第56話
セルファの視線が止まる、
視線の先には、
「セルファ、おかえり」
「アルベル、ただいま」
見つめ合う二人、
「君の好きな酒を取ってある、一緒に飲みたい、良ければ寄ってくれ」
「ええ、いずれ必ず」
セルファが振り向き俺を見る、その目には涙が溜まる、
「クーマ様ありがとうございます、私にも少し未来が見えました」
「ああ、共に未来を」
「はい、この魂に誓います」
セルファの姿がもとに戻る、
マーリー達が駆け寄り、お互いが抱き合い、喜びを分かち合う、
少しして、皆が姿勢を正しシフォンに向き合う、「我ら近衛はこれからも女王と民の守護者である事を誓います」
一斉に跪く、
「私、シ・フォニアは皆の誓いを受け取りました、共に民のために未来を築き続けます、私に力を貸してください」
「はっ! 」
皆が、立ち上がり俺に向き合う、
「クーマ様に頂いたこの力、女王と仲間と民を護るため使わせて頂きます」
「ありがとうございます」
「皆さんの装備は今後あなた方と共にあります、自身の信念を忘れずにお役立てください、きっとあなた方の魂に応えてくれるでしょう」
「クーマ様、お疲れ様です、今日はもうお休みください」
「え〜と、もう少し」
「駄目です、もうすぐ日も変わります」
「えっ、もうそんな時間ですか? 」
「はい、ですので、今日はお休みください」
「わかりました、そうしましょう」
「皆さんも、お疲れ様です」
「とんでもありません、有難うございました」
「さぁ、皆も早く寝るように」
「明日は宴会、朝から忙しいですよ」
「そうだった、では、失礼します」
「クーマ様おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
皆それぞれが帰っていく、
「クーマ様、私達も戻りましょう」
「ええ、そうですね」
「コーヒー、飲まれますか? 」
「有難うございます、お願いします」
「ノラン、お願いできますか」
「はい、すぐにご用意します」
クーマの部屋、
ノランの用意してくれたコーヒーを三人で楽しむ、
シフォンとノランが真面目な顔で俺を見る、
「クーマ様、ありがとうございました、皆の装備のこと、セルファの事」
「彼女はずっと悩んでいたのだと思います、でも私達ではどうすることも出来なくて」
「彼女の迷いが晴れて良かった」
「ジェルダの事も、又シャリーンと話せた、全てクーマ様のお陰です」
「それは違います、私は流れの中で少し手を貸しただけ、それだけです、皆自分で克服したんです、だから気にしないでください」
「はい、クーマ様が、そう言われるのなら」
「あっ、それとお二人への贈り物はもう少し待って下さいますか」
「「えっ」」悲しそうな顔、
「いやっ、ちゃんと出来てますよ」
「ちゃんとしたケースに収めたいなと思いまして、駄目ですか? 」
「駄目じゃないです、私達もちゃんと準備します」
「それは、大袈裟です」
「いえ、ちゃんと準備します」
「わかりました、では、その時が来たら言ってください、用意しておきます」
「「はい」」
「さぁ、寝ましょうか、遅くまですみません」
「あの〜、クーマ様」
「明日は早いんですよね」
「でも〜」
「ノランさん」
「はい、お嬢様行きますよ」
「えっ、ちょっとノラン、裏切り者〜」
「いや〜、クーマ様ぁ〜」
ノランがシフォンを部屋から連れ出す、ひょこっと顔を出したノランが一言、
「クーマ様、ノ、ラ、ン、です」
俺は少し笑って、
「はい、おやすみ、ノラン」
「はい、おやすみなさい」
「さぁ、お嬢様、早く」
「い〜や〜」
深夜の屋敷に響くシフォンの叫び、
『困ったもんだ、明日は宴会か・・・』
「楽しみだ」
ジェルダの部屋、
ミーニャが扉を開ける、
「どうぞ、貴方の部屋だけど」
シャリーンが恐る恐る部屋を覗く、
思わず頭を押さえる、
ミーニャも覗く、苦笑いが出る、
部屋の中は、読みかけの魔法書の類が、山のように積み上げられ、あちらこちらに塔が建っている、
窓際のテーブルをかたづけ、二人で座る、
来る途中厨房から持って来た、いい香りの飲み物を注いでくれる、
「これは? いい香りね」
「ああ、クーマ様が来てからは、皆よく飲むようになった」
「クーマ様が持ってきた? 」
