第74話
シフォンとノランの励ましを受け、
クーマが槍を構え投げる、
マルガと同じ様に山なりに投げられた槍が・・・的に届かず地面に落ちる、
「へっ! 」
予想とは違う結果に、皆が唖然としている、
クーマを見ると俯きプルプルしている、雰囲気が変わる、
「クーマ様」シフォンが声を掛ける、
「マルガ、もう一本貸してください」
「はい! 」慌てて2本目を渡す、
「クーマ様・・・」
「行きます」
クーマが2投目を投げる、ドンッ、と大きな音と共に、皆を衝撃波が襲う、的が砕け散り土煙が巻き上がる、
一瞬クーマが小さくガッツポーズをとったのを、シフォンとノランは見逃さなかった、
ハクジャは一人頷いている、
巻き上がった土が皆に降り注ぎ、
周りは大騒ぎ、
シフォンとノランがクーマに駆け寄る、
「クーマ様、何をしてるんですか、大人気ない」
「へっ」
周りの騒ぎに気づいたクーマが慌てている、
「すいません! つい」
「皆、けが人はいませんか」
「大丈夫です、でも、地面に穴が空いてます」
「はぁ〜」
シフォンが大きなため息をつく、
「クーマ様、今後この類いの出店は禁止です、反省してください」
「はい、反省します」
マルガが店番に謝っているのが見える、
『やってしまったな』
「さぁ、クーマ様行きますよ」と言ってシフォンとノランに連行されていく、その後ろをマルガとハクジャが笑いながらついてくる、
みんなが笑っている声が聞こえる、
『いい余興? になったようだ』
シフォンとノラン、も笑っている、
ハクジャが試し斬りの前で足を止める、
「やってみますか? 」マルガが声を掛ける、
少し戸惑うハクジャ、
クーマが振り向き、一言、「やってみろ」
「はい」
店番から剣を受け取り剣を見る、
「ハクジャ、力を通してみろ」
「はい」
ハクジャから力が溢れる、
周りの衛兵に驚きが広がる、
ビキッ、音と共に剣が砕ける、
「すみません、力を通しすぎたようです」
「えぇ~、剣が砕けた? 」
驚く兵達を横に、
「ハクジャ殿、これをお使いください」
何処にいたのか、アクスが剣を差し出す、
「これは」
「クーマ様に整備して頂きました」
「成る程、御主人様の力を感じる・・・」
「お借りする」
「はい」
ハクジャが力を通す、先ほど以上の力が溢れる、周りの兵が固まる、
シュッ、風を切る音、溢れた力が一瞬で消える、
皆がざわつく、
「いい剣ですね」
「はい」
「大事にお使いください」
「はい、有難うございます」
「クーマ様お待たせしました」
「いや、あの剣はどうだった」
「素晴らしい剣です」
「ありがとう」
「いえ」
「では行こうか」
「はい」
立ち去る皆の後ろでざわめきが起こる、
大木は2つに割れていた、切り口は磨いたような美しさだった、
門の前のカフェテラス、
出されたコーヒーとケーキを五人で楽しむ、
「もう、クーマ様やりすぎです」
「すいません、女王、私が誘ってしまったから」
「いいえ、やったのはクーマ様です、ね! 」
「はい、ちょっと意地になりました、反省します」
「はい、反省してください」
「はい」
そこへアルベルとアクスがやってくる、
後ろには近衛の六人が集まっている、
「女王様、ご一緒しても宜しいですか」
「どうぞ」
「女王様、ハクジャ殿に近衛を紹介しておきたいのですが構いませんか」
「そうですね、クーマ様宜しいですか」
「はい」
「ハクジャ」
「はい、皆様お初にお目にかかります、私はクーマ様の従者ハクジャにございます、お見知り置きを」
「皆、ご挨拶を」
「はっ!お初にお目にかかります、近衛の剣士マーリーです」
「同じくアニーです」
「近衛の闘士アルマです」
「近衛の隠密、セルファ、です」
「近衛の魔法士コニー神力系です」
「先ほどお会いしましたが、近衛の魔法士ジェルダ神力、魔力系です」
「そして私の副官」
「アクスです、先程の一刀、驚愕の一言です」
「先程剣を貸してくださった方ですね」
「はい」
「あれは御主人様のお力です」
「ハクジャ、謙遜するな」
「はい、失礼しました」
ハクジャがシフォンに耳打ちをする、
「シフォン、皆さんからも御主人様の匂いがします」
「やっぱり」
シフォン、ノラン、マルガ、がジト目で見てくる、
皆が視線を逸らす、
「はぁ〜、皆座りなさい」
