第63話
「御主人様、少しお耳に入れておきたい事が」
「どうした? 」
「はい、最近北の森に見慣れぬ者がおります、西の街道を越え南の森にもやって来ましたので、少し脅しをかけましたが」
「何をしていた? 」
「はい、魔獣を捕獲しているように見えましたが、冒険者には見えませんでした」
「そうか、注意しておいてくれ、南には入れるな」
「どの程度まで? 」
「愚か者にはそれに見合った末路を」
「はい、畏まりました」
「それと、街は明後日は、祭りだ」
「祭りですか? 」
「知っているのか? 」
「いえ、人型の生活には疎く、申し訳ありません」
「構わない、俺も初めてなんだ」
「御主人様もですか」
「ああ、だからお前も来い」
「えっ」
「嫌か? 」
「いえ、我が行ってもよろしいのですか? 」
「シフォンかまわないかな? 」
「はい喜んでご招待します」
「と言うことだ、遠慮なく来い」
「わかりました、お邪魔させていただきます」
「はい、お待ちしています、一緒に回りましょう」
「回るですか? 」
「来ていただければわかります」
「はい、お言葉に甘えさせていただきます」
その後はクーマの話で盛り上がる、
ハクジャとの、出会いの話では二人がドン引きしてクーマをジト目で見てる、
ハハハ、クーマが笑って誤魔化す、
三人は意気投合したようだ、
気が付けば、日は少し傾き始めていた、
「シフォン、ノラン、そろそろ戻りましょうか」
「えっ、もうですか」
クーマが窓の外を指さす、
「えっ、こんな時間」
「わかりました、片付けます」
「良いですよ、私が片付けます」
「駄目です、私とノランで片付けます」
「我も手伝います」
「いいえ、ハクジャはクーマ様と一緒にいて下さい」
ハクジャがクーマを見る、
クーマが頷く、
「御主人様、お任せして宜しかったのでしょうか」
「ああ言ってくれている時は甘えておけ」
「はい・・・」
「どうした? 」
「はい、人型との付き合い方を学ばなければいけません」
「そうだな、難しく考えるな、相手のことを考え、ある程度は自分を抑えろ、ただ、無礼は許すな、相手にもよるが、やり過ぎるなよ」
「はい、気をつけます」
「俺はこの街とここの人々が好きだ、だから失うつもりは無い」
「だから、害を及ぼす者がいれば容赦はしない、そういう事だ」
「なるほど、わかりました」
「クーマ様、片付けは終わりました、そちらは如何ですか」
「はい、大丈夫ですよ」
「では、戻りましょう」
「はい」
「ハクジャ、来られるのを楽しみにしています」
「シフォン、ノランその時はお手間を掛けます」
「ハクジャ、硬いわ、もっと気楽に、遊びに来て」
「はい」
「御主人様、では明後日に」
「ああ、そうだ昼前に来いよ、何か食べよう」
「はい」
「ハクジャ、またね」
シフォンとノランが手を振る、
ハクジャが戸惑いながら手を振り返す、
三人はハクジャに見送られ、帰路についた、
帰り道、
「クーマ様」ノランが声を掛ける、
シフォンも気づいたようだ、
「心配無いですよ、単なる見送りです」
「見送り? 」
その途端、左右にレプタイル亜種が現れる、道の左右に等間隔に並んだレプタイル達が一斉に伏せる、
「クーマ様これは? 」
「ええ、来る時は隠れていましたが」
「来るときもいたのですか? 」
「ええ、ハクジャが手配してくれたのでしょう」
「今姿を見せているということは、認められた、と言うことでしょうか」
「そうですね、でも、油断はしないでください、特に人族の方には、魔獣には防壁都市の人族と冒険者の区別はつきませんから」
「わかりました、注意させます」
「お願いします」
分岐を少し超えた辺りでレプタイル達は姿を消した、
そこから少しして、防壁沿いを歩いていると、上の方から声がする、
見上げると、アグネスがこちらに手を振っている、軽く手を上げそれに応える、
西門は開かれ数人の人が見える、アルベルとマルガ、数人の衛兵達、
「女王、クーマ様、おかえりなさい、ノラン、おかえり」
アルベルとマルガが声を掛ける、
「ピクニックはいかがでしたか? 」
「大変、有意義でした、楽しかったですよ」
「そうですか、それは良かった」
「少しだけ心配してましたので、少しだけね」
