第61話
「女王、ノラン、有難うございます」
二人が呆れている、
「どうかされましたか? 」
「いえ、私達も同じ事をしたから」
「クーマ様、マルガにも指輪と胸飾りを」
「女王それには及びません、私にはクーマ様から頂いた鎧があります、私はこれで十分です」
「鎧? 」
「はい」
「それは洋服では? 」
「ああ、そうですね、お見せします」
「クーマ様、宜しいですか」
「はい、私も見たかったので」
マルガが力を通す、光と共に洋服が白金の鎧に変わる、
「クーマ様これは、美しい」
「マルガさん着け心地は如何ですか」
「非常に軽く、動きやすい、最高です! 」
少し頬が紅潮している、
「それは良かった」
シフォンとノランが近づき耳元で囁く、
「それだけですか? 」
「へっ」
「本当は? 」
「あの〜」
「本当は!? 」
「クッ、クーマ様に抱き締められているようです」
「やっぱり」
「良いな〜、マルガ貸してください」
「駄目です! 」
「お嬢様! 」
「冗談です、多分私が着ても意味がありません」
「そうですね、確かに」
クーマをジト目で二人が睨む、
「はぁ〜」
「お嬢様、早く準備して私達も頂きたいですね」
「そうね、準備を急ぎましょう」
「はい! 」
二人で意気投合したようだ、
「さぁ、クーマ様、マルガ、宴会に行きましょう」
「そうですね」
四人は部屋を後にして、宴会場へ向かう、
「女王、開幕のお言葉よろしいですか」
「マルガ、今更じゃないですか? 」
周りを見る、
「アハハハッ、確かに、しかし、兵は待っていますよ」
「そうですね、皆には感謝しないと」
「もったいなき御言葉、皆に代わり感謝致します」
「では、行きましょう」
「行ってらっしゃい」
「何を言ってるんですか、クーマ様も来るんですよ」
「いや、私は此処で待っていますよ」
「駄目です、早く、来てください」
「いや、私は此処で・・・」
「ノラン、マルガ連行しなさい」
「はい」
二人が両腕をつかむ、
抵抗するクーマの耳元にシフォンが囁く、
「抵抗は無意味ですよ」
「さぁ、行きましょう、皆が待っています」
皆が待つ宴会場に連行されていく、
アルベルとアクスが、
舞台脇で待機している、
「お待ちしていました」
連行されるクーマを見て、
「どうされたのですか? 」
「逃げようとしたので」
「なるほど」
アルベルがシフォンに小声で聞いてくる、
「詰所では何があったんですか? 」
「ナイショです、命令です、先のことは忘れなさい、アクスにも念を押すように」
「わ、わかりました、問題は無かったんですね」
「問題は有ります・・・」
「あるんですか」
「心配は要りません」
「わかりました」
「では、舞台へ」
アルベルとマルガが先に上がる、
「さぁ、クーマ様行きましょう」
シフォンが手を差し出す、
「わかりました、お供します」
手を取り二人で舞台へ上がる、
衛兵達から歓声が上がる、
マルガが声を上げる、
「傾聴! 」
「本日は女王様から宴会の許可が下りた、皆、大量の食材を持って帰られたクーマ様に感謝を! 」
「おぉ〜」歓声が上がる、
「女王様に感謝を! 」
「おぉ〜」また、歓声が上がる、
「後は楽しめ! 」
「おぉ〜、やったぁ〜、飲むぞ〜」
あちらこちらから歓声が上がる、
案内されたテーブルにつくと、料理と飲み物が運ばれてくる、
テーブルにはアルベル、マーリー、アニー、アルマ、コニー、セルファ、ジェルダ、アクス、それとシフォン、ノラン、マルガ、クーマが席についている、
「そうだ、アルベル、先に言っておきます」
「はい、何でしょうか」
「お祭りをします」
「祭りですか、いいですね」
「皆が楽しめる祭りをお願いしますね」
「はい、今からですと、3週後に収穫祭が良いですかね」
「いえ、4日後です、ケンには伝えました」
「4日ですか・・・4日後! 女王、それはいくらなんでも」
「無理ですか? ケンは用意出来ると言っていましたが、仕方ないですね、では、人族だけで」
