第94話
シフォンの声が聞こえる、
二つの月を背にシフォンが飛んでくる、
「クーマ様! おまたせしました」
ポニーに飛び乗る、
「ノランが攫われた、犯人はドラーラ」
「ジェルダに聞きました、私もご一緒致します」
「ああ、ノランを迎えに行こう」
「はい! 」
「・・・でもクーマ様、落ちてますよね」
「心配いらない、ハクジャ! 付き合え! 」
森の中、ハクジャとマルガがポニーを追いかけてくる、
目の前には森の木々が近づく、ポニーが両腕を振るう、
衝撃が森の木々を粉砕する、
着地地点にはハクジャとマルガが居る、
ハクジャに向かって着地体勢、
ハクジャが風を巻き起こしポニーを受け止める、
ポニーは止まらない、そのまま走り続ける、その背中に、ハクジャとマルガが、飛び乗る、
「ご主人様、お待たせ致しました」
「ご苦労」
「お久し振りね、ハクジャ」
「お久し振りです、シフォン」
「マルガ敵は」
「ほぼ壊滅、残りの魔獣もレプタイル相手では敵にもなりません」
「そうか」
ハクジャがドヤ顔、
「コホン、御主人様どちらへ」
「俺を怒らせたバカがいる」
「なんと恐れ多い、万死に値します」
シフォンとマルガが頷いている、
ハクジャがシフォンを見る、
「その鎧は・・・御主人様」
「ええ」
少し赤い顔で笑みを浮かべる、
「御主人様、我は何を」
「どうやら敵はノランを攫って、穴に籠もっているらしい」
「なんと!? 」
「邪魔をさせるな」
「畏まりました」
「ポニー止まれ、木が邪魔だ、いいか」
グァ、
「ハクジャ合わせろ、道を開ける」
「はい」
ポニーが力を溜める、ハクジャが立ち上がり力を溜める、
「ポニーちょい右だ」
ポニーが向きを修正する、
「そこだ、やれ! 」
ポニーが咆哮を放つ、ハクジャが合わせて力を乗せる、
目の前の木々が一瞬で消し飛ぶ、地面が抉れむき出しになる、まるで一本の道のように、
シフォンとマルガはポカンと口を開けている、
「シフォン、マルガ、舌を噛むぞ」
慌てて口を閉じる、
「ポニー、行け! 」
ポニーは地面に爪を立て地面を蹴る、
『速い! 』
体を置いていかれる、ポニーの毛が伸びシフォンとマルガを掴む、
吸生鬼や魔獣が飛び出してくる、
「ポニー! 」
ポニーの毛がマルガを離す、
マルガが飛び出しポニーの前を走る、
前を塞ぐ敵を斬り捨てる、
ハクジャが、魔法で迎撃する、その姿は高速で移動する砲台、
洞窟の入り口が見えた、
吸生鬼達や魔獣達が入り口を塞ぐように集まって来る、その地面が爆発?
土煙が巻き上がり、敵が飛び散る、
マルガが突っ込み片端から斬り捨てる、
ハクジャが飛び降り踊る様に敵を倒していく、
土煙が晴れる、そこには先ほどの魔獣、マルケラがいる、
『立ち塞がるのか? 』
マルケラが身を伏せ、頭を下げる、
ハクジャが近づく、魔獣と見つめ合い嫌な顔をしている、
「ハクジャどうした? 」
「はい、この洞窟には多くの敵と罠があると」
「当然だな」
「この魔獣がトンネルを掘ったそうです」
「掘った? 」
「はい、敵、首魁の上に」
「ありがたい」
「それと・・・この魔獣は従魔希望です」
「魔獣を見る、頷いている? 」
「わかった、今は時間がない、ハクジャと共にここを守れ、誰もいれるな」
キィィー、
「返事をした? 」
「ご主人様・・・」ハクジャが珍しく困った顔をしている、
「ハクジャ、お前の後輩になるかもしれん、頼んだぞ、頼りにしている」
ハクジャの顔に喜びが浮かぶ、
「必ずや死守致します、名もなき後輩よ主人の命、聞いたな」
魔獣が頷く、吸生鬼達が距離を詰める、
「ご主人様、お早く」
「容赦するな」
「御心のままに」
ほぼ真っ直ぐ掘られたトンネルを、奥へ走る、暫く走るとトンネルが終わった、此処まで敵には合わなかった、しかし何もない?
「敵首魁の上と言ったな、・・・」
ポニーと目が合う、ポニーが立ち上がる、体に力がみなぎる、今まで以上の力がトンネルを揺るがす、
ポニーの身体が白金に光り、頭の角に集まる、
「ポニー・・・」
シフォンとマルガが驚愕の目で見つめる、
グルァァァァー!
