第70話
まだ薄暗い夜明け前の屋敷へ続く道、
3頭の馬が全力で走る、屋敷の門をとおりエントランスへ、三人の人影が馬を降り、あたりの気配を探る、
「2階に集まっています」
「ええ、行きますよ」
「はい」
扉を開け一目散に2階へ、廊下に人影、メイドたちが集まっている、一人が気づいた、
「えっ、もう来た! 全員解散! 」
蜘蛛の子を散らすように皆が走り去る、
三人は扉の前へ、中の気配を探る、
『気配はある、でも、静か過ぎる? 』
三人は顔を見合わす、
「どうされますか? 」少し考え、
「行きます」
ノックの音がする、
「クーマ様入ります! 」
有無を言わさず、シフォンたちが入って来る、
「うっ、これは」
「思ってた以上ですね」
部屋に充満する、甘い香り、
マルガが反応している、息が荒い、
「マルガ、しっかりなさい」
ハッとなり我に返る、
「すいません、この香りは」
「まさかここまでとは思いませんでした」
「クーマ様! 」
「シフォン、ノラン、マルガ、おはよう」
声の方を見ると、クーマが窓際のテーブルでコーヒーを飲んでいる、
駆け寄ろうとした足が止まる、
クーマの前に全裸の女性、
『誰? 』
見たことがある、
「お嬢様、お早うございます、ノラン、マルガ、おはよう」
「お、お早うございます」
思わず挨拶を返す、
「あなたは・・・ミーニャ!? 」
ノランとマルガも気づいた、
三人が駆け寄る、
「ミーニャ! 」
シフォンが抱き着く、
「その姿は」
「はい、たっぷり可愛がっていただけました」
「うっ、複雑だわ」
「でも、どうして裸・・・」
「ああ、特に意味はありません、合う服がなくなってしまって」
「あっ、ノランあなたの服を」
「わかりましたすぐに用意します」
「お嬢様も飲まれますか? 」
「ええ、と言いたいところだけど、このままだと、抑えが利かなくなりそう」
「そうですね、場所を移しましょう」
「クーマ様、宜しいですか? 」
「どちらへ」
「そうですね、お嬢様、取り敢えずクーマ様をお風呂へ、なにぶんこの有様ですから」
「そうね、そうしましょう、クーマ様お風呂に行きます」
「わ、わかりました」
ノランが部屋に駆け込んでくる、
「ミーニャ、これを」
「ノランありがとう、借りておくわね」
「では、私は朝食のご用意をしておきます、
クーマ様、ゆっくり洗ってもらってください、隅々まで、では、後ほど」
笑みを残し部屋を出ていく、
「クーマ様行きますよ、ノラン、マルガ、クーマ様を洗います」
「はい」
三人に連れられクーマは朝風呂に、
脱衣所に入ると二人はさっさと服を脱ぐ、マルガが少し戸惑っている、
「クーマ様さっさと脱いでください」
「は、はい」
「マルガ放っていきますよ」
「あっ、待って」慌てて服を脱ぐ、
「さぁ、クーマ様洗います」
いきなり湯をかけられる、
「ぷは〜、シフォン〜」
「黙ってて下さい、我慢しているんですから」
「えっ」
顔が赤い? 息も少し荒い、
三人がかりで洗われる、
「さぁ、終わりました」
「ふぅ~」
「もう我慢できません! 」
三人がクーマに飛びつく、
しばらく後、
湯船でくつろぐクーマと三人、
「はぁ〜、いいお湯ですね」
「本当ですね〜」
「所でクーマ様、あれは、ミーニャですよね、何があったんです」
「いや、私にもよくわかりません、気がついたら大きくなっていました」
「そんな事って? 」
三人が声をひそめる、
「やっぱり、クーマ様かしら? 」
「そうですね、それしかないかと」
「今更ですね」
「・・・そうね、今更ね」
『聞こえてますよ』
「お腹が空きましたね」
「そうですね」
「そうですか? 」
「シフォンはたっぷり頂いてましたからね」
「ちょっと、ノラン、あなただって一杯飲んでたじゃない、後ろで」
「なっ! 」
「二人共やめましょう、また変な気になります」
「確かに、やめましょう」
