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遅過ぎた真実

「それ、彼女に言ったの?」


ななこが、まるで包帯をそっと触るように優しく尋ねた。


孝明はわずかに笑った。

その笑みは、痛みをごまかすための“くせ”のようなものだった。


「言えるはずないだろう」


「なんで?」


ななこは答えを聞くのが怖いような、それでも知りたいような目で見つめた。


孝明は肩をすくめ、軽く息を吐いた。


「男は……軽々しく自分の弱さを口にするもんじゃないんだよ」


その言葉は冗談めいていたが、

視線を外す角度が “本当の理由” を丸ごと隠していた。


ななこは首を横に振った。


「でも……聞きたかったんじゃない? 彼女。

あなたの本当の気持ち」


その瞬間だった。


ななこの滲む瞳と、あの日の彼女の“泣き笑い”が、重なった。


「……沙紀?」


ぽつりと零れたその名前に、

ななこは息を呑み、

片桐は冷えた声で言った。


「まあ……どちらにしても、全て遅かったわけですがね」


「え……?」


孝明の身体がわずかに震える。


繭花が静かに立ち上がり、片桐が懐中時計を開いた。


「そろそろ時間です。……ゲームオーバーですね」


指が鳴らされた瞬間、

孝明の視界は音を吸い込むように暗く沈んだ。


「な……に……?」


意識が遠ざかる中、

かすかに──ななこの声が届いた。


「ごめんね……孝明。

それから……ありがとう」


その言葉は、あの日言えなかった“さよなら”と“ありがとう”に重なっていた。


「……お前……何者だ……?」


孝明の指先が、ななこへ届く寸前で落ちる。


全ての音が消えた。


倒れた孝明の髪に触れながら、

ななこは静かに微笑む。


片桐が問いかける。


「本当にこれで良かったのですか?」


「……えぇ」


ななこは優しく答え、

孝明の頬へ、ほんの一瞬だけ唇を寄せる。


片桐は大袈裟にため息をついた。


「私には理解出来ませんね。死の間際に叶う願いが、“最後に一目だけ愛した人に会いたい”とは……

しかも相手は酔い潰れていて、会話すら成り立たない時間が大半。理解に苦しみますね」


ななこはふっと目を細めた。


「いいの。

離れてからずっと……孝明が、どう生きていたのか知りたかっただけだから」


そう言って繭花へ微笑む。


「可愛い死神さん……ありがとう」


繭花はほんの一瞬だけ瞬きし、

その目は──かすかに揺れた

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