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ラブアタッカー☆あおい© (ちゃん)

作者: 碧流

<人物紹介>

三葉(さんば)あおい…京に片思いしているヤンデレ。

変人だが持ち前の明るさとルックス、アスリート並みの運動神経の良さから男女問わずモテモテ。


桜野(さくらの) (けい)…あおいの幼なじみで、彼女に「きょーくん」と呼ばれている。

あおいのラブアタックに心底うんざりしているが、彼女の事は嫌いじゃない。つまりツンデレ。



 夏の日の午後、とある高校のプール脇にて。

 炎天下の中フェンスに手をかけ、掃除のために排水され空になったプールをひたすら見つめる女子高生が居た。

 彼女の名は三葉あおい。

 風に揺れるポニーテール、そしてそれをまとめる大きな三つ葉のクローバーの髪飾りが目を引く。

スレンダーな体つきで、なりだけ見れば誰もが美少女だと認めてもおかしくない彼女は、じゅるりとよだれを垂らしながら、やはり一点を凝視していた。

「あぁ…今日も美味しそう…――きょーくん…♪」

 あおいの視線の先に居たもの…それは、一人の男子生徒だった。

「!?」

 その男子生徒こと桜野京は、突如背筋に悪寒を感じた。彼は現在、プール清掃の真っ最中だった。

「何だ今の寒気…?まぁ気のせいか――」

 否、その予感は気のせいではなかった。

 何故なら京が空を見上げた時、太陽を遮って何かが飛んで(・・・)きたからだ。

「きょ~~~く~~~~ん(≧∇≦)♥♥♥♥♥」

 京の瞳に映ったのは、逆光でよく見えない黒い人影(シルエット)

「――って、うおおぉぉぉぉ!??」

 その人影は京目掛けて襲来したが、彼は反射的にそれをかわした。

 京の横に人影が着地する。その人影こそ、三葉あおいその人だった。

「んもぉぉきょーくんってば、またわたしのラブアタックを受けてくれなかったのねっ(>_<)」

 開口一番アニメ声でそう言ってのけたあおいは、実はフェンスを登り飛び越えて京に突撃してきていたのだった。

「ラブアタックって何だよ!!それ以前に上から飛んでくるとか危なすぎだろ!?」

「だってきょーくんがわたしの全身全霊の愛を受けとめてくれないから…勢い付けたらストライクするかと思って(¬з¬)」

「ねーよ!!てかこうも毎日突撃されても困るんだよ!!」

「えー(´・ω・`)」

 そう、京とあおいは幼少時代からの付き合いで、幼稚園~現在に至るまでずっと同じ学校で過ごしてきた仲なのだ。

 自宅はお隣さん同士なので毎日嫌でも顔を合わせなければならず、たとえクラスが離れていても、放課おきにあおいが京のクラスへ乱入し、彼にべったりするのが常の光景だった。

 もっとも、実際に二人の仲が良かったのは小学校低学年までで、それ以降はあおいの執拗で一方的なアタックに対し、京はこうしてあからさまに迷惑なのをアピールし続けてきたのだが……。

 彼女はまるで気にせず、彼にアタックを続けていた。

「はっきり言う。愛が重い(物理的に」

「良かった♪わたしの愛はきょーくんにしっかり伝わってたんだね☆もぅ、素直に言ってくれたら良いのに///でもそんなツンデレなきょーくんも激萌え♥」

「意味がちげぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 そんな京の態度も意に介さず、今日も今日とてあおいは京に片思いしているのだった。


「あ、きょーくん()今日の夕飯みそ田楽でしょ(σ・∀・)σわたしも買い物手伝うよ」

「あれ、何で知ってんだ?」

(一言も口にした覚えは無いはず…)

 京があおいに向き直ると、彼女は妙にニヤニヤしていた。

「うふふ、おばさんときょーくんの会話、聞いちゃったんだ~♪」

「はぁ!?僕は家ん中でお袋と喋って、」

「じゃじゃーんっ★」

 するとあおいはポケットから小さな機械を取り出した。

「きょーくんのお部屋の机の下に、盗聴器を仕掛けさせていただきました(^w^)ゞこれできょーくんの生活がバッチリ把握出来るんだよ(^皿^)v」

「何やってんだお前は!!」

 有り得ない行動に思わずのけぞる京。

(ストーカーかこいつは!!)

