第91話
地底宮
奥の玉座の間、いや、その昔玉座と言われた場所に、一人の男が座っている、
そこへ男が入ってくる、
「ドラーラ様」男が跪く、
「どうしたカル」
「はい、先ほどの火柱は術師の攻撃隊の場所でした」
「何だ、爆石でも爆発したか? 」
「いえ、攻撃隊と共に消滅していました」
「消滅? 」
「はい、後には巨大なクレーターが」
「クレーター? 意味がわからん! 」
「わかるように説明しろ! 」
「申し訳ありません、しかし、私にもよく分からないのですよ」
「わからない? 」
「はい、調べましたが、先ほどドラーラ様が言われましたように、特大の爆石、いえ最高位の爆裂魔法を使った攻撃、としかわかりません」
「攻撃? 何処から? 」
「分かりません」
「調べろ! 」
「はい」
「それと第二陣の魔獣暴走はどうだ? 」
「それが、思うほどの効果はありません、集められた魔獣が少なかったこともありますが」
「どうした? 」
「はい、この戦いに魔獣が参戦しています」
「魔獣使いがいるのか? 」
「いえ、それは分かりませんが、魔獣が独自に動いているようです」
「魔獣が独自にだと、そんな事があるのか? 」
「私の知る限りありません」
「そうだろう・・・なぜそう思う? 」
「はい、参戦している魔獣が多すぎます、しかもかなり高位の魔獣です」
「何がいる? 」
「はい、物見の話では、フェンリル、グリフォン、ポーキュパイン、レプタイル亜種、それと見たこともない衣装をまとった女、です」
「女? そいつが魔獣使いか? 」
「いえ、先陣を切っている、との事なので、魔獣使いではないと」
「どうなっている、今聞いたのはどれも伝説級だぞ」
「はい、ですので使役されているのではなく、独自に動いていると、仮に使役しているのであれば、とんでもない術者が敵に付いた事になります」
「・・・良いだろう、どの道、魔獣暴走は時間稼ぎだ、本命は違う」
「カル、魔獣暴走を出来るだけ持たせろ、奴等が安心した時が勝負だ」
「わかりました」
「俺はそろそろ出かけるとしよう、ここは任せる」
「はい」
『とんでもない助っ人がいたようだな、少し油断した、しかし、本命はわからんだろう、今日で終わりにしてやる、たっぷり嬲った後で喰ってやる』
ドラーラの下卑た笑い声が響く、
少し離れた場所には数百の兵と魔獣が見える、
奇襲部隊
暗闇の洞窟を走る一団、
先頭は北で最強といわれる魔獣マルケラがいる、その背にはドラーラ、その後ろを数十頭の魔獣が追走する、各背には数人の兵隊らしき者が乗って、暗闇とは思えない速度で移動している、
走る先に明かりが見える、
いきなり広い空間に出る、
一人の男が駆け寄ってくる、
「ドラーラ様、お待ちしておりました」
「ゲル、準備は」
「はい、いつでもいけます」
広い空間の中には、大型の爆石が積み上げてある、少し離れた場所には魔獣と傭兵の集団、
「良いだろう、今、カルが魔獣暴走を使って注意を引きつけている、物見の報告はどうなっている」
「女王の居場所は不明ですが、近衛長は屋敷の防衛戦で確認されています、それと、見慣れない者が」
「女か? 」
「いえ男ですが」
「男?・・・どんな奴だ? 」
「それが、よく分かりません」
「分からない? 」
「はい、気になる存在なのですが、追跡しきれません」
「一人か? 」
「はい、間違いありません」
「では、捨てておけ、一人二人が加勢したところで、この作戦は潰せまい」
「第一部隊、第二部隊に注意しておけ、タイミングを外すなと、いいな」
「はい」
「私は本体と共に出る」
「わかりました」
『もうすぐだ、もうすぐ終わる、終わりにしてやる』
「ドラーラ様、ワイバーン部隊全滅です」
「全滅? ドラゴンゾンビはどうした? 」
「はい、突然現れた魔法士が浄化しました」
「浄化だと? ドラゴンゾンビを浄化したのか? 」
「はい」
「魔獣達はどうなった、暴走は? 」
「はい、そちらも、白い服の女とレプタイル亜種、ホーンベアの一団に迎撃されほぼ全滅」
「何だと・・・ちょっと待て全滅では無いんだな」
「はい、全滅ではありませんが全滅に近いかと」
「構わん! 注意を引きつけろ! 」
「クソッ! 」
『何が起きている? 女? 男? 助っ人だと言うのか、たかだか二人増えたぐらいで何故こうなる』
「おい、ゲル、物見を呼べ」
「はい」
「ドラーラ様、何か」
「男は何処だ? 」
「はい、最後に確認したのは、西門周辺でした」
『男は西門、女は外か・・・』
「女王はいたか? 」
「確認できていません」
「やはり屋敷か・・・」
「ゲル! 現状を」
「はい、屋敷は現在後始末に追われているようです、東門、西門共に魔獣との小競り合いが続いています」
「よしやるぞ」
「第一部隊! やれ! 」
「はい! 」
魔法士たちが爆石の周りに結界を張る、
「爆破! 」
集められた爆石が一斉に爆発する、結果に囲われた爆発が地上を吹き飛ばす、
防壁都市の街の一角が吹き飛び、瓦礫が辺りを襲う、
「行け! 」
無数の魔獣が爆炎の収まりきらない穴から一斉に飛び出す、直ぐに魔獣の叫びが聞こえてくる、少し置いて、戦いが始まった、
「よし行くぞ! 」
それを確認して吸精鬼達と傭兵達が飛び出す、
『何だ? 辺りは確かに吹き飛んでいる、死体が無い? 人の姿が見えない? 兵が居ない?
