第93話
クーマはゆっくり魔獣に近づく、
もう既に動く力もないようだ、
ポニーが心配そうにクーマに寄り添う、
クーマが魔獣を調べる、昆虫型の魔獣、
首の辺になにかある、動こうとする魔獣をポニーが押さえつける、
「ポニー、優しくな」
グァ、ポニーが少し力を緩める、
首もとを調べると、そこに短剣が刺さっている、その短剣を調べる、
「呪いか・・・」
クーマが短剣を引き抜く、一瞬ビクッと動いた後、魔獣は動かなくなった、
『このままではいずれ死ぬだろう』
そこにジェルダが走ってくる、
「クーマ様、敵は殲滅致しました」
「ご苦労さま」
「有難うございます、それは? 」
「こいつの首に刺さっていた」
「宜しいでしょうか」
クーマが短剣をジェルダに渡す、
「気をつけろ」
「わかっております」
ジェルダは手に持たず、魔術で浮かせている、
「クーマ様、これには呪いがかかっております、内容は隷属と死の解放、効果は絶対なる忠誠の強制、それと取り除いた際に激痛をともなう、死、です」
「やはりな」
「この魔獣はまもなく激痛の果て・・・」
『苦しんでない? そこまで力を使い果たした? 』
「ポニーわかるか? 」
グルァ、
「なら、構わないか? 」
グァ、
「クーマ様、何を〜してます? 」
手をかざし魔獣を治療する、見る見る傷が塞がり、動き出しこちらを見る、
「お前は自由だ」
グルァ、ポニーも同意する
「ジェルダ、皆を頼む」
「はい、畏まりました」
「ポニー、ノランを助けに行くぞ、方角は・・・」北を指さす、
「この方角だ、行けるか? 」
グオォォォォー、
クーマがポニーに飛び乗る、
「行け! 」
ポニーが全力で走り出す、屋敷の裏から斜面を疾走する、
防壁が近づく、
ポニーが飛ぶ、
防壁の壁に爪を突き立て壁を一気に駆け上がる、速度を落とさず、そのまま一気に防壁から森へ飛ぶ、
防壁の詰所
マルガが叫ぶ、
「クーマ様! 屋敷へ! 」
「わかった! シフォン行くぞ! 」
二人を見送り、踵を返す、
マルガの服が鎧に変わる、
「ウォー! 」マルガが吠える、
一閃された剣で吸生鬼が数人動きを止める、
マルガはそのまま敵の間を走り抜ける、白い光が通り過ぎ、そこにアクセントのように赤い線が追従する、
吸生鬼と魔獣の動きが止まる、マルガが振り向き軽く一瞥して剣を構え直す、動きを止めていた敵の身体がズレて崩れ落ちていく、
そこに魔獣の集団が走って来る、
「暴走か! 」
「マルガ様ぁ! 」
防壁上から声がする、『アグネス! 』
アグネスが矢を放つ、
暴走する魔獣の直前に矢が突き刺さる、
ドガンッ!
土煙が上がり魔獣が弾け飛ぶ、
そこへ弓隊が一斉に矢を放つ、
崩れた暴走の中に白い光が踊る、赤いアクセントを引いて、
魔獣の屍の中、穴に向かってマルガが剣を構え直す、まだ気配は消えない、
穴から気配が迫る、吸生鬼達が飛び出して来る、が少し様子が変だ、
『慌てている? 逃げている? 』
穴の奥から強い魔獣の気配、
「新手か!? 」
穴から黒い魔獣が飛び出して来る、
「ポーキュパイン!? クソッ! 」
マルガが剣を構え走り出す、
「待ったぁ! 」
マルガが土煙を上げて止まる、
「アルマ! 何故ここに」
「ポーキュパインは味方です! 」
アルマが説明するまもなく、ポーキュパインの一団が敵を攻撃する、
「どう言う事だ? 」
兵たちが唖然と見ている目の前で、次々と敵が倒されていく、
「ポーキュパインはクーマ様の援軍です」
「クーマ様の・・・」
「はい、散歩の途中で色々ありまして、クーマ様が名を与えました」
「何のことだ? 」
「細かい説明は後で」
「分かった、ポーキュパインは味方なんだな」
「そうです」
「と言うか、もうやることが無いな・・・」
「そうですね・・・」
見れば敵はほぼ敗走している、
「ところで何故穴から? 」
「はい、街の穴と繋がっていました」
「では、街の応援を」
「いえ、あちらにはフェンリルが来ています」
「フェンリル? それもクーマ様だな・・・」
「そうです」
西門前
シフォンがクーマを追う、
『速い! 』
敵を蹴散らし街へ、
黒煙と土煙、
『ここもやられた』「皆は? 」
吸生鬼と傭兵、魔獣たちが溢れている、
『一体何処から』
街の東門前に大きな穴、そこから煙が立ち昇る、
「地下から来た? 」
『セルファ、コニーが戦っている、アルマは何処に? 』
クーマが少し速度を落とす、
屋敷に向かう道が見える、
敵がクーマ達を見つけ向かってくる、
一部が屋敷に向かうのが見える、ギルド前には防戦する人族とフェンリル、
シフォンがクーマを追い抜き叫ぶ、
「クーマ様! 屋敷へ! 」
クーマが加速して目の前の魔獣達を蹴散らして屋敷へ向かう、
『クーマ様、すぐに追いつきます』
シフォンはギルドに向かう、
両翼が前に回ってくる、そこにはグリップが見える、シフォンがグリップを握りしめ敵に振り抜く、敵が崩れ落ちる、
シフォンが剣を見る、少し湾曲した細身の剣が二振り、
「後! 」
突然の声に振り返る、目の前に白刃が迫る、
キンッ!