「むー…そんなにイヤなら帰ってから外すと良いよ。その代わり今度もっと凄いの仕掛けとくから」

「犯罪予告かよ!!」


 ツッコミでヘトヘトになりながらも京は(あおいの意向で)一緒に帰り、自宅へとそれぞれ戻った。

 帰宅後、京は早速机の下の盗聴器を外してから、ベッドの上に身を投げ出した。

「はぁぁぁ…あいつには何されるか解ったもんじゃないな……」

 仰向けに寝転がりながら、彼は今日一日の出来事を思い返した。

 朝っぱらからあおいと(無理矢理)二人で登校し、昼もランチを(無理矢理)一緒に食べさせられ、帰りも…。

 彼自身、内心その事は全く嬉しくない訳でもなかったりするのだが、彼にはどうしても彼女のアプローチを素直に受け入れられない理由があった。


 あおいは性格には多少難があるものの、それを差し引けば容姿端麗・運動神経は抜群と、男子からも女子からも人気が高かった。

 一方の京は幼い頃からどちらかといえば大人しく、いじめられる事が多かった。

そこであおいに守られることがしばしばあったので、京はどこか彼女に対して引け目を感じていた。

 その事から京は、彼女が自分に関わることで周囲から変な目で見られてしまうのではないかという危惧と、男としてあおいに守られる訳には行かないというプライドがあった。


 同じ頃、あおいは自宅で机に向かって黙々と日記を書いていた。題名は「あおいときょーくんの♥ラブラブ日記」…大変痛々しいタイトルである。

 その日記に今日一日の京との出来事を書き連ね、あおいは下品にニヤけていた。

「朝登校する時にきょーくんにラリアットかましたら『ふざけんな』って怒られちゃった☆てへぺろ(・ω<)」

「今日のきょーくんのお弁当は玉子焼きとから揚げと梅干とごはんとのり。フツーのお弁当だけどきょーくんらしさが出ててGOOD♪今度愛妻弁当でも作ってきてあげようかな??」

 一通り書き終えた後、あおいは日記を閉じ引き出しに閉まった。

 ちなみに彼女のデスクマットの下には幼少時から今までの京の写真が大量に挟まれていて(もちろん京に見せたことは一度も無い)、その写真の中には最早盗撮としか思えない代物も含まれており、彼女の片思い(ストーカー)歴が長いことは容易に想像出来た。

 また、その写真の多さに負けないくらい三つ葉のクローバーのモチーフの文房具やらノートやらのグッズが部屋のあちこちに見受けられた。

 そして彼女は、机の脇に立てかけられた写真スタンドを取り出し、その中に収められている押し花状の三つ葉のクローバーをじっと見つめた。

 その三つ葉のクローバーは、あおいにとってとても思い出深い品だった。

 あおいの脳裏に、あの日の幼い二人の会話がフラッシュバックする。


『ずっと一緒に居ようね、あおいちゃん。約束だよ』

 そう言って京が渡したのは、三つ葉のクローバー。花言葉は「約束」。

『ありがとう!!ずっと大事にするね、きょーくん』

 純粋な恋心。二人で交わした永遠の約束。

『何があっても、ずっと、ずうっと一緒だよ……』


(あの日からずっと、きょーくんは私の――)

 それ以来あおいは三つ葉のクローバーのモチーフを好むようになり、グッズを集め始めたのだ。

(今日はあんなこと言われちゃったけど、明日こそは――!)

