第96話
ドラーラがクーマに襲いかかる、
『速い! 』
クーマの周りを黒い影が飛び回る、
クーマの体から血飛沫が上がる、
ドラーラの動きが止まった、
クーマの肩口から血が吹き上がる、
高笑いするドラーラ、
シフォンとノランが、悲鳴を上げ、走り出そうとする、それをポニーが止める、
二人はポニーを見る、
「なぜ止めるの? 」
「開放」
地面に砂煙が舞う、圧が吹き抜ける・・・
『これはクーマ様の力』二人がクーマを見る、
クーマは動かない、飛び散った血飛沫も噴き上がった血も、まるで時間が止まったように動かない、
ドラーラの顔に驚きの表情が浮かぶ、
突然ドラーラの顔は歪み、体中から炎が上がる、
絶叫しながら転げ回る、しかし炎は消えない、絶叫が悲鳴に変わり消えていく、そして霧散する、駆け寄ろうとする二人を、ポニーはまだ止めている、
「どうして? 」
クーマの上に突然ドラーラが現れる、手には真っ赤な刀身の剣が見える、
『避けれない』
「クーマ様上! 」二人が叫ぶ、
振り下ろされた剣が、
クーマを切り裂・・・けない、
クーマの血がガッチリ剣を掴んでいる、ドラーラの動きが止まる、剣が砕ける、
クーマの飛び散った血液がクーマに吸い込まれていく、
クーマは振り向きざまに腕を振る、
ドラーラの脇腹に喰い込む、
ドラーラが霧散する・・・
洞窟にドラーラの高笑いが響く、
「たかが人族が、俺に勝てるわけがなかろう、俺は不死身だ、俺の実体は、お前には傷つけられん、嬲り殺してやる」
ドラーラがクーマの背後に現れる、振り向きざま高速の殴り合いが始まる、
どちらも引かない、ドラーラは確かに強い、クーマの攻撃も、体の一部を霧散させて効果をなくしている、
対してドラーラの攻撃はクーマに届いている、
クーマがふらつく、その隙に強い蹴りが炸裂する、壁まで吹き飛ばされめり込む、そこに瓦礫が落ちてくる、
「クーマ様! 」
二人が叫ぶ、だがポニーは動かない、
ドラーラがシフォン達を見る、
ギグム、ショーガ、二人の無残な姿を見る、
「まさか喰うとはな」
『カル・・・』
「そうか、お前が負けを認めたか」
「申し訳御座いません、完敗です」
「分かった、少し待っていろ、直ぐに片付ける」
「はい」
ドラーラのマントから触手が伸びる、
マルガが飛び出し剣を振り抜く、
切り裂いた触手が霧散する、
「無駄だ、お前達には何も出来ん」
暗がりから声が響く、
「フハハハ」下卑た笑いが響く、
「わかった・・・」クーマの声、
「解放」
小さく呟く、今までに無い圧が、洞窟内に広がる、天井から岩が崩れ落ちる、シフォンとノランが翼を広げポニーに覆いかぶさる、
マルガが剣を一閃する、岩が飛び散る、
「グギャー! 」
壁に叩きつけられた、ドラーラが悲鳴を上げる、
「不死身だと言ったな、試してやろう」
クーマがドラーラに近づく、
ドラーラは怯えている、
『何だこの力は、動けない』
いきなり腹を蹴り込まれる、背骨まで砕けるような激痛が脳天を突き抜ける、「ガァー! 」
『息ができない、霧散できない・・・なぜ? 』
目の前にクーマの拳が見える、
『霧散できない』
拳が顔面を潰す、激痛が襲う、声が出ない、クーマが少し下がる、
『今だ! 』
力を振り絞り、立ち上がる、
『霧散できない・・・』
クーマの回し蹴りが直撃する、蹴り飛ばされ岩肌にめり込む、
「グハァー、グェホー、ゲホ、ゲェ」
体中に激痛が纏わりつく、息ができない、思考が止まる、目の前に赤い剣が見える、
『俺の剣? 』
ドラーラの胸を、深く突き抜ける、
「オグァー! 」
クーマが下がる、
クーマが二人のもとに歩いていく、マルガが後を追う、
『俺の事など気にもしない、この俺を舐めやがって』
剣を握る、
『剣を・・・抜けない』
深く突き刺さる剣が抜けない、しかも激痛が走る、
「ゲホッ」
『回復ができない、この剣のせいか・・・早く抜かないと』
激痛に耐え剣を引き抜く、
「ガァッ! 」
傷口が回復する、
クーマはまだ背中を見せている、
「油断したなこの化け物め! 」
「シフォン、ノラン大丈夫か? 」
「はい! 」
「マルガ、よく思い出した」
「申し訳ありませんでした」
「いいさ」頭をぽんと撫でる、
「ポニーは? 」
グルァ、
「そうかよく頑張ってくれた」
「ポニー! 」
ノランが叫ぶ、ポニーが、俺を抱き寄せる、
剣を振り被ったドラーラが襲う、シフォンとノランが翼で受ける、マルガが迎撃する、弾き飛ばされ、地面に転げる、
