第55話
「お二人とも宜しいですか」
「「はい」」
クーマは暫く二人を見た後、
「セルファさん、コニーさんを先でいいですか」
「うっ」短く返事する、
「では、コニーさん装備を見せてください」
「こちらです」
「これは、ハルバート? 」
「はい、少し短めなのは理由が? 」
「はい、私は神力を使うので、集団戦の場合は支援系が多くなります、ですので護身用です、長いと使いにくいので」
「分かりました、少し良いですか」
「はい」
クーマはコニーの胸に手を当てる、
「なっ、クッ、クーマ様何を」
「意識を集中して」
「はっ、はい」
クーマが離れる、
「もう良いですよ、では、始めましょう」
クーマはハルバートに力を注ぐ、柄を伸ばしている、
『長いのは苦手なんですけど』
アダマスの素材を粘土に変え長く伸ばして柄に足していく、
スマラグとサファイアを合わせて、粘土を作り刃を大きくし、グルナを柄尻に合わす、
鎧には合わせた素材粘土を貼り付けていく、
「では、いきます」
クーマが力を注ぐ、鎧の上を小さな稲妻が走る、
『んっ、いつもと違う』
稲妻の周りを風が包んでいる、ハルバートは稲妻を纏った風に包まれ光を放つ、
「ふぅ~、出来ました」
「さて、一度力を通していただくのですが」
『あれ、コニーが居ない』
周りを見ると既に着用し力を通し始めている、
『ありゃ、注意しようと思ったんだが、まぁ、いいか、様子を見よう』
『この世界の神力は、信仰と言うよりも信じる魂によって力が発動する、その為明確な神は存在しない』
『自分が信じる"もの"が全て、その対象は人であったり物、魔獣であったりする』
『コニーの魂は何を信じ何を望むのか』
コニーの顔に笑顔が浮かぶ、
『これは何、力を通した途端装備が身体に吸い付く』
力が身体を包む、鎧が光り、手からハルバートに光が広がる、そこから先端の刃の部分に光が伸び輝きを増す、柄尻のグルナが輝く、光が明滅し始める、
『ハルバートが重い、何? 小手が外れそう、脛当てが重い、どうして? 』
『私は拒絶された? どうして? 』
周りを見る、人がいる、
『誰? 顔が見えない、鎧が重い、身体が押しつぶされる、周りで見ている人は誰? 』
『誰も助けてくれないの? どうして? 私は誰? 何をしている? こんな鎧、脱いでしまえばいい、何でこんな物を着ている、脱いでしまえば楽になれる・・・』
『ダメ! これは大事な人を護るためのもの』
『大事な人? 私が信じ護るべき人たち、それは誰? 私? 』
『違う! 』
周りを見る、女王がいる、仲間がいる、クーマ様が見ている、光の明滅が止まる、
『私が信じる者、女王と仲間、それに私たちを信じて手を差し伸べてくれたクーマ様、この力は護るためにある、皆を護るためにある、私は、私の信じる者の為にこの力を使う、この力で護るべきものを信じ戦う、もう迷いは無い』
「力よ、私と共に皆を護って! 」
装備が光り輝き消えていく、私は、改めて護るべき人達を見る、
『皆、私を信じ見守ってくれた』
深々と頭を下げる、クーマ様に向き直り真っ直ぐクーマ様を見る、少し笑っている、改めて深々と頭を下げる、
「ありがとう御座います」
「乗り越えましたね」
「はい」
「説明をする前でしたので少し慌てましたよ」
「申し訳ありません、貴重な経験でした」
「それは良かった」
「では、セルファさんおまたせしました、始めましょうか」
「うっ」
「装備を見せてもらえますか」
「これ」
これは、魔獣の皮の面地と裏地の間に鎖帷子を挟むように作ってある上着、内側には少し変わった両刃の短剣を収めるようになっている、数は左右合わせて12本、それに薄い胸当ての下着?
