第50話
「シフォンさん、俺達を呼んだということは、良いんだな? 」
「はい、クーマ様には全てお話しました、問題ありません」
「そうか、良かった」
「良かった? 」
俺は思わず聞き返す、
「クーマ、様? 」
「いいえ、クーマで構いません」
ケンがシフォンを見る、シフォンが頷く、
「じゃぁ、俺もケンで頼む」
「わかりました、ケン、で、何故? 」
「話を聞いたならわかるだろう? 」
「なるほど・・・襲撃を警戒した」
「当たりだ、というか、見知らぬものが来たら、俺たちは愛想悪くする、そう決めてるんでな」
「そうでしたか、道理でここに着いたとき、皆が冷たいな、と思いました」
「すまないな」
「もうすぐ月が重なる、警戒するに越したことはないからな」
「クーマも早く離れたほうが良いぞ」
「ケン」
ケンがシフォンを見る、
「クーマ様はここに残られます」
「はぁっ、それは・・・」
シフォンが止める、
「クーマ様が決められ、私が認めました」
「それは王として? 」
「そうです」
「分かった、じゃぁ、何も言わない」
「ところでクーマ、冒険者ランクは? 」
「ランクですか"F"です」
「"F"っ、良くここまでこれたな?
よく言われます、
「ケン、クーマ様は伝説のレプタイルを単独で倒せる"F"ランクだ」
そこにはワンピースを着たマルガがいる、
「えっ」
皆が一瞬固まる、
『マルガがワンピース? 』
マルガは、少しモジモジしながら俺を見る、少し顔が赤い、
「似合わないだろうか? 」
「とんでもない、凄くお似合いです」
マルガの顔がぱっと明るくなる、
「洋服姿を見るのは、初めてですね」
「えっ、あの、その、着替えが無くて、その」
赤くなって下を向く、
シフォンが声を掛ける、
「お姉様、お洋服、凄く似合っています、でも、そのお洋服に、剣は似合わないのでは」
ノランが横にずれて、マルガに場所を開ける、
「マルガ、どうぞ」
「いや、私は・・・」
シフォンが言う、
「クーマ様の横は嫌だと? 」
少し笑っている、ノランも笑っている、
「いえ、座ります」
「クーマ様、失礼します」
「どうぞ」
『今、様って言った? もしかしてマルガも・・・』
「お姉様、ところで何故剣を? 」
「あっ、そうでした」
マルガは、剣を腰から外し、シフォンに手渡す、
「ご確認ください」
「えっ、これはお父様が貴方に差し上げたもの・・・」
「そうです、クーマ様が、少し手入れして下さいました」
「クーマ様が? 」
シフォンが俺を見る、
「少しだけバランスと強度を調整しました、勝手をして申し訳ありません」
「とんでもありません、むしろ、お礼を言わなければ」
「見せていただいても? 」
「どうぞ」
『何度も見た父、前王の剣、少し持ち手あたりが変わっている、持ち手の先に緑の宝石? ガード部分には黄色の宝石? そっと剣を鞘から抜く、
私でも分かる、父の剣は何度も触れた、その時以上の力? を感じる、この力、クーマ様・・・この剣には父とクーマ様が居る』
何とも言えない懐かしさが魂を包む、シフォンの目にうっすらと涙が浮かぶ、
「シフォンさん、大丈夫ですか? 」
「クーマ様、有難う御座います、マルガ、これからも大事にしてね」
シフォンは剣をそっと鞘に戻す、
「はい」
「それとクーマ様、シフォンです」
「あっ、すいません」
「だめですよ、ちゃんと呼んでくださらないと、これからは罰を与えます」
「えっ」
「冗談ですよ『顔が笑ってない』」
「あの〜、盛り上がっているところ悪いんだが、伝説級のレプタイルってなんの話だ? しかもそれを倒した? 彼が? 」
「そうだ」
「そうだっ、てっ、ちょっと待ってくれ、レプタイルは単独でもBクラスの魔獣だ、しかも単独ではまず出ない、それの伝説級を単独? ランクの改変でもあったのか? 」
「いや、ケンの知っているレプタイルの色は? 」
「えっ、色って、無色に、ルビーだろサファイア、後は親父に聞いたグルナ、スマラグ、この辺は伝説級と聞いてる」
「それ以上は? 」
「聞いたことが無い、いるのか? 」
(声が震える)
「ああっ、いた」
「いた? 殺ったのか? 」
「クーマ様が単独で倒された」
マルガが、答える、
「どんなやつだ? 」
「クーマ様」
「ケンさん、今なら防壁の作業場にまだあると思いますよ」
マイカと顔を見合わす、
「すまない、ちょっと行ってくる」
「ええ、どうぞ」
ケンが走り出す、見送ると何人かが後を追って走っていく、
