第5話
メイドたちの会話
「あの男は何者なのでしょうか? 」
「お嬢様の言うことしか聞かないポニーがあんなに懐くなんて」
「初めに警戒したのは何だったの? 」
「危険もしくは・・・脅威を感じたから? 」
「あのホーンベアが人族に・・・」
「まさか・・・」
「ノラン様が鑑定されましたが・・・見れなかった、とおっしゃていました」
「見れなかった? 」
「ええ、何もわからなかったと・・・」
「それって・・・」
「そう、ノラン様より格上・・・?」
「そんな・・・」
「そんな雰囲気はどこにも・・・」
ポニーの背中で、背もたれにもたれて、寛いでいると不意にシフォンがもたれかかってくる、
肩ごしに俺の腕を抱いている、特に何も言わず、ずっと俺の腕を抱いている、街の入り口に近づいた時、名残惜しそうに俺の腕を離し、こちらを振り向く、
「もうすぐ街に入ります、衛兵の詰所に向かいます」
「わかりました」
街の通りを移動していると、シフォンに気がついたものが挨拶をしてくる、
シフォンはにっこり笑って軽く手を降っている、
程なく防壁に隣接の詰所についた、衛兵の一人が駆け寄り、シフォンと挨拶を交わし、すぐに引き返していく、
俺はポニーから降り、シフォンの手を取る、シフォンが少し照れている、
俺はポニーから自分の荷物を降ろし、出発の準備を行う、
数名の衛兵が集まってくる
その中に一人、雰囲気の違う騎士? が、他の衛兵に声をかけながら現れ、こちらに近づいてくる、
衛兵たちは、シフォンに挨拶をし、ポニーの荷台から荷物を運び始める、
騎士? が近づくとシフォンが挨拶をする、
「お早うございます、お姉様」
『えっ、お姉さんなんだ』
直ぐに俺も挨拶をする
「お早うございます」
「君は、先日報告のあった冒険者か」
『どんな報告を受けた? 』
「父上からも連絡を受けている、父上が正式に君に依頼を出したとな、素材採取だったな」
「はい、そうです」
「父上は君を気に入ったようだな・・・シフォンが、かな? 」
お姉様!(顔が赤い)
ポニーが後ろから近づいてきて
頭を俺の肩に乗せる『重いって! 』
「ポニーお前もか? 」
「父上からは、君の採取をサポートするように言われているが、実際の所、君に同行することは出来ない、すまない」(頭を下げる)
『律儀な人だ』
「とんでもない、これは私が受けた依頼です、お気持ちだけで、感謝です」
「お姉様」(少し残念そうな顔)
「シフォン様それはだめですよ」
「シフォンすまないな」
「こちらこそごめんなさい」
(少しシュンとなっている)
ポニーが顔をなめる、
シフォンは「ありがとう」と言い頭を撫でる、
シフォンは改めて、お姉さんの紹介をしてくれる
「クーマ様、私の姉マルガリータ・ダルクです」
「お姉様、こちらは冒険者クーマ様です」
「防壁都市守備隊隊長、シフォンの姉のマルガリータだ」
「お世話になります」
「こちらこそ、妹と仲良くしてやってくれ」
「こちらこそ、大変お世話になっています」
「立ち話もなんだ、詰め所に来てくれ周辺の資料は用意している」
「ありがとうございます」
マルガリータに案内され詰所に入る、
そこには一人の男性がいた、マルガリータが紹介してくれる、名はアクス、
副官で情報官と言われる立場らしい、防壁都市、内外の情報は全てアクスに集められ分析・対策・対処・作戦立案を任せられているらしい、
優秀すぎるな、軽く挨拶をする、
一瞬、嫌な感じがした、『鑑定されたか? 』気付かなかったフリをしたが、
マルガリータが突然アクスを叱責する、
アクスは驚いた顔をしたが、どうも演技くさい、
何食わぬ顔で「どうかされましたか? 」
と確認する『わざとらしいか? 』
「今、私の副官が貴方を鑑定したようだ」
「申し訳ありません、つい癖で」
「ああ、そうだったんですね、気にはしません、見知らぬ者に、警戒するのは当然でしょう」
マルガリータが改めて謝罪と礼を言う、
アクスも同じように謝罪している、
「この話はこれで終わりにしましょう」
