第86話
「クーマ様! お待たせしました! 」
「ああ、準備はいいか? 」
「はい、いつでも行けます」
「俺は先に覗き魔を潰す、アルベル達は落とす事を優先しろ、落ちた奴は深追いするな」
「はい」
「皆、自分を信じろ、行くぞ! 」
「はい! 」
皆がワイバーンに向って一斉に飛び出す、その後をグリフォンの一団が追いかける、
「あれは? 」
「お気づきになりましたか」
「あれは、グリフォンか? 」
「少し違います、ホークロウです」
「ホークロウ、良いな、強そうだ」
「はい、暗闇ならグリフォンも敵いません」
「そうか」
「では、俺達は先に覗き魔を潰す」
「小物狩ですね」
「そうだな」
その時オレンジの光が見える、
「セルファ、流石、もう見つけたか」
「いかが致しますか? 」
「今はセルファに任せる」
「わかりました、では」
「ソル、殺るぞ」
「はい」
ソルが加速する、クーマが剣を抜く、
ワイバーンがすれ違い2つに割れて落ちていく、
「クーマ様やります」
「殺れ」
ソルが雷撃を放つ、雷鎚が走る、大型種の群れが落ちていく、
「行け! 」
「はっ! 」
アルベル達のおかげで集団が崩れていく、
ソルが崩れた集団を突っ切る、飛び交う火球を避け特大を狙う、
大型種が又前を塞ぐ、特大ワイバーンを守っている、また火球が壁を作る、
「クソッ! 」
視界の隅にまたオレンジの光が見える、
「防壁の外? 」
オレンジの光が四方に飛んでいる、
何かを追って外に出た、囲まれている、
周りを見るとアルベルたちが戦っている、しかし余裕は無い、
「ソル! 」
「はい」
ソルが吠える、
ウォォーンー、遠吠えが響く、一斉に遠吠えが帰ってくる、
セルファの向かった方向が一気に騒がしくなる、
「ソル、行け! 」
「はい」
ソルが防壁を越えセルファを追う、
地上ではフェンリル達が魔獣と戦っている、
「かなり集まっているな」
「はい、暴走? かも知れません」
ソルが地上に降り木々の間を走り抜ける、
襲い掛かる魔獣をクーマが切り裂く、
セルファが居た、周りをフェンリルが並走して戦っている、
『セルファの先には・・・コウモリ? 』
「でかいな」
「あれはバッド、かなり大きいですね」
「あいつが覗き魔か」
「ソル! 」
「はい! 」
セルファに追いつく、
「セルファ! 戻れ! 」
セルファが向きを変え防壁に向かって走り出す、
ウワァオン、
複数のフェンリルがセルファに並走する、
「すまんな」
「いいえ」
その瞬間クーマがコウモリを切り裂く、
落ちたバッドを見る、首筋に何かの魔道具がくい込んでいる、
「これは獣人が使う使役蟲です」
「虫なのか? 」
「はい」
「こいつの匂い、追えるか」
ソルが周囲を確かめる、
「蟲は数が多すぎます、ワイバーンからもします、ですが、バッドは追えます」
「分かったそれを追え! 」
「はい」
ソルが走る、
「左前方、少し上! 」
「いた! 」
バッドの首が落ちる、
「右前方、正面! 」
クーマが手を伸ばし何もない空間を握り潰す、正面のバッドの頭が潰れる、
木々の間を疾風のごとく走り抜けながら確実にバッドを排除していく、
「前方上空から左へ逃げます」
「いた! 」
クーマが剣を投げる、おかしな軌跡で剣が飛びバッドが木に串刺しになる、
フェンリルがそっと近づく、クーマがバッドの目を覗き剣を抜く、
「お見事です」
「ありがとう、残りは? 」
「この辺りにはいません」
「分かった」
周りを見渡すと近くにワイバーンの死体が落ちている、
「ソル、ワイバーンからも匂いがすると言ったな」
「はい」
落ちているワイバーンの首筋を見る、
そこにも使役蟲が居た、
「ソル、こいつの能力はわかるか」
「いえ、獣人はこれで魔獣を使役すると聞いたことはありますが、どの程度かは、わかりません」
「そうか・・・」
『もうすぐ夜が明ける』
ピキッ、ピキッ! 嫌な音がした、防壁を振り返る、結界が揺らぐ、
「しまった! 時間をかけ過ぎたか、戻れ! 」
「クーマ様、あれを」
「まだいるのか」
