第88話
「やったのか? 」
「やったー! 」
皆が喜びに歓声を上げる、
「皆、油断するな、残ったワイバーンの掃討急げ」
アルベルが指示を出す、
「はい! 」
「アルベル、みんな無事か? 」
「はい、ただ・・・ただ、ジェルダが・・・」
「ジェルダがどうした? 」
「目覚めません」
「目覚めない? 」
「はい、力を使い過ぎ、身体が限界を迎え眠っています」
「何処にいる? 」
「今は食堂で、ノランとミーニャがついています」
「分かった、行こう」
ノランがエントランスにいる、
『やったの? 』
ノランが周りを探る、怪我人は居るが死者は居ない、
「良かった」
『ポニーがいない何処に? 』
ノランがクーマを見つける、
「クーマ様ぁー! 」
飛びついてきたノランを抱きとめる、
「ジェルダが、ジェルダが! 」
「聞きました」
「目覚めません、あの子起きないんです! 」
「分かった行きましょう」
「はい」
「アルベル後を頼む、油断するな」
「それとマーリー、アニー、北の防壁に、ポニーがいる、問題ないと思うが念の為に、行ってくれ」
「わかりました」
マーリーとアニーが走り出す、
「クーマ様、北に何が? はっ! 魔獣暴走! 私も」
「待て、心配はいらない、ポニーがいる、ハクジャ達もな、マーリーとアニーは保険だ、ここを頼む」
「わかりました」
「ソル、助かった、感謝する」
「もったいなき御言葉」
食堂
「クーマ様! ジェルダが目覚めません、これは、どういう事でしょう」
「診ましょう」
「これは」『そうか新しい力に目覚めたのか、少し力が足らなかったか、ジェルダ、すごい子だ』
シャリーンの声がする、
『クーマ様、この子の力は? 』
『ああ、新しい力に目覚めた、もう少し護ってやってくれ、俺も少し力を貸す』
『はい』
『クーマ様』
『何ですか』
『私にもご褒美くださいね』
『程々に』
『はい、程々に、楽しみにしています』
「皆、ジェルダは大丈夫です、すぐに目覚めますよ、より強くなって」
クーマが蛹を優しくなでる、
蛹が答えるように震える、
『ジェルダ、もう少し眠れ』
また動かなくなる、
「ノラン、ミーニャ、後を頼みます」
「はい」
クーマが食堂から出て行く、
ノランとミーニャが蛹を見る、
『少し大きくなったような』
屋敷前
アルベルとソルが並んで立っている、
クーマに気づく、
「クーマ様、ミーニャは? 」
「心配はいりません」
「そうですか」ホッとする、
「何か動きは? 」
「今はありません、ですが北でポニー達がまだ戦っているようです、念の為何人か回しました」
「そうですか、警戒はしておいて下さい」
「はい」
「皆は? 」
「はい、死者はありません重症者も治療済みです、大きな戦闘には不安がありますが、問題はないでしょう」
「わかりました」
「有難うございます」
「何を」
「クーマ様がいなければどうなっていたか」
「かもしれません、でも私は今ここにいる、そして街と街の民を護ると決めた、それだけの事です」
「では、私はシフォンとマルガの所へ」
「はい」
「ソル頼めるか」
「はい」
クーマがソルに乗り走り出す、街へ向かう道、所々に戦闘の跡がある、畑も果樹園も踏み荒らされ無残な姿を晒している、
『ただで済むと思うなよ、この代償は高く付くぞ』
街が見える、所々に火の手が見える、人々の救助に魔獣も手を貸してくれている、街の入り口にアクスが見える、子供モードのセルファとコニーも一緒だ、
セルファが気づいた、軽く手を挙げて答える、走り寄る三人、
「クーマ様! 屋敷は? 」
「なんとか無事ですよ、皆も元気です」
「セルファ、アルベルも元気ですよ」
「あ、ありがと、よかった、まりょく、ほとんどない」
「セルファ、いいですか」
「う」
クーマが力をセルファに流す、セルファが光、大人モードに変わる、
「クーマ様、有難うございます」
「いいえ」
「アクスさん、街は? 」
「はい、かなりやられましたが、魔獣達のおかげで、死者を出さずに済みました、重傷者もコニーが治療済みです」
「アルマは? 」
「はい、救助に回っています」
アクスがチラチラとソルを見ている、
「アクスさん、彼は私の友人、ソルです」
ソルとアクスがびっくり顔で見ている、
アクスが我に返る、
「ご友人でしたか、私はアクス、防壁隊の副官です」
ソルが我に返る、
「ソルです、よろしく」
「クーマ様、今私を友と」
「すまんな従魔でなくて」
「いえ、宜しいのでしょうか」
「構わない」
「クーマ様ぁ〜! 」アルマが走り寄る、
「皆ずるい! 」
「すいません此処で会ってしまって」
「私も頑張りましたから」
「はい、アルベルさんから聞いていますよ」
「なら良いです」アルマがニッコリ笑う、
さて、シフォンとマルガは見ましたか、
「はい、女王はマルガ様と現在は詰所かと」
「わかりました行ってみます」
「はい、また後ほど」
「はい」
すれ違いざまアクスに耳打ちする、
「まだ油断するな」
「はっ、はい! 」
「では」
「アクス、クーマ様はなんと」
「まだ油断するなと」
「どういう事でしょう」
しばらく街を進むと、ケインが居た、
「ケイン」
「クーマ、そいつはソアー・フェンリルだな、こんな魔獣に乗っているとは、正直驚いた」
「申し訳無い、そいつではない、ソルと言う」
ソルが訂正する、
「えっ、ソアー・フェンリル! ソルって? 」
「はい、友と言ってくださいました」
「ソル? 友? 」
