の背中を撫でるように、ツゥー…っとゆっくりと動いて行く。

 そんな彼の指や手の動きに擽ったさと、何とも言えない羞恥に(さいな)まれながらも、私は治療、治療、治療…!と呪文のように頭の中で何度も何度も繰り返えす。

 そして、思わず口から出そうになる声を、唇を噛み締める様にして口を閉ざし耐える。



「……んっ…………ん、ぅ………!」


「……結構、範囲が広いな。」


「……っ………んぅ……!」


「……痛むのか?

もう少しで範囲を特定するから、我慢してくれ。」



 どうにか口を閉ざして耐えてはいるが、鼻から漏れ出てくる声は抑えられなくて。

 かといって、ベッドに顔を押し付けたら息が苦しいし、声は結局くぐもって少しだけ小さくなるだけで、二人っきりのこの静まり返った部屋では消えることなく聞こえるし、意味がない。


 ってか、いやいや、ノクバース様、声が出るのは痛みの所為じゃないんです!

 貴方のその手がひんやり冷たくて、けれどもその優しく撫でる手つきが何とも(くすぐ)ったくて……それで声が、ね?!

 てかもう、コレ、羞恥しかなくねっ?!

 ドキドキする!

 心臓が早鐘を打ってるみたいでバクバクうるさい!

 まるで耳と心臓がくっ付いたみたいだ。

 ってか、何故か彼の手の動きに全神経が集中してしまって(集中したくないのに!)、こう……。

 コツコツした彼の二本の指が背骨を伝うように上から下へとゆっくり下りてったり、まるで首筋から肩甲骨までのラインを確かめているかの様に私とは違う硬い掌や指でなぞられたり、肩や腰のあたりを指の腹で何度か撫でられたり――ってのがいやに脳に伝わってくる。

 時々、ちょいと油断すると仰け反りそうになる……特に背筋をなぞられてる時がな!


 ……どうにか耐えてるけど!


 何だこれ、何だこれ、何だこれ……っ!!

 いや、分かってます!

 だてに前世の記憶を持ち合わせちゃあいませんよ!

 これは情事の前の愛撫みたいな事になってるんだこの野郎!

 こういうのドラマとかで見たことあるし!

 前世でも現世でも、実際にされたことはないがな!


 ……って、違う違う、これは情事じゃないっ!!

 治療治療治療治療治療治療治療…………!!!

 もう内心パニックな私は、自分に言い聞かせるように先程も繰り返していた呪文を、まるでその言葉しか知らないかのように脳内で繰り返し繰り返し(重要なのでまた二度言います!)唱えるのであった。

 本当は自分の口でも言った方が良い(自分の声を自分の耳で聞いて、暗示を掛けられるという話を聞いた事があるからそのようにしようと…)のだけど、口を開いたらもっと大きな声が出ちゃいそうで、もっと恥ずかしい目に遭いそうな気がして……。


 唇を噛んで口を引き結んでいる今でさえ、敢え無く声が漏れちゃってるのに!

 これ以上はダメだ!

 っていうか、今でもダメじゃん!!

 幸い、ノクバース様が痛みから声が漏れてるって思ってくれてるから良いものの、喘ぎ声の類だと知れたら……って、喘ぎ声じゃない!!

 治療治療治療治療治療治療治療…………治療ったら治療っ!!!



「………………――よし。

じゃあ、ヒーリングを掛けるから、そのままジッとしてろよ?」



 フッと撫でる感覚が消え、背中の中心にひんやりとした手が添えるようにしてソッと置かれる。

 そこからまた、先程の様な波打つ温もりが背中を満たす。

 それは、先ほど彼が特定した怪我の範囲に広がり、そこで漸く、自分の背中の3分の2程の範囲が怪我を負っているという事に気づいた。


 ほんと、ノクバース様がおっしゃられた通り、範囲が広かったんだ……。

 だから、あんな風に背中全体を触ら……確認されてたのね。


 動かなくなった手から波打つ温もりに、またもや瞼が落ちる。

 先程まで嵐の様に吹き荒ぶっていた気持ちも、まるでその温もりに癒やされるようにして凪いでいく。

 背中の治療には時間がかかり、色々な意味で疲れていた私はその間にというか、いつの間にか眠ってしまっていた。



此処まで読んでくださり、ありがとうございました。

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