魔獣が戦っている、フェンリル? 』
そこへ無数の黒い槍が降り注ぐ、
「待ち伏せ!? 」
傭兵達が次々とやられて行く、吸生鬼達が下がる、
「まずい、穴へ戻れ! 」
そこに無数の光弾が降り注ぐ、穴の中に土煙が舞う、
『何が起きた? 』
グギャ! グシャ!
土煙の中から悲鳴と何かを潰す嫌な音が響く、
「撤退だ! 」
そう言った吸精鬼の前に女が居る、
「お前で最後だ」
そう言った女が通り過ぎる、吸生鬼の首が落ちる、
「アルマ! 私は魔獣を追う! 」
セルファが走り出す、
「コニー! 後を任せる! 」
「了解! 」
アルマが穴へ飛び込む、
「第二部隊! 行くぞ! 」
魔法士たちが爆石の周りに結界を張る、
「爆破! 」
集められた爆石が一斉に爆発する、結界に囲われた爆発が地上を吹き飛ばす、
防壁の一部が吹き飛び崩れ瓦礫が降り注ぐ、開いた穴から、魔獣、吸生鬼、傭兵達が飛び出す、
崩れた防壁から魔獣がなだれ込む?
数匹の魔獣が飛び込んで来る、
『どうした? 何故こんなに少ない? 』
その後から、レプタイルがなだれ込む、前からは、防壁の兵が向かって来る、
行き場を失った吸生鬼達をレプタイルが襲う、
吸生鬼達が兵に向かう、白い風が通り抜ける、尾を引く様な血に引かれ、吸生鬼達が倒れていく、
穴の奥から悲鳴が聞こえる、新たな吸生鬼達が飛び出して来る、それを追うように黒い魔獣が飛び出す、穴を出た吸精鬼達が崩れた防壁に走る、崩れた防壁には白い服を着た女、
吸精鬼達が剣を振りかざし飛び掛かる、
女がニヤリと笑った、周りに動く者は居なくなった、
二回の爆発にドラーラ達のいる場所が揺れる、
「よし、やれ」
魔法士たちが爆石の周りに結界を張る、
「爆破! 」
集められた爆石が一斉に爆発する、結界に囲われた爆発が地上と屋敷を吹き飛ばす、
「行け」
ドラーラが魔獣マルケラに命令する、
マルケラが瓦礫を弾き飛ばし地上に出る、
土煙に紛れ吸生鬼達が一斉に飛び出し、
混乱する屋敷の兵に襲いかかる、
土煙の中ドラーラが上がって来て周りを見渡す、瓦礫となった屋敷、ニヤリと笑う、その顔が少し曇る、多くのメイドが倒れ瓦礫の下敷きになっている、
『思った程のダメージが無い? 』
近くに居た倒れているメイドに目が止まる、
『殆どダメージを受けていない? この女は? 近衛長ノラン! 女王は? 』
辺りを見渡す、見当たらない、
ドラーラの顔に嫌な笑みが浮かぶ、
『いいことを思いついた』
ドラーラがノランを小脇に抱える、その時土煙が晴れる、遠くに見える女が叫ぶ、
「ドラーラ! 」
いきなり無数の魔法攻撃がドラーラを襲う、魔法が霧散する、
ドラーラの前にはマルケラ、
間髪を入れず2度目が来る、より強力な魔法、しかしマルケラには効果がない、ドラーラが高笑いと共に穴の中に消える、
入れ替わるように吸精鬼達が飛び出して来る、
マルケラが穴を塞ぐように立ち塞がる、
剣戟の音が近づく、兵士が戦っている、
『強い』
しかしダメージが大きい、複数の吸精鬼達を相手に押されている、
そこに波動が届く、
『何だこれは? 』
吸精鬼達が苦しみ出す、兵士の身体に力が戻る、
目の前の吸生鬼達を斬り捨て、マルケラに剣を振る、ガンッ! カンッ!
マルケラの防御は抜けない、マルケラの一撃が兵士を襲う、咄嗟に剣で受けて飛び退る、
雄叫びが響く、
マルケラに向って土煙が迫る、
ホーンベアがマルケラに襲いかかる、