「すみません」
マイカが謝ってくる、
「構わないわ、私達も見に行ったから」
「そうなんですか? 」
「あれは、この世のものじゃない」
マイカが確認するように聞いてくる、
「美しい? 恐ろしい? 」
シフォンが応える、
「前者ね」
「私も行ってきます」
マイカが走っていく、よく見ると、周りからほとんどの人がいなくなっていた、
テーブルには俺、シフォン、ノラン、マルガ、が取り残された、テーブルには、コーヒーとケーキ、
「女王、どうしてこのような事に? 」
「これは、ジェルダ達が用意してくれました、あなた達を待つ間コーヒーでも飲みましょうと、いつの間にか増えましたけど」
「皆、浮かれてますね」
「そうね、今は毎日が楽しくて」
「そうですね、少し困った方がいますが、そうね」
三人が俺を見る、俺は頭を掻きながら笑ってごまかす、
「クーマ様、説明を」
「そうですね、皆さん気持ち良さそうに寝ておられたので、起こすのは申し訳ないな、と思いまして」
「で」
「皆さんが寝ておられる間に、少し素材を集めに」
「出かけた、と」
「はい」
「で、何故マルガとポニーを? 」
「それは、今後、街や皆さんに何かあった時に、私の従者との間にトラブルがあっては困りますから」
「先にマルガ様とポニーには紹介しておいたほうが良いと思いまして」
「それでしたら何故、私達もご一緒させて下さらなかったのですか? 私は王なんですけど」
「ハハハッ」
「女王、それは私から」
マルガが声を掛ける
「そう言えば、いつからクーマ様は、マルガ、と? 」
「えっ、あっ、それは」
「フフフ、構いません、貴方が認めたなら私は何も言いません」
「それで、どうして私達は置いて行かれたんですか」
ノランが頷いている、
「それは、クーマ様には散歩だったかもしれませんが、私とポニーには、かなり過酷な修行でした・・・それとハクジャ殿との距離感でしょうか」
マルガが確認するように俺を見る、、
俺は黙って頷いた、
「修行? ハクジャ? 距離感? ノランが首を傾げる」
「あっ、すみません、ハクジャ殿、とはシロヘビの事です」
「シロヘビ? 名を付けたのですか? 」
(ノランが目を見開く)
「はい、今はクーマ様の従者として、クーマ様が付けられた名、ハクジャと名乗っておられます」
ノランがシフォンを見る、
「お嬢様知っていたのですか? 」
「あれ? 先日話しませんでしたか」
「聞いていません」
「ノラン、睨まないでちょうだい」
「ごめんなさい、言い忘れたかも・・・」
「ちゃんと教えてください、で、距離間とは? 」
「ハクジャ殿は人を知りません、クーマ様の従者ですがクーマ様が規格外ですので」
二人が頷く、
「その感覚で来られると、色々と双方に問題が起きます」
「問題? 」
「はい、事実私はハクジャ殿の力に当てられ動けなくなりました」
「貴方が? 」
「はい、お恥ずかしい限りです、ハクジャ殿の力は想像を絶します、ですので、今回、お誘いいただいたのは、ハクジャ殿が人を知るための見本と言うところでしょうか、それと今後の戦いに向けての戦力評価ですね」
マルガが俺を見る、
「クーマ様、それは・・・」
「そういう事です、私はこの街も此処に住む人々も好きですから、何よりもお二人が居ますから」(雰囲気が変わる)
「私は、わがままなんです、守るべき者に害をなすなら、決して許す気はない」
「「「クーマ様! 」」」
シフォン、ノラン、マルガが引いている、
「やめて下さい、殺気が駄々漏れです」
「あっ、すいません」
その時、後ろから誰かが抱き着き、そのまま崩れ落ちる、
皆が一斉に声を上げる、「ジェルダ! 」
振り返ると、ジェルダがこちらを、涙目で見上げている、
「クーマ様、酷いです、いきなり殺気を飛ばすなんて」
「あっ、すいません、ちょっと気持ちが高ぶってしまって」
俺は立ち上がりジェルダを抱き起こす、
「クーマ様! 」
突然ジェルダが強く抱き着く、プルッと震え,ため息と共に脱力する、
レプタイルのカラー
通常は薄い緑色(黄緑)
生き残った年数が長くなるにつれ、
背中鱗が大きくなり板状に変わる、
後は経験値により色が変わる、
低ランクから
ルビー=赤そのままルビー色
サファイア=青そのままサファイア色
グルナ=黄、ガーネットの色
スマラグ=エメラルドグリーン
アダマス=透き通った鱗、イメージはダイア
と、言う設定です