両手と頭の角を地面に突き立てる、足元が崩れ浮遊感に包まれる、
攫われたノラン
『ここは何処? 痛い、意識が一気に覚醒する、手足が動かない、何が起きた? いきなり爆発? アルベルは皆は? 』
「目が覚めた様だな」
『嫌な声、何処かで聞いた事がある? 』
頭を上げ声の方を見る、数人の男たちに囲まれている、その後方に居る男、
忘れるはずが無い、王を殺し王妃を殺し我等の故郷を奪った者、
「ドラーラ! やはり貴様か! 」
「久し振りだな、最も、あの時お前は居なかったかな、確か娘の子守中だったか」
今すぐ殴ってやりたいが、動けない、悔しさに奥歯が軋む、
「いい顔だ、まぁいい、お前もかなり強くなったようだ、美味そうだよ、所で聞きたいんだが、王は何処へ言った? 俺は王を狙っていたんだが、屋敷に居なかった、あ〜、すまん、言い直そう・・・今は女王だったな」
下卑た笑いを浮かべる、
「さぞ美味そうになったろう」
「このクズが! 」
「で、女王は何処だ、まさかくたばった訳ではないだろう、何処だ? 」
「教える理由が無いでしょ」
「そう言うな、元同族だろ」
「黙れ、穢れる、たとえ教えた所で何も出来ないでしょうに」
「わからんぞ、俺にはお前がいる、それとも、お前達の女王は薄情なのか? 特にお前は別格だからな、女王が見捨てるとは思えん」
「ふん、何を勘違いしている、私は一兵にすぎない、女王が気にする存在では無い、代わりは幾らでもいる」
「そうか、では、散々嬲って狂ったお前を見せてやろう」
『このままでは私が足を引っ張る、何とか逃げ出さなくては・・・この数、それに今のダメージでは無理か・・・せめて手足が自由になれば・・・』
力を込める、ブツッ、
『えっ、切れた? 奴らは気づいて無い? 』
「お前達こいつを嬲れ! しっかり可愛がってやれ、狂った姿を奴らに見せつけてやる、奴らは無力だ俺に歯向かった事を後悔させてやる、その上で・・・」
『絶望の果てにその力、喰らい尽くしてやる』
吸生鬼達がノランに群がる、
襲いかかった、吸生鬼達が倒れる、
「何だ? 」
ノランが立ち上がる、
「縛っていたはず? どうやった? 」
薄ら笑いを浮かべたドラーラが聞く、
「こんな細い紐では私は縛れませんよ」
「ほー、そうか、まぁいい、少しは抵抗してくれたほうが楽しめるからな」
『私のダメージは大きい、これは結構つらいですね』
戦うノラン、しかし動く度に身体に激痛が走る、
どうした、動きが悪いな、
「黙りなさい! 貴方がた相手には丁度いいハンデですよ」
「なるほど、お前達! お前達だけでは不服だと仰せだ、もっと大勢でお相手しろ」
吸生鬼達が集まってくる、中には人族も居る、
「くっ、まだこんなに居たのか」
敵がいくら弱くても多勢に無勢、
どんどん追い詰められ、体力が削られる、
突然体当たりをくらい、壁に叩きつけられる、立ち上がれない、
吸生鬼達に押さえ込まれ、服を剥ぎ取られる、
『クーマ様・・・』悔しさが身を焦がす、
その時、胸飾りと指輪が浮かび上がる、光を放ち広がっていく、
吸生鬼達がたじろぐ、
急速に光が収束し、そこには鎧を身に纏うノランがいた、
ドラーラの目が見開かれる、
「何だそれは? 」
ノランの背中に翼が広がる、その姿は青いドラゴン、
周りの吸生鬼を薙ぎ払う、ドラーラが身構える、
ノランがニヤリと笑う、
「貴方はもう終わりです・・・」
そう言うと、翼がノランを包み込み、青い蛹のようになる、
吸生鬼達が蛹を破壊すべく、攻撃を仕掛けるがびくともしない、
その蛹からノランの笑い声が響く・・・
『何だ、何の冗談だ? 』
その時洞窟の天井が崩れ落ちる、土煙が辺りを包む、何も見えない、
ドカッ、ガズッ、グシャッ、
嫌な音が辺りから響く、暫くの後、辺りを静寂が包む、
ドラーラに怖気が走る、本能が魂の危険を警告する、
だが認めない、認めたくない、
『俺は強い! 奴らを喰らい尽くす、俺は王だ! 』
土煙が晴れる、目の前には巨大なホーンベア『・・・違う亜種』
こちらをちらりと見て、興味をなくしたように、ノランの蛹に近づく、鼻先でフンフンと蛹をつつく、
蛹が開きノランが抱きつく、
「ポニー来てくれたのね」
目には涙が浮かぶ、ポニーが振り向く、その先には同じ様な鎧を纏ったシフォンと白銀の騎士、その横には・・・「クーマ様」
『クーマ様が来てくれた』
シフォンが駆け寄る、ノランに抱きつき、
「良かった間にあった・・・」
シフォンが泣いている、
ノランも涙が止まらない、
「もう心配ないわ、ご主人様が来たのだから」
「はい」
『何だ? こいつは・・・魔力は感じない、人族?・・・白い奴とあの亜種は強い・・・』
『白い奴見覚えがある、あの時の騎士か、あの二人の装備は何だ? 魔力? 上がっている・・・? だが、こいつはしれている』
「お前は何だ」