「はい」
セルファがアクスを押しのけアルベルの横に座る、
セルファがアルベルを見る、
「わたし、いってない」
「知ってるよ、一緒にいたんだから」
二人が赤くなっている、
マーリーがメイドに声を掛ける、
「私たちにも同じ物を」
「私たちにはコーヒーをもう一杯」
「ハクジャも良いですか」
「はい、あの、宜しければもう一つケーキを頂ければ」
そっとクーマを見る、
クーマは少し笑って、「太るなよ」
「はい」
「お願いね」メイドに声を掛ける、
「畏まりました」
メイドが離れていく、
「んっ、今の者からも御主人様の匂いが」
「えっ、『今のはリーアン』クーマ様ぁ〜」
シフォンがジト目で見る、
『何度目だろうか』
「所で、さっきの爆発は? 」
「すいません、つい、やってしまいました」
「やはりクーマ様でしたか、現場が盛り上がっていました」
「盛り上がっている? 」
「はい、みんな集まって何かを再現しようと頑張ってます」
「アハハッ、お恥ずかしい」
「何をしたんです、爆炎魔法でも使ったんですか」
「いえ、槍を投げました」
「へっ、槍、ですか? 」
「アルベル、クーマ様が大人気ないことをしたんです」
「そうです、ノランも言う」
「アハハ、すいません」
「マルガ様、何があったんです」
「アハハ、また今度話してやる」
「う〜ん、気になります」
アクスは見てなかったようだ、
アルベル達を加えて、運ばれたコーヒーを楽しむ、
シフォンとノランが事の顛末を皆に話した、皆が引いている、
「クーマ様、程々にお願いします」
笑いをこらえている、
アクスは既に腹を抱えて笑っている、
マルガがあたふたとクーマをフォローしている、
シフォンとノランは笑っている、
その後はハクジャの話で盛り上がる、
「兵達は特訓だな」
「そうですね」
「申し訳ない、もう少し加減をするべきでした」
「とんでもない、護る者である以上、これでいい、はありません」
「そうですね、私も従者である以上、御主人様の期待には応え続けないと」
「ハクジャ、お前は良くやっている、これからも宜しくな」
「はい、ありがたき御言葉、力を尽くします」
「ああ期待している」
「はい」
その後、雑談は続き、ハクジャも少しずつ馴染んでいく、
『楽しいな、この平和、護らなければな、俺の旅先はきっとその先にあるのだろう』
一行はもう一度人族の屋台を回る、
特にハクジャが気に入った、丸玉焼きと薄皮焼きを大量に抱えて休憩所のテーブルに並べて皆で食べる、
まったりと笑いの絶えない時間が過ぎる、
祭りの明かりはまだ消えない、夜の街を照らし続ける、
人族のケン
ハクジャ、あれは人じゃない、間違いなく、魔獣、
しかも高位なんて物じゃない、化け物級だ、
力を抑えているようだが、漏れる力が普通じゃない、
あれがクーマの従者、
あれっ、従魔でなく従者、クーマに従う者、
そうか、以前話していた、シロヘビ、クインか! あんな化け物を従者にした、
敵にせずによかった、女王達には感謝だな、改めて皆に言っておかないとな、
夜も更け、子供達は親と家に帰った、
屋台も一部片付けを始める頃、
「御主人様」
ハクジャがクーマを見る、
「どうした」
「はい、本日は大変楽しいひと時を有難うございます、シフォン、ノラン、マルガ、ありがとう、
御主人様の従者になれました事、感謝しております」
「固いぞ」
「フフフ、そうでした、しかし、我のようなものに、この様なひと時、与えて下さったことに感謝しております、我の忠誠はこの魂尽きるまでご主人様のものです」
「ああ、わかっている」
「そして、シフォン、ノラン、マルガ、御主人様が護るものは、全て我が護るものです、共に護らせていただきます」
「ハクジャ・・・ありがとう」
「私達は共にクーマ様の為に尽くしましょう」
「はい」
「シフォン、また来ても構いませんか」
ハクジャが少し照れている、
「ええ、いつでも歓迎しますよ」
「ハクジャ、待ってますよ」
「ハクジャ殿、また手合わせをお願いします」
「御主人様の許しがあれば」
「ハクジャ、友と遊ぶのに俺の許可はいらんよ」
「友・・・友ですか・・・我を友と」
「当たり前でしょ、貴方と私達は共に仕えるものでしょ、じゃぁ、友達です」
「そうです」
「友・・・ありがとう」




