第65話
ノックの音がする、
「クーマ様、お早うございます」
「お早うございます」
部屋の中はまだ少し暗い、
今は日の出少し前、
「クーマ様、すみません、少し早いのですが、よろしいですか」
「構いません」
ノランが部屋の明かりをつける、
起き上がろうとすると、誰かが腕を引っ張る、
見ると、マルガがしがみついている、
シフォンとノランが優しい顔で見ている、
「幸せそうですね」
「本当に」
「ねぇ〜、クーマ様」
少し気まずい、取り敢えず笑って誤魔化す、
「クーマ様、起こしてあげてください」
「優しく、ね」
シフォンとノランがニッコリ笑っている、
「マルガ、朝ですよ」
俺は優しくマルガに声を掛ける、
「あっ、クーマ様ぁ~、お早うございます」
そう言って俺の手に頰を擦り付ける、
「朝です、起きましょうか」
はっ、となって顔が赤くなる、
「お、起こしてください」
小さな声で甘えてくる、
そっと抱き寄せ軽く口づけを交わす、幸せそうな、笑顔、
「クーマ様コーヒーの香りが? 」
目線の隅にシフォンとノランが見えた、
慌てて振り向く、
シフォンとノランがソファに座ってコーヒーを飲んでいる、
マルガが悲鳴をあげてシーツに包まる、そのままベッドから落ちた、
二人が駆け寄る、
「マルガ大丈夫」
「あわわわ、何でお二人が? 」
呂律が回っていない、
「なんでも何もモーニングコールです」
「早く起きて」
「はい! 」
「クーマ様、早く服を着てください、夜まで我慢出来なくなります」
「アハハ、すぐにきます」
「マルガも服を着て」
「はい! 」
慌ててシーツの裾を踏んでひっくり返る、
「フギャ」
「マルガ、落ち着きなさい」
「はい! 」
慌てて衝立の影に飛び込んで来る、
先にいたクーマが抱き留める、
「あっ、クーマ様」
目を閉じて口づけを交わす、
「続きは今度ですよ」
シフォンとノランが覗いている、
「ひっ! 」
「お二人共、マルガをいじめちゃだめですよ」
「いじめてません、羨ましいだけです」
「すみません」
マルガが謝る、
「あっ、ごめんなさい、マルガ気にしなくていいのよ」
「早く、来て」
「はい」
四人でソファに座りノランの淹れたコーヒーを飲む、
「シフォン、起こしに来ただけではありませんよね」
「はい」
「何があったんです」
「昨晩、東の森に怪しい者達が現れました」
「怪しい者達? ハクジャの言っていた? 」
「多分」
「で、何を? 」
「はい、レ・グリフォンを狙ったようです」
「レ・グリフォン? 」
「はい、東の魔獣の中でも上位種です」
「どうなりましたか? 」
「レ・フェンリルが撃退したようです」
「レ・フェンリルも、東の魔獣の上位種です、レ・グリフォンもレ・フェンリルもより上位の魔獣が統率しています」
「目撃例はありませんが、異なる魔獣がお互いを助け連携するなど普通では考えれませんので、多分存在するだろう、という仮定の話ですが」
「襲った者の正体は? 」
「正確には分かりませんが、多分獣人であったと」
「獣人? 」
「はい、セルファが確認しましたので、間違いはないかと」
「獣人にはほとんど会ったことがない、コボルの街には数人いたようですが」
「そうですね、北の森の向こう壁の手前の山岳地帯の麓に暮らしているはずですが、交流はありません」
「それが何故」
「分かりません、ですが、月の重なる日に関係がないとは思えません」
「そうですね」
「アクスはなんと? 」
「同じ意見です」
「昨日の予測通り魔獣暴走の範囲は北の森、これは間違いないかと、ただそれだけではないと考えます」
「シフォン、祭りはどうされます? 」
「やります! 」
「これからどうなるのかわかりませんが、せめて、子供たちには楽しい思い出を持ってもらいたい」
「ですね、では全力で楽しみましょうか」
「はい! 」
「お腹が空きましたね」
「そうですね、朝食にしましょう」
「はい」
朝の食堂、
「あら皆さんお早いですね」
「ミーニャ、いいですか」
「はい、準備はできていますよ」
「早いわね」
「ええ、早朝から会議をされていたようなので」
「えっ、知ってたの」
「お嬢様、私を誰だと」
「そうだったわね」
「皆さん、お席にどうぞ」
「ミーニャ手伝うわ」
「ありがとうノラン、じゃ、料理を並べてくれる、私は仕上げるから」