「ゲホ、ゲホ」
「お前たちまで俺をバカにするのか」
「貴方はバカにするほども、ないですよ」
ノランが答える、
「言ったでしょ、貴方は終わりだと・・・」
ニヤッと笑みを浮かべる、
『今は不利だ・・・』
「お前たちこの俺に恥をかかせたこと後悔させてやる、覚えているがいい」
ドラーラの背中に怖気が走る・・・
背中に激痛が走る、
「ギギャァァァァ! 」
そのまま地面に押し付けられる、
『何が起きた? 』
「グハァー! 」
『肺が潰れる、背中がぁぁ! 』
クーマの指は背中を突き破り、背骨を掴んでいる、クーマは片足でドラーラを踏みつけ、背骨を掴んだまま腕を引く、
ブチブチと音を立て背骨を引き摺り出し、そのまま壁に叩きつける、ドラーラには悲鳴もない、
叩きつけられたドラーラは、気を失い瓦礫に埋もれている、
『本来であれば死んでいるはずだが・・・ドラーラは不死、それを後悔させてやる』
三人と一匹が走り寄る、
「ご主人様、有難うございます」
「ノラン、無事で良かった」
ノランが抱きつく、
しっかり抱いて頭を撫でる、
「遅くなった、すまない」
ノランはふるふると首を振る、
シフォンが横で指をくわえている、
ノランを離しシフォンを抱き寄せ頭をなでる、
「クーマ様・・・」
顔が赤い、シフォンはゆっくり目を閉じる、
「お嬢様、場所を考えて下さい」
はっとなり、ノランを見て笑っている、
マルガが指をくわえている、
二人の、笑顔が心地よい、マルガが笑う、
後ろからポニーが抱きついてくる、四人一緒に潰れてしまう、
ポニーが慌てて離れ、反省している、俺は頭を撫でてやる、
目を閉じてゴロゴロと喉を鳴らす、
声が聞こえる、声の方には立ち上がったドラーラの姿がある、
「お前たち、この俺に勝ったつもりか、俺は死なん、俺は不死身だ」
『そうだ俺は不死身だ、なぜか霧散は使えんが、俺は不死身、奴らが力尽きた時、とどめを刺してやる、しっかり嬲ってからな』
邪悪な笑いを浮かべ、地面を蹴る、一瞬で距離を詰める、
「速いな、でもそれほどじゃない」
「ポニー! 」
ポニーが、三人を守る、
ドラーラの爪が伸びクーマに突き刺さ・・・さらない、クーマがその腕を掴んでいる、
ドラーラの顔に後悔が浮かぶ、
『しまったやはり逃げるべきだったか』
「チィッ」
反対の腕を突き上げる、いきなり脇腹が抉れる、
『何が起きた? 』
ポニーの一撃が炸裂した、
その場に崩れ落ちるドラーラ、意識が飛びそうになる、既に脇腹は回復している、
『まだ行ける、俺は不死だ! 』
クーマが話しかける、
「お前は不死だから勝てると思ったろ・・・」
「俺たちの、体力が尽きたらトドメを刺せると思ったろ・・・」
「お前の相手をするのに、俺たちの力が尽きると思ったのか? 」
「お前はまだ、気づいていないようだな」
「何を言っている、人族は弱い、いつまでも戦えるものか! 」
「お前は何者だ? 」
「俺は吸生鬼の王だ! 」
「ふん、いいことを教えてやる、今のお前の能力は不死と回復のみだ」
「はぁ? 何を言っている」
「お前の特殊能力は、全て他者から奪ったもの、本来のお前の能力ではない、その力、全てを消した」
「消した? 何を言っている? 」
「よく考えてみろ、その痛みはなんだ? 今のお前は、人族の"A"ランク程度」
「それと、痛みについては、これまで忘れていた甘美な感覚だろ、そこだけ5割り増しにしておいた『嘘だけど』」
「何を言っている? 」
「まだわからんか、では、わかるまでやろうか」凶悪な笑みを浮かべる、
シフォンが二人と一匹に言う、
「クーマ様を怒らせてはダメ」
「そうですね、あんな凶悪な顔、滅多に見れません」
「素敵です」
マルガが何故かうっとりしている、
シフォン、ノラン、ポニーが頷く、
クーマの拳が突き刺さる、一撃一撃が激痛を伴う、反撃をする暇もなく、ただ殴られる、
ドラーラも少しづつ理解して行く、
同時にクーマの放つ圧が押し寄せる、
身体が震える、これは純粋な恐怖、魂の足元が崩れる、暗い穴へ魂が落ちていく、
何も無い真っ暗な穴の底・・・
ここは捺落・・・
剥き出しの心に恐怖の針が差し込まれる、
じんわりと少しづつ、1本また1本、
本能が叫ぶ、限界が近い、魂が狂う、
限界を超える、魂が叫ぶ、ここから逃げろ、
あいつのいる場所から逃げろ、
悲鳴を上げる、気が付けば絶叫しながら走り出していた、
それを見送りクーマはシフォン達のもとに戻る、




