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初めての指輪、最後の想い
それは──
二人で暮らし始めて迎えた、最初のクリスマスだった。
小さなケーキ、小さなチキン。
どこにでもある普通の食卓なのに、二人にはどんな高級料理よりもずっと美味しかった。
食事が終わると、いよいよプレゼント交換の時間。
孝明は、そっと後ろから彼女の目を塞ぐ。
「え? 何?」
驚く沙紀に、
「いいから。目、閉じてろって!」
ちょっと強引に言うと、
「ちょっと〜! 変なことしたら怒るからね!」
可笑しそうに笑いながら、彼女は両手で目を覆った。
「よし。カウントダウンいくぞ!」
「5、4、3、2、1──!」
ぱっと目を開けた瞬間。
沙紀の左手の薬指には、指輪が光っていた。
「え……指輪……?
私、てっきり指輪型の飴かと思った!」
笑いながら驚く彼女に、孝明は気恥ずかしそうに頭を掻く。
「安物で悪い……。
でも、初めてのギャラで買ったんだ」
その言葉を聞いた途端──
沙紀の頬を、ぽろぽろと涙が伝った。
「お、おい! なんで泣いてんだよ!」
「……だって。
嬉しくて……孝明、ありがとう……
すっごく大切にするね……」
指輪をはめた手を胸に当てて、
泣きながら笑っていた沙紀。
その姿は、
孝明にとって世界で一番美しくて、
そして──今も消えない記憶。
──沙紀。
泣かせてばかりで、ごめんな。
でも俺は、今でも……
お前を、愛している。