「わかったわ」
「じゃぁ、みんなで準備しましょう」
「クーマ様、邪魔です、お嬢様とマルガを連れて座っていて下さい」
「うっ、わかりました」
ノランがテキパキと食事の準備をする、
『確かに、俺達がいても邪魔だな』
「さぁ、食べましょうか」
「ミーニャも一緒に食べましょう」
「わかりました、では、ご一緒させて頂きます」
俺の向かいにはノランとミーニャ、左右にはシフォンとマルガ、
シフォンが料理を俺に差し出す、
「えっ」
「クーマ様、あ〜ん」
「えっ、朝からですか」
「関係ありません、早く、皆が食事できません」
『うっ、皆が見ている、これは恥ずかしい』
「あ〜ん」
「パクッ」
咥えたベーコンがすごく美味い、
皆が一斉に、「いただきま〜す」
食事が始まった、
「次はマルガの番ですよ」
「えっ、私は」
「横に座った者の栄誉です、謹んで受けなさい」
「そうですよマルガ、これからは譲りませんから」
「ノラン・・・ク、クーマ様・・・あ、あーん」顔が真っ赤になっている、
「あ〜ん、パクッ」
「美味しいです」
マルガの顔が笑顔になる、皆がそれを優しく見守っている、
「まさかマルガまでとは驚きました」
「ミーニャ」
マルガが思いっきり照れている、
「良かったわねマルガ」
「ええ」
「クーマ様、大変ですね」
「へっ、ハハハ」
「ミーニャ、どういう意味ですか」
「いえ、お転婆ばかりだなと」
「ちょっと、ミーニャ」
「私は皆の小さい時から知っていますから」
「そうなんですか? 」
「はい、皆手のかかる子達でした」
「へ〜、わかる気がします」
「クーマ様! 」
「クーマ様、今度ゆっくりお話しますね」
「ええ、是非」
「クーマ様! ミーニャ! 」
ノランとマルガが笑っている、
「ちょっと、ノラン! マルガ! 」
「ミーニャ、二人の話もしておいて! 」
二人が吹き出す、「ちょっと、お嬢様! 」
「当然です、ミーニャいいですね」
「わかりました、よくおしめの交換もしましたし」
「ミーニャ! 」
三人が顔を真っ赤にして叫ぶ、
食後のコーヒーを楽しみながら、
「シフォン今日の予定は? 」
「様子を見に、街へ行こうと思います」
ノランが頷いている、
「私も一緒に行きます、アクスに任せっきりですから」
「クーマ様は何かご予定が? 」
「はい、出来る事をしておきたいな、と思いまして」
「出来る事、ですか」
「はい、少し防壁の散歩に行ってきます」
「わかりました」
「兵には伝令しておきます、誰か付けましょうか? 」
「それでは、ジェルダさんを呼んで頂けますか」
「わかりました、確保します」
「お願いします」
屋敷へ向かう道を、疾走する馬、
『クーマ様が呼んでいる、何でしょう? 』
「もしやお誘い、にへら〜」
『へっ、屋敷から力? 』
「急いで! 」ジェルダが馬を駆る、
屋敷の門をくぐり、作業場へそのまま馬を走らせる、作業場の入り口に人だかり、馬を飛び降り声を掛ける、
「どうしたの」
「え〜と、またクーマ様が」
「やっぱり」
ジェルダが作業場に入る、
「クーマ様・・・」言葉を失う、
力が急激に収まり圧力が消える、
「あっ、ジェルダさんお待ちしてました」
「クーマ様、何を? 」
「これを作っていました」
作業台の上には、6個の珠、
「これは? 」
「ジェルダさんならわかるのでは」
「見せていただいても? 」
「ええ、どうぞ」
ジェルダが1個の珠を手に取る、
体中が痺れるような感覚、
『これはクーマ様の力? 何処かで? 師匠の珠! でも、あの珠の比じゃない』
「クーマ様、これをどうするのですか? 」
「防壁の要所に設置したいのですが、ジェルダさんだったらうまく使えるでしょう」
クーマが真剣な顔で見ている、
「何かの時のお守りです」
「わかりました、その時はお任せください」
「お願いします」
いつものクーマに戻る、
「それと、ジェルダさん、もし良ければこれを使って頂きたいのですが」
「これは、クーマ様が来られた時に着ていた上着では」
「よく覚えておいでですね、多少ですが強化をして、ジェルダさんに合わせました、お役には立つかと」
「頂きます、誰が何と言ってもこれは私が頂きます、クーマ様返しませんよ」
「分かっています、今からそれはジェルダさんの物です」
「有難うございます! 」




