定番の流れ
よし。教室で調べられることはだいたい調べただろう。次はいよいよ監視カメラの動画を再生しよう。僕は置いてあるノートパソコンを手に取って先生の隣の席に座った。
「この動画って何回でも見ていいんですか?」
「ああ。構わないよ。でもそのまま2時間も見たら日が暮れてしまうからね。倍速で見たり、適宜スキップしてくれ。」
「了解です。」
僕はタッチパッドを操作して画面の真ん中にある再生ボタンをクリックした。この動画に多くの手がかりが残されているはずだ。
始めに映し出されたのは無人のこの教室だった。机も椅子も綺麗に並べられていて今の状態と変わりはない。動画の右下には16:06:56と当時の時刻が映し出されていた。
そして約5分後の16:17:16。無人だった教室に部長が入って来た。当然制服に血などついておらず、学校指定の紺色のカバンを肩にかけている。
そのまま自分の棚に向かうと何やら悩んでいるようでしゃがんだまま動かない。30秒ほど経過した後に棚から縄を取り出し、輪っかを作り始めた。何をしてるんだろうと疑問に思ったとき、あろうことかその輪っかを自分の首に巻き始めた。この人は一体何をしているんだ。僕はすぐに動画を停止して、部長に声をかけノートPCが捉えた奇行を見せた。
「・・・これは何してるんですか。」
「い、いやー。これは縄を使った首絞めのトリックを考えるためにつけただけで。首を絞められるのに興味があっとかそういうわけではないぞ。本当だぞ。」
部長はほんのり顔を赤らめながら聞いてもいない言い訳を始めた。なるほど。部長はドMと。プロフィールに追加しておこう。
「あ。もう大丈夫です。」
「さっきの事は忘れろよ。いいな。」
部長は僕に念を押すと自分の席に戻っていった。
しょうもないことに時間を使ってしまった。僕は気を取り直して再び動画を再生した。
首に縄を巻いた後の部長はというと、ミステリー小説を取り出し、自分の席で読み始めた。
次に教室に入って来たのは岸先生だった。そしてギャル。最後に森山先輩が教室に来た。
そして三人に不審な点などはなく、それぞれ本を読んだりスマホをいじったりして過ごしている。
そして約30分後の16:56:26。始めに教室を出たのはギャルだった。カバンを持ちそのまま教室を出る。その五分後に森山先輩が教室を出る。そしてそのすぐ後に岸先生が教室を出た。
一人取り残された部長は黙々とミステリー小説を読んでいる。時刻は17:05:42。画面が突然切り替わったと思ったら、画面に[A few moments later」と映し出されて陽気なBGMが流れた。そして10秒後。首を吊られて、制服を真っ赤に染めた部長の姿が映し出された。長い黒髪が真っすぐに垂れていて顔がまったく見えない。首を吊っている縄はシャンデリアの鎖に通されていた。右下を見ると時刻は17:13:43を示していた。
僕は動画を止めてじっくりと観察する。周りを観察すると、窓まで机が等間隔で並べられていた。あとなんだこの違和感は。部長が普段より小さいような。目の錯覚だろうか。
そして10秒後。教室のドアが開くと、森山先輩とギャルが同時に現れ、驚愕し、その惨状にギャルは大声を上げた。森山先輩はすぐにギャルに向かって指示を出す。
「千歳。すぐに岸先生を呼んできてくれ。早く!」
「・・う、うん。分かった!」
ギャルが走り出すと、そこでまた画面が切り替わった。また[A few moments later」だ。
時刻は17:22:11。森山先輩は横たわる部長を膝枕で支えていた。あの後吊られていた部長を降ろしたのだろう。森山先輩の制服にもべったりと血がついていた。
そのすぐ後、勢いよくドアが開くと同時に息を切らしたギャルと岸先生が現れた。
「はあはあ。部長は?!・・大丈夫なの?!」
「しーちゃん!!」
岸先生はすぐに部長のそばに駆け寄ると、膝枕をしていた森山先輩が右手を挙げて先生を静止した。
「先生。・・残念ですが。栞はもう・・・」
「そんな・・・」
森山先輩が首を横に振ると、岸先生はその場にへたりこんだ。その様子を見ていたギャルも信じられないと言った表情で壁に寄りかかっている。
静寂が教室を包んだ数秒後。死体は突然立ち上がり、自分の棚に向かうと立て看板を持って戻って来た。そしてお約束のあれだ。
「てってれー!どっきり大成功!」
部長は口から血を吐き出しながら看板を大きく掲げた。
再び静寂が教室を包み込む。ギャルと岸先生は魂が抜けたように動かない。
「あれ?聞こえてなかった?・・てってれー!どっきり大成功!」
やはり静寂が教室を包み込んだ。
「おーい。もしもーし。大丈夫?あれ?やりすぎちゃった?」
部長はおちょくるように二人の周りをぐるぐると回る。
その後は僕の時と同じだ。二人は看板を取り上げると、粉々になるまで踏みつぶした。




