序章 許されざる愛情
世界には、許されない恋というものがあります。法律からも、倫理からも見捨てられた、哀れな恋。禁じられているために、よけいに心は膨れ上がり、いつか弾け、世間一般で言う“間違い”へとつながります。不倫、同性、兄弟姉妹、親子、年齢、身分、敵同士……。その種類は、挙げたらキリがありません。
けれど、いったい何が“間違い”なのでしょうか。好きであること、愛することに、そんなものはありません。存在するのは、相手への愛情だけ。違うのは、周囲の物の見方。それによって、あたかも特殊なもののように映るのてす。
禁じられているがゆえに、普通ではない愛は、強烈なものになります。そうそう受け入れられないから。もしくは背徳感を抱くから。時には、罪を犯すことすらためらわせません。
理性などというものは、心の底からの感情に抗えません。世間が許さない関係であっても、得たい人があるなら、一番有効な手段を選べばいいだけのこと。自然に生きる獣のように、敵は排除してしまえばいいのです。
だから獣は牙を剥きました。自分の愛する人を手にするために。たとえ、許されないことであろうとも。