 気を取り直して、あおいは花瓶に挿していた三つ葉のクローバーを抜き取った。

 このクローバーはいつも近くの公園で採ったものを挿していて、おかげさまで彼女はクローバーの群生地もすっかり熟知している。

 するとあおいはクローバーの葉を一枚ずつ千切り始めた。

「スキ…キライ…スキ。なぁんだ!やっぱりきょーくんは私のことが大好きなんだ♪良かったぁ!!心配して損しちゃった」

 あおいの日課はこの三つ葉のクローバーで花占いをすることだった。と言っても花びらは三枚なので結果は目に見えて判るのだが。

「うふふふふ、明日もきょーくんの水着姿(ベストショット)盗撮(激写)できますよーに☆」

 なんとも不純な願望だった。



 翌日の放課後。京はクラスメートと帰る約束をし、一緒に下校しようとしていた。

「きょーくーん!一緒に帰ろー♡」

「ぐえっ!!」

 後ろから強烈なタックルを仕掛け、そのまま京の上にのしかかるあおい。

 彼のリアクションが妙に薄いのは、これが日常茶飯事だからである。

「今日は無理。前々から皆とゲーセン行くって約束してたんだから」

「ごめんな、三葉」

 クラスメートの一人が詫びを入れた。が、

「約束ぅ!?ダメダメ、きょーくんは私と一緒に帰ってもらうの!一緒に帰れなきゃやーだー!!o(>3<)o」

 あおいは駄々をこね、そのまま京の首にがっついてしまう。

 しかしその理不尽極まりない我が儘に、ついに京の堪忍袋の緒が切れた。

「あーもう!いい加減にしろ!!人のスケジュールをことごとく邪魔しやがって!!本当に鬱陶しいんだよ!うんざりしてるんだよ!!」

「きょーくん!?」

 無理やり腕を解かれ、呆気に取られたあおい。

 京の険悪な態度に気圧され、クラスメートが先程と態度を一変させ「じゃ、じゃーな」と足早に立ち去っていく。

 そんな中、京は感情に任せて言葉を吐き捨てた。

「そんなに愛だのなんだのほざきたいなら、四つ葉のクローバーでも見つけてからにしろ!!」

 あおいは思わずたじろいだが、辛うじて踏みとどまった。

「――四つ葉のクローバーさえ見つければ良いんだね…?」

「あぁ。見つからなかった時は僕は知らない。金輪際口もききたくない。一人で勝手にしてくれ」

「……」

 立ち去る京を見つめ、あおいは彼の腕を無言で掴んだ。

「…じゃあ勝手にするよ」

「は?」

「一人なんてやだもん、そんなの絶対ムリ!!だからきょーくんも一緒についてきて!!」

「え!?」

 そのままあおいは京を連れ、ある場所へ向かって夢中で駆け出した。



 しばらくして、二人は川沿いにある公園へと辿り着いた。

「ここは三つ葉の群生地だから、きっと四つ葉も見つかるはずだよ…見つかったらすぐ渡すから、きょーくんはそこで待ってて!!良いね?」

「ちょっ…」

 困惑する京を尻目に四つ葉探しを始めたあおい。そんな風に懸命に探す彼女を見つめながら、京はばつの悪そうな顔をしていた。

 一言くらいは優しい言葉をかけてやろうかとも思ったが、意地を張ってなかなか素直になれない。

「そんな必死に探したって、どうせ見つかる訳…」

「諦めないもん!!」

「え?」

 あおいはありったけの想いを言葉に込めた。奇跡が起きますように、四つ葉が見つかりますように、と。

「もしかしていつも迷惑かけちゃってたかもしれないけどさ」

 その言葉を聞いて京は、あおいが自分に迷惑をかけている自覚があったことに驚いた。

「やっぱりきょーくんのことが死ぬほど気になっちゃうの!」

 時たま本気で死にかけてもおかしくないことをやらかすのであまり素直に喜べないのだが、

「あおい、きょーくんのことが世界でいっちばん大大大大大好きだから!!!!!」

 不覚にも、その言葉に京はドキリとした。

 普段の言動を冗談と受け取っていたので、まさかそこまで純粋に想われていたなんて思いもしなかったのだ。

 その言葉にいたたまれなくなり、京は遂に口を開いた。

「…あおい」

「あったぁ~~~~~~~~っ!!!!!」

「…え?!」

 見ると、あおいの手には小さな四つ葉のクローバーが握りしめられていた。

「やったよきょーくん!見てみてきょーくん!!さぁ、あおいと愛の誓いを…♡」

「…いや、それはあおいにやる」

「へ?」

 可愛らしく目を丸くするあおい。

「元々それはあおいに渡すつもりだったんだ」

「ん?どゆこと?」

 京はもじもじしながらボソボソ呟いた。

「その…僕一人じゃどうしても四つ葉を見つけられなかったんだけど…でも、どうしてもあおいには四つ葉を貰って欲しくて…」

 あおいはふと手元の四つ葉を見つめた。咄嗟に脳内花占いをしてみる。

(スキ…キライ…スキ…キライ(・・・)!?)

