乙女の秘密
先生に話を聞いたところで時刻は18時30分を回っていた。とりあえず残りの二人からも話を聞こう。
「西宮さんは教室を出た後は何を?」
「図書室に本を返しに行った。その後は廊下からグラウンドを見ながらスマホを触ってたわ。その後に教室に戻ったんだけど、この教室の前で向こうから歩いてくる薫先輩と出くわして一緒に教室に戻ったら死体を見つけたってわけ。」
「廊下でスマホをいじっていたのはどのくらいの時間ですか?」
「たぶん10分くらい」
この教室から三階の図書室までは3分くらいなので辻褄は合っている。本の返却履歴を見れば嘘かどうかはすぐ分かるので本を返却したのは本当だろう。
「・・なるほど。森山先輩は何をしに教室を出たんですか?」
「私は教室に忘れ物を取りに戻ったんだ。その帰りにたまたま千歳と出くわしたんだ」
「それを証明できる人はいますか?」
「残念ながらいないね」
「そういえば、岸先生が職員室に戻ったときに他の先生はいましたか?」
「うん。いるにはいたけど私がいたがどうかなんて覚えてないと思う。私の机の両隣の先生はいなかったし、みんな自分の作業してたし」
三人ともアリバイの証明はできないみたいだ。スマホの履歴を見たり、先生や生徒に聞き込みをすればアリバイは証明できるかもしれないが、そこまでやらなくても犯人は見つけられるようになっているはずだ。
とにかく犯人を特定できる証拠を探さないと。
凶器とアリバイからは犯人が特定できないとすると、現状の情報から推理していくしかない。
よし、頑張るぞ。僕は目の前の紙に思考を書き写していく。
この事件の一番の謎はロープで首を吊られているにも関わらず背中に刺し傷がある点だ。
先にロープで首を絞めたのなら、刺し傷は必要ないし、先に包丁で刺したのならロープで首を吊らせる必要はない。
先にロープで首を絞めた場合を考えてみよう。なぜロープで首を絞めた後包丁で刺す必要があったのか。
一番最初に考えられるのは包丁を持っているギャルに罪を被せたかったということだ。そうなると犯人は森山先輩か岸先生になる。
これは十分考えられることだが、森山先輩か岸先生のどちらが犯人かは絞り込むことができない。
次に先に包丁で刺した場合を考えてみよう。なぜ包丁で刺した後ロープで首を吊らせる必要があったのか。
あまり思いつかない。そもそもどうやって部長をロープで吊るすことができたんだ?一人の女性を吊るすにはその女性の体重以上の物体が必要だ。
当然そのような重いものはこの教室にはない。とすると、自分の体重を使うしかない。
部長より体重が重いのはこの中では先生しかいない。こちらの方法だと岸先生に罪を擦り付けたかったことになる。
だが、室内にはダンベルがあった。あれを使えば体重の足りない森山先輩とギャルでも十分部長より重くなるだろう。
先に包丁で刺した場合だと三人が犯人の候補になってしまう。
そもそもあのシャンデリアで部長の体重を支えることは可能なのだろうか?そもそも部長の体重ってどのくらいだろう?
「すみません。部長の体重ってどのくらいですか?」
「そうだな。前測ったときは38kgだったかな」
「・・・前っていつの事ですか?」
「・・小学生くらいのとき・・」
「何で小学生のときの体重なんですか!今の体重が知りたいんですよ!」
「そもそも女子に体重を聞くのはどうかと思うな!そんなデリカシーのない人間はこの部には入れられないな」
「今この部に入るか入れないかの入部テスト中なんだが!」
部長はそっぽを向いて一向に体重を教えてくれない。こうなったらかまをかけてみるか。
「分かりました。僕の見たところだいたい55kgくらいですかね」
「そんなにいってない!根拠のないひどい推理だ!探偵失格だな君は」
「なるほど。55kgよりは下と」
「なっ!・・・君は!・・・覚えてろよ」
部長は頬を膨らませて僕を睨みつけた。なんだ部長にも可愛いところがあるじゃないか。
僕は今の顔を脳裏に刻みつけた。