「ええ、友です、ソルの仲間が助けてくれました、それとポーキュパインの女王、リュンヌも友になりました、こちらには来ていませんが」
「ああ、知ってる、俺達も助けられた、そうか、ソルすまなかった、ありがとう、おかげで死者を出さずに済んだ」
「いえ、御役に立ててよかった」
「リュンヌも喜ぶでしょう」
「ああ、今度会えたら礼を言っておく」
「それと、コニーさんが怪我人を治療してくれたおかげで、今は怪我人もいない、
それともう一つ、クーマに貰ったあの素材、とんでもない能力だった、あれで何人助かったか」
「そうですか、それは良かった」
「ああ、感謝している」
「水臭いですよ」
「そうだったな、また今度、何か奢るよ」
「じゃぁ、今度コーヒーとケーキをお願いします」
「わかった、いくらでも食ってくれ」
「楽しみにしています」
「それと、ケイン、まだ油断しないように」
「えっ、それは・・・」
「何もなければいい、何もなければ、でも、何かあればギルドに集まって下さい、人の思いが多ければ多いほどいい」
「わかった、気をつける」
「それでは」
「ああ」
西門
レプタイルがクーマを見つけ伏せる、
「お前達ありがとう、よく来てくれた」
「ご主人様」
声の方を見ると壊れた門からハクジャが姿を見せる、
レプタイルが下がり道を開ける、
ハクジャがクーマの前で跪く、
「ハクジャ、よく来てくれた」
「はい、クーマ様の命は我の全て、お役に立て恐悦至極に御座います」
「その魔獣は? 」
「ソルだ友になった」
「ソルです、貴方がクーマ様の従者? 」
「確かに、我は御主人様の従者ハクジャだ」
「では、あの剣はハクジャ様が」
「あっ」
ハクジャが気まずそうに下を向く、
「ハクジャ、あの剣は素晴らしかった、非常に役に立ったよ」
ぱっと明るくなる、
「有難うございます」
「ソル、友と呼ばれるに足る働きを」
「はい、努力します」
「御主人様、我等は防壁周辺の掃除に戻ります、
まだ警戒は解けません」
「やはり気になるか」
「はい、まだ何かあると思われます」
「頼んだ」
「はい、では、失礼致します」
なぜか足取りが軽い?
「クーマ様! 」
アグネスが防壁から降り走ってくる、
手には弓を握っている、
「おつかれさまです、ご無事ですか」
「はい」
弓を前に、
「これのおかげでお役に立てました、皆も感謝しております」
「お役に立てたようですね」
「はい、とんでもなく」
「それにハクジャ殿が応援をよこしてくださいましたので、皆、迎撃に集中できました、はじめは驚きましたが」
「それは良かった、ハクジャも喜びます」
「あの、クーマ様そちらは〜」
「ソル、友です」
「ソルですよろしく」
「こちらこそアグネスです」
アグネスの目がキラキラしている、
「どうしました? 」
「あの、ソルさん・・・」
「はい、何でしょう」
アグネスがモジモジしながら、ソルに話しかける、
「触ってもいいですか? 」
「えっ」
ソルがこちらを見る、
「すまん、少しだけ触らせてやってくれないか」
「構いませんよ」
ソルが頭をアグネスの肩に乗せる、
アグネスが緊張しながらソルの首に手を回す、
幸せそうな顔で呟く、
「なんて柔らかい」
顔がとろけていく、
「ハハハ、アグネス、現状は」
「はっ、はい」
慌ててソルから離れ報告する、
「この周辺にはワイバーンはもういません、後は皆、暴走を警戒中ですが、殆どがハクジャ殿率いるレプタイルが撃退してくれています」
「わかりました、まだ警戒は解かないでください」
ハッとなり、
「わかりました注意させます」
「ソルさん、有難うございます」
「いいえ」
アグネスが一礼して防壁に駆け上がっていく、
「クーマ様、何故か心地よいですね」
「そうか、これが終わったらまた相手をしてやってくれ」
「喜んで」
その時詰所の方から声がする
「クーマ様ぁ〜」
シフォンとマルガが走って来て飛びつく、勢いでクーマが尻餅をつく、二人が抱き着いたまま離れない、
「クーマ様、帰ってきたぁ〜」
「当然です、ここ以外どこに帰るというのですか、夕食には間に合いませんでしたが」
「そうですね、またバツですね」
「えぇ〜」
「冗談です、フフフ」
ソルが一歩下がり頭を下げる、
「クーマ様こちらは? 」
「ソル、友です」
「そうですか、ソルさん、私はシフォン」
「私はマルガだ」
「始めまして、私はソル、クーマ様より名を頂き友と呼んで頂いております」
「なぜ頭を? 」
「はい、お二人はクーマ様の特別な方かと」
「「特別・・・」」二人が真っ赤になる、
「ああ、二人は俺の妻だ、もう一人妻がいる、今度、紹介しよう」
「奥方様でしたか、以後お見知りおきを」
「こちらこそ、此の度のご助力感謝致します」
「滅相もない、クーマ様の護る物であれば、我らにとっても同じことです」
「有難うございます」
「クーマ様、皆は? 」
「大丈夫です、アルベル、マーリー、アニーは屋敷にアルマ、セルファ、コニーは街に今は後始末を手伝っています」
「ノランはミーニャとジェルダを見ています」
「ジェルダに何か? 」
「はい、力を使いすぎたようですが、今は眠っています」
「眠っている? 」
「はい、寝てます」
「良かった」
「シフォン、マルガ」
クーマの真剣な顔、
「まさか? 」
「はい、油断はまだです」
「そんな」
「これで終わりではないと思います」
ギシャァァァーー、
雄叫びが聞こえる、
「しまった、やはり! 」




