死んだふりの真相
「ああー!せっかく気合いれて作ったのに!」
彼女は僕が真っ二つにした立て看板に駆け寄ると、上目遣いで僕を非難してきた。
何なのだこの人は。非難したいのはこちらである。彼女を見るとまだ制服から血が垂れ続けていた。
「それで、言いたいことは山ほどあるのですがとりあえずその傷は大丈夫なんですか」
少し不満そうに彼女を指さすと、彼女はクスっと笑って傷口がある背中を見せてきた。
「すまない。これは血のりと特殊なメイク技術によるもので私自身は何も問題はないよ」
そういうと彼女は床に置いてある段ボールの中から血のりの入った瓶を取り出し僕に手渡した。確かに血の色そっくりだ。
「それにほら。見てみてよこの傷。刺されたとしか思えないだろう。・・そうだ!」
彼女は僕に背中を見せつけてきた後、そのまま制服を脱ごうとする。
「ちょっと!何やってるんですか!」
僕は慌てて目を反らすが視界の端で彼女をちゃんと捉えていた。これは男子高校生なら仕方のないことだ。
しっかりと目に焼き付けていると彼女の動きが止まる。
「・・あれ?・・脱げない。いたたた!」
彼女は背中を半分見せたところで急に痛がり脱ぐのをやめてしまった。そのまま僕のほうを振り返ると少し恥ずかしそうにしている。
「どうやら血が固まって肌と服がくっついてしまったみたいだ。・・・まあ後で何とかしよう。」
「なんとかって。結構一大事なんじゃ・・」
僕の心配をよそに彼女は乱れた制服を直している。それにしても血のりってそんなに早く固まるんだな。
あれ?なんだこの違和感は。
考え込んでいると、「パン!」と手を叩く音がしたので僕は顔を上げて彼女を見た。
「よし。次は自己紹介をしようか。私は「神崎 栞」。この学校の生徒会長をやっている。そういう君は1年C組の「佐藤 奏」君だね。」
彼女は近くにあった机に腰かけると僕を指さして微笑んだ。
「どうして僕のことを。」
「他にもいろいろ知っているよ。血液型はB型。身長165cm。体重52kg。好きなことはミステリー小説を読むこと。好きな食べ物は母の手作りの親子丼。好きなタイプは・・」
「ちょっと!もういいですから!」
慌てて彼女の言葉を遮った。このままでは余計な事まで言いかねない。
何でか知らないが、僕の事はいろいろ調べているらしい。その理由も気になるが今の僕にはもっと聞きたいことがある。
「それで何で死んだふりをしていたんですか?」
僕はずっと疑問に思っていた最大の謎を口にした。僕は問い詰めるように彼女を見据える。すると、彼女は右手を上げると僕の右手を指さした。
「その紙に書いてある通りだよ。これは君の入部テストだ。」
そういえば、紙を持ったままだった。それにしても入部テスト?
「入部テストって。死んだふりと入部テストが紐づかないんですけど。」
「その紙に書いてあるだろう。君のような名探偵を待っていたって」
彼女は椅子を踏み台にして机の上に立った。そのまま腕を組み堂々と声を張り上げる。
「さあ!我が探偵部の入部テストを始めよう!」
その瞬間、さっきまで開かなかったはずのドアから二人の生徒と一人の教師が教室の中に入ってきた。
三人の内一人は知っている顔だった。
「・・・岸先生」
僕はすべてを悟った。この人にはめられたのだ。