俺がそう言うと、シフォンが申し訳なさそうに謝ってきた、
「気にはしていませんのでお気遣いなく」
改めて部屋へ通される、
部屋には大きめのテーブルと椅子が置いてあり、
部屋の壁には大きな地図が2枚、
1枚は防壁都市周辺、
もう1枚は大陸地図? だろうか、
コボルの街やそれ以外の街・村の場所が示され、
街道らしきものも記されている、
マルガリータは衛兵に飲み物を頼み、防壁都市周辺地図の前に立つ、食事の時に聞いた説明のおさらいをする、
ノックの音がした、
マルガリータが返事をする、衛兵が飲み物を持ってきてくれたようだ、テーブルに用意してくれる、マルガリータに促され全員席に座る、
人数は4人、
俺、シフォン、マルガリータ、アクス、
改めて防壁都市周辺の情報を教えてもらう、
シフォンに教えてもらった内容とほぼ同じだが、プラス魔獣の生息情報はありがたい、
やはり計画通り南から始めた方が良さそうだ、
「それではクーマ殿、どのような計画を立てているのかな? 」
俺は予定と理由を軽く説明する
「今日は探りも兼ねて、南の湖周辺の探索を中心に行いたいと思います、それ以外については今日の結果次第ですね、本格的な採集は後日にします」
「なるほど無理はしないと」
「はい、リスクは極力減らしたいので、今日は探索だけにします」
「わかった、くれぐれも気をつけて、と、言いたいところだが、その前に私と手合わせ願えるかな? 」
「お姉様! 」
「シフォン、お前もクーマ殿には無事に帰って欲しいだろ」
「それはもちろんです! 」
「だったらクーマ殿の実力を見ておかねばならない」
「しかしお父様が認め、正式に依頼をなされています」
「わかっている、父上の目を疑っているわけではない、ただ、クーマ殿は"F"ランク、ここでの依頼であれば最低でも"B"ランク以上だ、父上が認めた以上その実力を疑いたくはない、しかし防壁都市を守護するものとして・・・」
少し言い淀み俺に向かって、
「クーマ殿、失礼を承知で言わせてもらう、クーマ殿は"F"ランクなのだ、言いたいことはわかってくれるな」
「確かに・・・」
「クーマ様! 」
シフォンの言葉を制止して、
「わかりました、その手合わせ、お受けしましょう、ただ私は"F"ランクです、お見受けしたところ
マルガリータ様は"S"ランクでは? あまりにも実力差がありすぎます、それに、私は戦闘は苦手です、ですので、手合わせはせめて"A"ランクの方で
お願いします、それと私は逃げ切るということで
お願いします」
「そうだな、分かった、では私の副官アクスがお相手しよう、それと勝負は5分逃げ切れば、で、どうかな? 」
「わかりました、よろしくお願いします」
『まぁ、言いたいことは分かるけどね』
シフォンが不安そうにこちらを見る、
「大丈夫ですよ、頑張りますから」
「はい、信じています」
『さっさと行きたいのだが』
マルガリータとアクスに訓練施設らしき場所に案内された、何人かの衛兵が訓練している、
マルガリータが声を掛けると全員が集まってきた
『女性が多いな』
今から手合わせを行うことを告げると、皆が集まってきた、
アクスが声をかけてくる、
「手加減はしません」
「そう言わずに、お手柔らかにお願いします」
訓練場の真ん中に2人で向かう、お互い対面に立つ、俺は影のマントのフードを深く被り、マスクで口元を隠す、
アクスが聞いてくる、
「武器は良いのですか? 」
「戦闘では勝てませんよ、私の得意技は逃げて隠れることです」
マルガリータから声がかかる、
「両者向かい合って・・・はじめ! 」
アクスが真正面上段から剣を振り下ろす、
俺は視線と仕草で、左へフェイントを掛ける、アクスは上段から振り下ろしている剣を左へ振り抜く、『なんてね、フェイントがバレるのは織り込み済み』それ自体がフェイント、俺はアクスの前から完全に姿を消した・・・
俺は既にマルガリータの横に移動している、
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