『なんの話をしている』
「では、食事に行きましょうか」
「はい、クーマ様」
皆で風呂を上がり、食堂へ向かう、
途中でアルベルと大人モードのセルファに出会う、
「二人共おはよう」
シフォンが声を掛ける、
「お早うございます! 」
セルファが元気に返してくる、肌もツヤツヤしている、
「お早うございます」
アルベルは少しげっそりしている、
「どうしたのアルベル」
アハハハ、乾いた笑いで返してくる、
「飲みすぎたの? 」
「いいえ、違います」
チラッとセルファを見る、
「何よ、数十年ぶりだったのよ」
「あら、そう、セルファ良かったわね」
「はい! 」
「あのな、加減というものが」
「寝かさないって言ったじゃない」
「アルベル」
「はい」
「クーマ様を見習いなさい」
「えっ」
「二桁よ」
「え〜、二桁・・・」
「しかもみんなまだ寝てるわ」
「そう言えば、三人共、妙に機嫌が・・・」
三人が一斉に赤くなる、
アルベルがクーマに近づく、
「クーマ様、すごいですね」
アハハハ、笑って誤魔化す、
すると突然セルファが小さくなる、
「あ、もどった、アルベル、おなかへった」
「セルファ、みんなで朝食に行きましょ」
「う、いっしょにいく」
「クーマ様早く行きましょう」
「根性無し」ノランがアルベルに一言、
「うぐっ」
マルガが赤い顔で一言、「頑張れ」
アハハハ、
「アルベル、いく」
「わかったよ」
朝食、
「皆さん来られましたね、準備はできています、席にどうぞ」
「誰だ? 」アルベルが聞く、
「アルベル寝ぼけてるのかい、私を忘れるなんて」
「えっ、ミーニャ、か」
「そうだよ、忘れたかい」
「いや、だって昨日は・・・」
「あっ、クーマ様、か、行ったのか? 」
アルベルの耳元に囁く、
「ああ、たっぷり逝ったよ」
「なっ」
「フフフ、久し振りに満足したよ、癖になりそうだ」
「おい〜」
「冗談だよ、冗談だ・・・」
少し寂しそうな顔、
「ミーニャ・・・」
「アルベル、しっ」唇に指を当てる、
「ああ、そうだな」
「さぁ、あんたも座りな」
「ああ、そうする、腹ペコだ」
数名のメイドたちが、料理を運んでくる、テーブルに並べられる料理はとても朝食とは思えない量と種類だ、
分厚いステーキを始め豪華な料理が並ぶ、
「さぁ、皆食べましょう」
「いっただきま〜す! 」
皆が食事に手を伸ばす、いつものようにシフォンとノランが食事を取り分けてくれる、マルガが横でじっと見ている、
「マルガ、今日は譲りません」
「え〜、ノランの意地悪〜」
みんなが笑う、
アルベルが笑顔で見ている、
その横で、セルファが料理を皿に盛り、アルベルの前へ、
「えっ」
「なに」
「いや、その、これは」
「いや? 」少し顔が赤い、
「セルファ、嬉しいよ」満面の笑みで返す、
「はやくたべる」セルファが照れている、
それを見て皆も笑う、
「今日も賑やかですね」
「ミーニャ、あなたも一緒に」
「いいのですか」
「勿論」
「ありがとうございます」
奥のメイドに声をかけ、席に着く、
シフォンとノランが料理を取り分け、ミーニャに渡す、
「お嬢様、ノラン・・・」
「たまには良いでしょ」
「はい、頂きます」
食後のコーヒーを飲みながら、
「ミーニャ、どうしてそうなったか分かる? 」
「お嬢様・・・それは」
皆が注目する、
「分かるはずがありません」
「はぁ~、そうよね」
「アルベル、セルファはどうなの」
「わからない、でも、けっこうたのしい」
「大変でした・・・」
「なに? 」
「いや、なんでもない」
「ミーニャ、クーマ様に聞いてわかると思う? 」
「多分無理じゃないかと、それに説明されてもきっと理解は出来ません」
「やっぱり・・・」
「でも、とても優しい方です」
少し顔が赤い、
『ミーニャもはまった』
三人がミーニャを見る、
「何ですか? 』
「いえ、特には」