「クーマ様が一緒だったんです、心配などいりません」
「ですね」
「あっ、そうだアルベル、マルガ、明後日お昼前に来客があります」
「来客ですか? 」
「はい、ハクジャさんが来られます」
「はぁ、ハクジャ! シロヘビですか!? 」
「そうです、ちゃんとお迎えしてね」
「クーマ様、ハクジャ殿が来られるのですか? 」
「はい、祭りを一緒に回ろうと、誘いました」
「私もご一緒してもよろしいですか」
「もちろん」
「女王! 」
「構いませんよ、一緒に回りましょう」
「はい、お願いします」
「女王、大丈夫なんですか」
「ええ、ハクジャさんは良い方でしたよ」
「わかりました、何か注意することは」
「そうですね、礼儀をわきまえること、それだけです、ただし、徹底しなさい、いいですね」
「わかりました、マルガ、聞いたな」
「はい、徹底させます」
「所で祭りの準備はどうですか? 」
「はい、人族の方は大まかな場所ぎめをして屋台を作り始めています、一部の衛兵は手伝いに、残った者でこちらも出店を作っています」
「ありがとう、助かりました」
「いえ、これぐらいなんてことは」
「シフォン、情報の共有を」
「そうですね」
「情報の共有? 」
「アルベル、マルガ、近衛とアクスを呼んでちょうだい」
「カフェに? 」
「いえ、会議室に」
「わかりました、マルガ行くぞ」
「少し時間がかかります、お呼びしますのでカフェでお待ち下さい」
「わかりました」
「お嬢様、しっかり定着しましたね、カフェ」
「本当ね、ジェルダに感謝しないと」
「駄目です、あの子はすぐに調子に乗りますから」
「そうね、でも何か考えておくわ」
「きっと喜びます」
「クーマ様行きましょう」
「はい」
シフォンとノランに引かれてカフェに向かう、
スーが出迎えて席に案内してくれる、
「コーヒーとケーキを三人分、お願い」
「畏まりました」
「それとジェルダはどこに? 」
「ジェルダさんは、先ほど奥に隠れました」
「捕獲して連れてきなさい」
「はっ! 」
スーがオーダーを通して、ジェルダの捕獲に向かった、
暫くして、ミーとアンがコーヒーとケーキを運んでくる、その後ろからスーがジェルダを連行してきた、
「女王、お帰りなさいませ」
「ただ今ジェルダ」
二人の顔が笑ってない、
「うっ、女王、ノラン様、アハハ」
「アハハじゃ、ありません、なんで隠れるんですか? 」
「だって、怒るでしょ」
「ふぅ~、怒りませんよ、褒めようと思っていたんです」
「へっ、褒めるんですか? 」
「嫌なんですか? 」
「いえ、褒めてください・・・ところで何を? 」
「この、カフェです、みんなが楽しんでいるのはいいことです、私達も寛げるので、ですので、褒美として、今後は貴方を責任者にします」
「えっ〜、ちょっと待ってください」
「駄目です、ミー、スー、アン、あなた達も協力しなさい、ジェルダと三人で運営するように、あっ、それと本来のお仕事もきっちり行うように、どちらも手抜きは許しません、いいですね」
「あの、責任者はちょっと〜」
「出来ないんですか、では撤去しますが、いいですね」
「いえ、やります、やらせて下さい」
「良いでしょう、頑張ってくださいね」
ケーキを食べコーヒーを飲み終わる頃、
マルガが迎えに来た、
「皆揃いました、後はジェルダだけです」
「えっ〜、まだ何かあるんですか? 」
「はい、大事なことです」
シフォンが真剣な顔で答える、
「わかりました」
ジェルダが真面目な顔になる、
「行きましょう」
「はっ! 」
会議室
主要メンバーが集まっている、
「皆、急な招集ですみません、共有しなければいけない情報が有ります」
「クーマ様、お願い出来ますか」
「わかりました」
「これは、私の従者ハクジャからの情報です、最近北の森に、見慣れぬ集団が頻繁に現れて魔獣を捕獲している、とのことです」
「見慣れぬ集団? 」
「はい」
「それでしたら、最近、北の森が騒がしいと衛兵から報告があり、調査させましたが、防壁からは、かなり離れているので、詳しい調査は出来ていません、魔獣を捕獲しているようだ、との報告は受けていますので、引き続き調査はさせています」
「場所は? 」