「いいや、元々あったけど皆飲まなかった、色がな」
「なるほど分かる気がする」
「でも慣れると、無いと寂しくなる」
「そう」シャリーンが香りを吸い込む、
「落ち着くわね」
「だろ、飲んでみろ」
「ええ」一口飲んでみる、「美味しい」
「だろ、だから皆はまってる」
「わかるわ」
暫しの沈黙、
「ミーニャのその姿、大変だったわね」
「どこまで覚えている」
「斬られて魔法を構築したまでは記憶として持っているわ、でもその後のことは所々に記憶しているような、してないような不思議な感覚ね」
「私は、あくまでもシャリーンの思念体、あの時までの思いしかない、でも皆と一緒に居たような錯覚もある」
「そうか」
そこからは他愛もない昔話、深夜を過ぎる頃、
「ミーニャ、そろそろ私は帰るわね」
「そうか、話せてよかった」
「お嬢様にはよろしく伝えてね」
「ああ、わかっている、所でその球は何なんだ」
「ああ、これね、これはクーマ様が少し力を貸してくださったの」
「力を? 」
「ええ、だからジェルダに負担を掛けずに貴方とお話ができた」
「お前はどうなる? 」
私は前と同じ、杖の中で眠るわ」
「シャリーン」
「またいつか、お話ができればいいわね」
「そうだな」苦笑い、
「じゃぁ、おやすみなさい、目覚めれば貴方の弟子に戻っているから宜しくね」
「ああ、おやすみシャリーン」
シャリーンはベッドに入りゆっくりと目を閉じる、
深夜ベッドの中、目が覚める、
「ここは何処、えっ、飛び起きて自分を見る、まだ消えてない? どうして? 」
シャリーンは戸惑っている、
確かに玉にはまだ力が残っている、
『あの方は何者なのでしょう? これ程の力をいとも容易く使うなんて』
暫く考え首を振る、
『考えても無駄ね、クーマ様は私に時間を下さった、この玉の力は弟子に残していきましょう』
もう一度ベッドに横になり、目を閉じる、直ぐに飛び起き、部屋を出て周りの気配を探る、動くものは居ない、
『クーマ様の部屋は2階・・・』
クーマの部屋の前、ノックをする・・・
返事が無い、そっと扉を開ける、
「クーマ様〜、呼んでみる」
返事は無い静まり返った部屋の奥から寝息が聞こえる、
そっと近づく、ベッドにはクーマ様が寝ている、
「クーマ様〜」声を掛けるが、返事は無い、熟睡している様だ、起こす方法は知っている、
やめておこう、暫く寝顔を見つめ、戻ろうと思った所で、ジェルダの思いが見えた、シャリーンはふっ、と笑って、服を脱ぐ、そのままクーマのベッドに潜り込む、
「クーマ様有難うございます、この子の事宜しくお願いします」
シャリーンを眠気が襲う、
「おやすみなさい」
翌朝、ノックの音がする、
少し寝すぎたようだ、
『うん? 』横に誰かいる、又シフォンが潜り込んだか、困ったお嬢様だ、
「どうぞ」
「お早うございます」
シフォンとノランがいる?
『えっ、誰がいる? 』
布団をめくる、そこには丸くなって眠る裸のジェルダがいた、
「う〜ん、あっ、クーマ様お早うございます」
シフォンとノランの顔色が変わる、
二人が駆け寄る、
「クーマ様これはどういう事ですか? 」
二人の顔が怖い、
「えっ」ジェルダが気づいた、
「ジェルダァ〜、あなたは何をしていますか!? 」
「えっ、女王、ノラン様、えっ、どうして? 」
「ジェルダさん、お早うございます」
「あっ、お早うございます、」
「えっ〜、なんでクーマ様が〜」
慌ててベッドから転げ落ちる、
「なんで私の部屋に? 私、裸? えっ、どうして? 」
「えっ、なんで? 」
シフォンとノランが詰め寄る、
「お嬢様、ノラン様までどうして? 」
「周りを見なさい! 」
ジェルダが周りを見渡す、
「私の部屋・・・じゃない? クーマ様の部屋、私、なんで? 」
「それはこちらのセリフです! なんでクーマ様のベッドに? しかも裸・・・」
「えっ、クーマ様のベッド」自分の股に手を突っ込む、
「ふ〜、何もしてない」
ノランが頭を叩く、
「いった〜い、何するんですか〜? 」
「あなたこそ、何をやっているんですか」
「いや、やっちゃったかと」
シフォンが頭を叩く、
「出ていきなさ〜い」
「はい〜! 失礼します! 」
服を掴んで部屋を飛び出して行く、