下は膝丈のスカートこれも内に鎖帷子、裏に短剣を左右で12本、両足にはストッキング状の鎖帷子、腿に左右12本の短剣、計36本かなりの重量になる、剣は短めの直刀片刃を2本、かなり変わった装備だ、
「先ずは武具から、始めましょう」
作業台に並べて少し離れて観察する、
おもむろに素材を集めて選び始める、
スマラグとサファイアを合わせて粘土を作り伸ばし始める、暫くすると、素材が細かい網目状になっていく、それを防具に合わせる、また少し離れ観察する、また、別の素材を粘土にして防具に合わせていく、最後にアダマスの素材から作った素材粘土を伸ばして、上着の内側に貼り付ける、グルナから作った素材を短剣に合わせる、柄にはルビーから作った素材を取り付ける、
剣は刀身をアダマス、刃をグルナ、持ち手をスマラグ、鍔は付けずにルビーで突起を付ける、もう一本はサファイアで作る、出来た装備一式にクーマが力を注ぐ、
「ふぅ~、さてと」
「セルファさん、一度着けてください、あっ、力は通さないでください、良いですね」
「うっ」
セルファは素早く装備を身につけて、
クーマの前に立つ、
「装備、着けた」
「では、手を乗せてください、と両手を差し出す」
「うっ」
「どうしました」
「どうもしない」
セルファは、恐る恐る手を乗せる、
「良いですか、少しづつ力を通してください」
「クーマ様、いく」
「はい」
セルファの魂に入る、
『真っ暗闇の草原? 』
所々に薄っすらと光が灯る、その光が丘らしき場所を照らす、クーマはそこへ向かう、丘の上には一人の女性が座っていた、
「セルファ? 」
「クーマ様来られたのですね」
悲しげな声、いつものぶっきらぼうな感じはない、
「何を見ている? 」
「私の護るべき者達の未来を見ております、目を離すと消えてしまうので」
「消えてしまう? 」
「はい、私には力がありません、力があればなくさずにすんだ」
指さす先には、多分過去の記憶、助けられず目の前で死んでしまった、民と仲間、
「もっと力があれば助けられた、もう無くすのは嫌なんです、だから決して目を離さない、皆の未来は私が護る」
「力があれば全て叶うと? 」
「それは、分かりません」
「そこにお前の未来は有るのか? 」
「私の未来? そのようなものは有りません」
「未来が無いのか? 」
「はい、私は裏切り者の大罪人ドラーラの娘、未来を望むなどおこがましい、私は、この魂朽ちるまで、女王と民を護る者、私の未来など必要ありません、この身を盾として皆を護る、それが私の存在理由、私にとってはそれが全て」
「お前の仲間もそう思っていると? 」
「はい、当然です! 」
「お前は女王や仲間を馬鹿にしているのか? 」
「何故、そのようなことを!? 」
少し怒りが滲む、
「お前に見えるのはあれだけなのか? 」
「あれだけとは? 」
「よく見ろ」
セルファが、周りを見る、悲しい過去が見える、現在の皆が見える・・・
『何があった、動かない、皆が固まったように動かない』
「クーマ様何をしたのですか、たとえクーマ様でも害をおよぼすならば敵! 」
「俺は何もしていないよ、皆が動かないのは当たり前、お前の目には、未来が見えないのだから」
「未来? 」
周りを見る、悲しい過去、動かない現在、幸せな未来・・・
「何故! 私は皆の幸せを護る、決して失わない、なのに何故、未来が無い・・・」
「気づかなかったのか? 」
「先程お前は言った、未来など必要ないと」
「それは私のこと、皆のことではありません」
「同じだよ、皆も形は違えど後悔はあるだろう、でも、誰も立ち止まらない、自分を信じ、仲間を信じ、未来を信じて、出来る精一杯で進んでいる」
「お前は、進むのをやめた、だから皆の未来が見えない、そこにお前は居ないのだから」
「私がいない? 」
「そうだ、立ち止まったお前は皆と共に進めない」
「それでも構わない、元より同じ世界に立とうとは思わない、私はドラーラの娘、女王や仲間を脅かす者の娘、どうして共に進めると」
セルファから禍々しい波動が流れる、
「何人たりとも彼らの平和は奪わせない」
「無理だな」
「何故! この魂に変えても皆を守る! 」
「だから無理なんだ」
「何故! 」
「お前が前に進むのを拒んだからだ」
「お前が皆の未来を否定したからだ」
「私が否定した・・・」
「そうだ、だから此処には皆の未来がない」
周りを見る、
「やはり、私では無理なのか・・・」
「それも違うな、お前が皆を受け入れ、共に歩めば、未来が見えるだろう」
「共に歩む? 共に夢を見れると? 」
「そうだ、お前がお前の未来を信じろ、皆と共に歩む未来を」
外の世界を見る、
女王がいる、アルベルもノランもマーリー・・・
みんなが見ている、その目は私を信じて疑わない、
私を見ている、クーマ様がいる、私の手を取り目を閉じている、
「一緒に未来を夢見ても良いのですか」
そこにクーマ様はもう居ない、
でも優しい声が聞こえる、
『皆を信じろ、自分の護るべきものを信じろ』
暗闇に光が満ちる、
そっと目を開ける、クーマ様が優しい目で見ている、セルファの頰を涙が伝う、
「クーマ様、いきます」
セルファの力が上がる、装備が光り輝きセルファを包む、光が消えたそこには少し大人びたセルファがいた、
セルファがシフォンの前で跪く、
「女王」
「セルファ、その姿で会うのは久しぶりね」
「はい」
「クーマ様のお力を借り、暫しこの姿をとらせて頂いております」
「迷いは晴れましたか」
「はい、もう迷いはありません、これからも共に歩ませていただいても宜しいでしょうか」
「勿論です」
「これからも変わらぬ忠誠を誓います」
「皆、これからも宜しく頼みます」
「ええ、頼りにしてるわ」
「はい」




