ショートショートI「続・ウサギと亀」
ウサギとの競争に勝ったカメは、しばらく周りから持てはやされていました。しかしそれも数週間のことです。しばらくすると、そんなことなど忘れてしまいました。
「あんなに頑張ったのに……。みんな忘れてしまうなんて」
悔し涙を浮かべていると、ワシが笑いながら言いました。
「なぁ、空を飛べばもっと注目してもらえるんじゃねえか?」
「空を飛ぶ!?」
それを聞いてカメはびっくりしました。
「できないよ。そんなこと」
「できる!」
ワシは翼を広げて熱っぽく語ります。
「努力すれば必ず報われる! 現にウサギとの競争に勝ったじゃねえか」
「そう……だよね!」
カメの答えを聞いて、ワシも満足してうなずきました。
「よかったら俺が空まで運んでやってもいいぜ」
ワシの申し出にカメは目をキラキラさせました。ついに空飛ぶカメがこの世に生まれるかと思うと、胸踊る気持ちになったのです。
「えっ? いいの?」
「あぁ、簡単なことさ」
言うがはやいか、ワシは爪でカメを掴んで舞い上がります。あまりの高さにカメは心配になって来ました。
「ね、ねぇ、もっと低く飛んでくれない?」
「大丈夫、大丈夫」
笑いながらワシは言います。
「いざとなったら俺が助けてやるから、心配するな……いいか、落とすぞ?」
「う、うん……」
不安でしたが、カメはワシを信じることにしてみたのです。
ひゅーと風を切る音とともに手足をばたつかせました。しかし一向に空を飛べる気配はありません。とうとう地面に激突して死んでしまいました。
その後、カメはワシが美味しくいただきました。
いかがでしたか? ちなみにこの話には「うさぎとかめ」の他にもう一つ元ネタが。イソップ寓話の「わしとかめ」という話です。「うさぎとかめ」の続編とも言われていますが、本当かどうかは解りません。
この「ワシとカメ」ですが、あくまでカメがワシの忠告を聞かなかった報いとされています。
しかし僕はこのようにアレンジしてみました。