 そんなことも露知らず、京は言葉を続けた。

「あおいには幸せ(・・)になって欲しいから…その…四つ葉のクローバーの花言葉は……」

 その時、

「イヤ!聞きたくない!!」「な!?」

 京の言葉を遮ってあおいが激昂した。この時、あおいは盛大な勘違いをしていた。

「そうならそうと最初っからハッキリ言ってくれたら良かったのに…きょーくんは私のことキライだったんだね!?」

「え、や、ちょ!!」

 狼狽える京。

「もう知らないっ!!」

 感情に任せて公園を全速力で走り去るあおい。

 その頬に一筋流れる涙に京が気付くはずもなく、もう誰にも彼女を止めることは出来なかった。



「はぁ、はぁ……っ」

 息を切らしながら、あおいは行くあてもなく走り続けていた。

 髪は激しく乱れ、顔は汗と涙とでぐっしょりと濡れている。

(きょーくんは私のこと嫌いなんだ………)

 ふと幼き日の彼の姿が思い起こされ、それが先程の京と重なる。どちらの京も顔を赤らめ、うつむきがちに微笑んでいた。

 はっと気がついて、ずっと握りしめていたこぶしを開くと、そこには四つ葉のクローバーがあった。

 強く握りしめていたせいで葉はよれよれになっていたが、しっかりと原型は留めていた。

 何故か、京の言葉が脳裏をよぎる。

『どうしてもあおいには四つ葉をもらって欲しくて…』

『四つ葉のクローバーの花言葉は……』

 その言葉が引っかかり、次の瞬間、あおいは自宅に向かって走り出していた。


 公園に一人ぽつんと取り残された京は、クローバーの咲きほこる原っぱを見つめていた。

 去り際、あおいの髪で儚げに揺れていた三つ葉の髪飾り。

 三つ葉のクローバーの花言葉には二つの意味がある。一つは「約束」。もう一つは、「私を思って」。

 彼女はあの日からずっと、京にメッセージを送り続けていたのだ。

「なんだ――そういうこと、だったのか…」

 愕然としながらも、意を決して京は立ち上がった。

 誤解を解く為に。…そして、あの日の約束を果たす為に。


 自宅に戻るなり、あおいはパソコンを開いた。

 検索サイトで「四つ葉のクローバー 花言葉」と打ち込み、検索をかけてみる。すると、

「四つ葉のクローバーの花言葉は…『幸福』、『私の物になって(・・・・・・・)』…」

 その瞬間、あおいの瞳がハート型に変わった。

(やっぱりきょーくんは私の気持ち解ってくれてたんだ!!)


 ピンポーン


 丁度その時、玄関のチャイムが鳴った。

「はいはーい♪」

 京の真意が解ってご機嫌なあおいは階段を超特急で駆け下りた。

 ついでに彼女の「きょーくんセンサー」が働き、彼女の目は狩人のそれに変わっていた。

「きょ~~~く~~ん♥♥♥」

 ドアの向こう側に居たのは案の定京で、彼女はまっしぐらに彼にタックルをかけた。

 あおいのなすがままになりながら、京はおずおずと口を開いた。

「別にさっきのは…キライって言いたかった訳じゃ…」

「良いの!!きょーくんの言いたいことはバッチリ解ったから!!」

「え」

「四つ葉のクローバーの花言葉って『私の物になって』でしょ?きょーくんはあおいのことお嫁さんにするつもりだったんだね♪」

「いや、僕は『幸福』って意味でそれを……てか人の話…」

「二人で永遠に幸せになろうね☆浮気とかしたら即処刑だよ♥(b^ー゜)」

「だから人の話を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

「きょーくん、フォーリンラヴ♡♡♡」


 その日以来、あおいの持ち物に四つ葉のモチーフのグッズが増えたんだとか。


ご清聴ならぬご清読ありがとうございました。

元々部活のお題小説の企画で書き始めたもので(お題は「三」でした)、1週間という期限で(授業中内職しながら)無理矢理書きました。なので部活に投稿した原文より大幅に加筆修正をしています。

諸々の補足ですが、まずは題名がえらく昭和チックな件について。

当初は「happiness」という題で書き始めていたのですが、本文がカオスなのでどうせならタイトルにもインパクトを…ということで友人の意見を聞きながらこの形になりました。ダサいとか言わないでよねっ!ちなみに主人公の「三葉あおい」はまんま「三つ葉葵」から取りました。こらそこ、水○黄門とか言わない。


そもそもこういうラブコメを書くこと自体初挑戦でしたので見苦しい点も多々あったとは思いますが、笑い飛ばしてもらえたら幸いです。

感想、意見などあればどうか投稿して下さいっ(切実に

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― 新着の感想 ―
[一言] コミカルな展開で面白かったですw 顔文字が入った小説は読んだことがなくて、とても新鮮でした。顔文字に特に違和感はなく、勢いあふれるあおいちゃんの愛を表すのにぴったりな手法だと思います! そ…
2014/12/10 22:09 退会済み
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