金属音と共に翼が剣を受け、シフォンが剣を振り抜いた、
敵が崩れ落ちる、
シフォンの顔付きが変わる、目を細め睨見つけるその顔に少女はいない、
赤いドラゴンが圧倒的な力でギルド前の敵を蹴散らす、
ケンが走り寄る、
「シフォンさんか? 」
「ケン、無事でしたか、良かった」
「ああ、俺は無事だ」
そう言うケンの腕には子供が抱かれている、
「怪我は? 」
「大丈夫、コニーさんが治癒してくれた」
アルマは何処に? 」
「穴に飛び込んだ、敵を追撃してる、クーマは? 」
「屋敷へ」
「そうか、行ってくれ、ここは俺達で護って見せる、助っ人もいるしな」
フェンリルを見る、
ウワンッ!
「ケン、任せます、フェンリル、お願いね」
ウワンッ!
シフォンがクーマを追う、
屋敷に向かう道、所々に敵と魔獣の死骸が転がる、
少し先に戦闘中の集団が見える、シフォンが斬り込む、戦っていたのはマーリー、アニー、
「女王! 」
「クーマ様は! 」
「屋敷へ、ここはお任せを! 」
「任せます! 」
シフォンが駆け出す
屋敷の門が見える、
シフォンが駆け込む、屋敷が無い、
門周辺には敵はいない、
少し離れた所で小競り合いが続いている、
駆け出そうとしたシフォンに、
ジェルダが駆け寄って来る
「女王! 」
「ジェルダ! クーマ様は! 」
「ノラン様が攫われました」
ジェルダが指を指す、
「行きます」
シフォンが翼を広げ空へ、
「いいな〜あれ」ジェルダが呟く、
いきなり誰かが頭を叩く、
「あいたぁ! 誰! 」
「誰、じゃありません! なんで助けに来ないの! 」
「師匠! 」
「師匠、じゃありません」
「すいません、色々ありまして」
「師匠が瓦礫の下敷きになっているのに助けに来ないって、本当にこの子は」
「ハハハ」
「笑い事ではありません」
「でも、無傷ですよね」
ジェルダがミーニャを見る、
「当たり前です結界を張りました、それに、お二人のご助力も受けましたから」
「皆は? 」
「はい、お二人のおかげで皆無事です」
「そうね、私も助かったわ」
「お二人は? 」
「ノラン様が攫われました、お二人とポニーが後を追っています」
「ノランが攫われた? 誰に? 」
「ドラーラ」
「あいつがいたの? 」
「はい」
ミーニャが穴に向かう、
「ミーニャ! 」
ミーニャが振り向く、そこにはジェルダに被るシャリーンがいる、
「シャリーン」
「ミーニャ、クーマ様を信じましょう」
「貴方にはやる事があるでしょ」
「そうね、私も護る者だから」
「ジェルダ、怪我人を探すわよ」
「もういないと思いますが」
「いいから探しなさい、それと後片付け」
「ええぇ〜」
「何、師匠に逆らうの、クーマ様に言うわよ」
「やります! やらせて頂きます! 」
「おーい」
声の方を見るとマーリー、アニー、アルマ、セルファ、コニーが門を入ってくる、
「みんな無事ね良かった」
「ジェルダ、せいちょうしてる」
子供モードのセルファが言う、
「私も成長するんです」
自慢気に胸を張る、
「そこは、せいちょうしてない」
「うるさいです」
「女王は? 先に来ているはずですが」
「ジェルダ皆に説明を」
「えぇ〜」
「クーマ様・・・」
「はい、します」




