表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/19

届かなかった言葉、残された指輪

『RRRR……』


スマホの着信音で、孝明は目を覚ました。


「……寝てたのか。

懐かしい夢……見てたな……」


重い頭を押さえつつ身を起こす。


見渡した部屋は──

どこから見ても“いつもの部屋”だった。


「……あれ? 誰も……いない……?

今の……夢……?」


そう呟いた瞬間、再び着信音。


うんざりしたようにスマホを取ると──


「お兄ちゃん!! やっと出た!

何回かけたと思ってるの!?」


妹・菜穂子だった。

ただ、その声が普通じゃない。泣き叫ぶように震えていた。


「沙紀ちゃんが……沙紀ちゃんが……

飛行機事故に遭ったんだよ……!


さっきまで重体ってニュースで出てたのに……

今……“死亡”って……流れたの……


なんで……連絡取れないのよ……!!」


言葉が、全部、遠くへ消えていく。


「もしもし!? お兄ちゃん!! 聞いてるの!?」


菜穂子の叫びが、霧の中の声のように遠ざかる。


孝明の手からスマホが落ちた。

気づかないまま、通話は切れていた。


「……沙紀が……死んだ……?」


嘘だと思いたい。

だけど、身体の震えだけは止まらなかった。


外へ飛び出そうとした足が──

座卓の上の “それ” を見て止まる。


指輪。


震える手で掴んだ瞬間、胸が焼けるように痛んだ。


「これ……なんで……」


それは、孝明が最初のギャラで買い、

沙紀が“ずっと外さなかった指輪”。


別れた日でさえ、


『餞別として、もらっておくね』


と言い、決して外さなかった指輪。


……それが今、なぜ、この部屋に?


(どうして……ここに……?)


胸の奥で、何かが一気につながる。


ななこの姿。

声。

涙。

笑顔。


全部が一つの答えへ収束していく。


──ななこは、沙紀だった。


「……っ……ふ……」


視界が滲み、

堪えていたものが、どうしても抑えきれなかった。


拭おうとしても、手が震えて動かない。


そのまま床に崩れ落ちて、

孝明は初めて声を漏らした。


「バカヤロウ……!」


震える声で、ただそれだけを吐き出す。


後悔しても、

時間を巻き戻そうとしても、


もう……何ひとつ届かない。


孝明は、ただ打ちひしがれるしかなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