「出来ます! 出来ますが、この時期に・・・」
「ええ、分かっています、ケンも心配していました、でも、今なんです」
真剣な表情のシフォンをみて、アルベルも決心する、アルベルが皆を見る、皆が頷く、
「女王、必ず成功させます」
「ええ、お願いしますね、皆の思い出になるように」
「それでは、散歩は祭りの翌日はきついので6日後にしましょうか」
「えっ」
マーリー達が一斉にこちらを見る、
「マーリー、散歩って何だ? 」
「はい、先日クーマ様にお願いしたんです、散歩に連れて行って欲しいと、女王の許可は頂いていますよ」
アルベルがシフォンを見る、
「うっ、はぁ〜、クーマ様アルベルも構いませんか? 」
「ええ、もちろん」
「思い切りしごいてください」
「ハハハ、シフォン、散歩ですよ、散歩」
「女王〜」
「それと、アルベルさん、明日お二人を連れて行ってもいいですか? 」
「お二人が良ければ、構いませんが、どちらに? 」
「クーマ様? 」
「シフォン、ノラン、明日ピクニックに行きましょうか」
「えっ」
二人の顔がパッと明るくなる、
「はい、用意します」
マルガがじっとこっちを見ている、
クーマは頭を掻きながら、
「行くのは湖ですが」
「えっ」皆が一斉にこちらを見る、
マルガは、気づいたようだ、
「クーマ様、我々も同行します」
アルベル達が立ち上がる、
「アルベル落ち着け」
マルガが声を掛ける、シフォンと目が合う、
「アルベル、心配いりません、クーマ様が一緒です、ねっ、ノラン」
「はい」
「アルベル、街をお願い」
二人がアルベルを見る、
「ふぅ~、わかりました」
「アルベルさん、すいません、二人の事は私が守りますので」
「クーマ様、決して、無茶はしないでください」
「はい、小屋で食事をしたら帰ってきます」
「さぁ、そうと決まれば、宴会を楽しみましょう」
「はい、頂きます! 」
皆が一斉に杯を交わして飲み始める、
横でノランがシフォンのジョッキを取り上げている、シフォンが抵抗する、
「ノラン、一杯だけだから〜」
「駄目です! 」
「ノランの意地悪〜」
「だめったら、だめです! すぐに酔っ払うんですから」
「大丈夫、一杯だけなら平気だから」
「駄目です! 」
シフォンがほかのジョッキに飛びつく、
「あっ」
「へへへ」勝ち誇った顔のシフォン、
ノランが、
「わかりました、どうぞお飲みください」
「やった〜」
飲もうとジョッキを上げたシフォンが止まる、
「ノラン、何か企んでいるわね」
「いいえ、何も」
「うそ、何か企んでる」
「何も企んでいません、ただ、今晩はクーマ様を独り占めできるな、とおもいまして」
「ぐっ」
シフォンがジョッキをテーブルに戻す、
「あら、飲まないんですか? 」
「意地悪」
「ジュースを頂戴! 」
「はい、どうぞ」
二人のやりとりを見てみんなが笑っている、
シフォンとノランも一緒に笑っている、
笑い声の中、防壁都市に夜が来る、
今日はいつになく早く宴会が終わった、いつもならグダグダ朝までいる者達が、一斉に帰り始めた、口々に、
「明日から忙しくなる、祭りが楽しみだ」
と言って片付け始め帰っていく、
どうやら既に情報は回っているようだ、
三人は少し早めに皆に声を掛け宴会場を後にする、
帰りは歩き、二人の思い出話を聞きながら屋敷へ戻った、
出向かえてくれたメイドに風呂に行くことを伝え、それぞれの部屋に戻る、
暫くしてシフォンとノランが迎えに来て、三人で風呂へ向かう、いつものように二人が洗ってくれる、
「クーマ様、先に湯舟にどうぞ」
「はい」
シフォンとノランがお互いを洗って、湯舟に入って来る、
「クーマ様、明日のピクニックはやはり、ハクジャ殿ですか? 」
「ええ、みんなで食事をしましょう」
「はい」
「だから、今日は早く寝ましょうね」
「「はい! 」」二人が舌なめずりしている、
「聞いてます? 」
「はい、聞いてます、フフフ」
二人が笑っている、