「その様です」
夜明けを背に空を黒く染める影、
防壁都市を振り返る、
『皆、今しばらく頼んだ』
「ソル、少し本気を出す」
「わかりました」
「開放! 」クーマの力が上がる、
合わせるようにソルの身体が光る、
鬣が伸び羽が光を纏う、
「行けそうか? 」
「はい、加減はできませんが」
「今は構わん」
「では問題ありません」
「行け! 」
「はっ! 」
一瞬で敵の中へ、ソルの雷鎚が走る、今までとは比べ物にならない威力がワイバーンの集団を襲う、
小型種は一瞬で消滅、大型種もソルに近いものはダメージを受け落ちていく、
生き残った集団の一部が都市へ向かう、残った大型種がクーマとソルを囲む、
「クーマ様、落ちたものが復活した様です」
地上から複数の大型種が上がってくる、
翼をなくしたものが、火球で攻撃をしてくる、
「行かせないつもりか? 」
「ソル! 行くぞ」
「はい! 」
ソルが雷鎚を纏い走り出す、
クーマが飛ぶ、
雷鎚を纏ったソルが走り抜けた後を、クーマが跳び移りながら追う、
雷鎚で一瞬怯んだワイバーンを切り裂きながら跳び移っていく、絶命するもの、翼を失い落ちるもの、
ワイバーンの反撃は火球、外れた火球が仲間に当たる、怯んだ隙をクーマとソルがまた狙う、
最後の一匹を斬り落としクーマが一緒に落ちていく、
「クーマ様! 」
ソルが追いつく、
「残りは」
「都市へ」
ピキピキピキッ!、ピッキーン!
結界が弾ける、
「時間がかかった、追え! 」
「はっ! 」
無数のワイバーンが、また行く手を塞ぐ、
あちらこちらに魔法の光が飛び交う、
街を中心にフェンリルとポーキュパインが迎撃戦に参加している、
西門はいつの間に来たのかレプタイル亜種が防衛戦に参加している、
『ハクジャが手配したか』
特に多くのワイバーンが集まる、屋敷前ではアルベルたちが戦っている、
ワイバーンの集団が結界の切れた防壁都市に向って降下していく、
その中心にいる特大ワイバーンが屋敷に向かっている、
「ソル屋敷へ! 」
ソルが加速する、
特大ワイバーンが首を引いた、
特大ワイバーンの前にはミー、スー、アンが結界を張っている、
特大ワイバーンが結界に牙を打ち込む、
一瞬で結界が弾ける、
「まずい! 」
その時アルベルの一撃がワイバーンの頭を弾き飛ばす、
『間にあった、でもまだ』
「アルベル! 伏せろぉー! 」
ソルが全力で急降下をかける、その背中からクーマが飛び出す、
「全員退避ぃー! 」
アルベルの叫びで皆が一斉にその場を離脱する、
クーマの蹴りが特大ワイバーンの頭を捉え地面にめり込む、
瞬間辺りを激震が襲い土煙が巻き上がる、
ドゴォン! ドゴォン!
ピシャァー! ヴァリヴァリィィー!
土煙の中から岩を砕くような音と落雷が響く、
絶え間なく続く音と地響き、
土煙が晴れた先には、特大ワイバーンを殴り倒した、クーマと雷鎚を放つソアー・フェンリルがいた、
辺りに動くワイバーンは一匹も居ない、
動かなくなった特大ワイバーンにクーマが手をかざす、いきなり炎に包まれ燃え上がる特大ワイバーン、全身が焼け焦げ断末魔の叫びをあげる、
キシャァァァ〜〜、
長く掠れ消えていく特大ワイバーンの断末魔の叫びが辺りに響く、
その姿をクーマが見つめる、
『何かがおかしい、何だ? 』
「いかがなされました? 」
「いや、何か、違和感がある、こいつは、生きていたのか? 」
キャー! 悲鳴が聞こえる、
クーマが振り向く、
アルベルが走り出す、
落としたワイバーン達が、ミー、スー、アンに襲いかかる、
「くっ! 」
アルベルが地面を蹴る、その前を2つの影が追い抜く、
「マーリー、アニー! 」
二人がミー、スー、アンの横を通り過ぎ、ワイバーンの横を通り過ぎる、ワイバーンの首が落ちその場に崩れる、
他のワイバーン達も動き出す、
アルベルがそのまま突っ込んでいく、後を追うマーリー、アニー、
三人の通り過ぎた後に血煙が舞う、
兵士と魔法士たちが他のワイバーンにとどめを刺していく、
クーマはそれを見て安心したように緊張を解く、




