第49話
いつになく真面目な顔で聞いてくる、
近くのテーブルには、マーリー、アニー、アルマ、セルファ、コニー、ジェルダもいる、皆真剣な顔をしている、
シフォンとノランは少し驚きながらも、何となく分かってしまった、
『皆も気づいたのね』
「皆座りなさい」
「はい、失礼します」
皆が座り、アルベルが問いかけてくる、
「女王、ノラン、決められたのですね」
「はい、ですが・・・」
アルベルが止める、
「女王、お話の途中、申し訳ありません」
「我らは、常に女王と共にあります、それはこれからも代わりません、女王がどんな決断をされても、です、おわかりいただけますか? 」
皆がこちらを見ている、
「ありがとう、私はこれからも、あなた達と共にあります、少し、わがままを言うかもしれませんが」
「はい、女王のわがままなら喜んで」
周りにいた他の者も笑顔で返す、
そこに、アクスがやって来る、
「私もご一緒させて頂いても宜しいですか? 」
「ええ、座って」
各テーブルには飲み物と軽食やスイーツが並べられ、さながらカフェの様になっている、あちらこちらで歓談の声と笑い声が聞こえる、
シフォンは思う、
『何て、穏やかで平和な日々だろう、私はこの平和を絶対に手放さない、一人たりとも民の平和は奪わせない、でも、私の魂はクーマ様と共に・・・』
「帰ってきたぞー! 」
皆の視線が一斉に門へ向く、
シフォンとノランが立ち上がる、
少しずつ門へ向かって歩き始める、
門が開く、
駆け寄ろうとした足が一瞬止まる、
門の先には、見たことの無い魔獣、
二人の前にアルベルとジェルダが立ち、身構える、他の者が二人の周りを固める、
「大丈夫です」
シフォンとノランが前に出る、
二人の目に涙がにじむ、
「「クーマ様おかえりなさい」」
「ただいま」
「ポニーあなた強くなったわね、その角はどうしたの? 」
グアゥ、クアッ! クアッ!
と鳴きながら近付いてくる、
「ポニーなのか? 」
アルベル達が驚いている、
「ええ、ポニーよ、立派になったけど」
クーマが後ろからマルガを降ろす、
シフォンがズタボロになった鎧を見て驚き、慌てて駆け寄る、
「魔法士を! 」
「お待ち下さい」
「えっ」
「大丈夫です怪我はありません、見た目は酷いですが、ハハハッ」
「本当に? 」
俺を見る、俺はゆっくり頷く、
シフォンは、ホッと胸を撫でおろす、
「クーマ様、コーヒーと甘いものを用意しています、ゆっくり話を聞かせてください」
『シフォンの顔が怖い、ノランも睨んでる』
「はい、でもその前に素材の処理を」
「処理は此方でやっておきますよ、クーマ様はさっさと出して下さい」
いつの間にか、ジェルダが横にいる、
「わかりました」
「お嬢様、宜しいですか? 」
「はい、お願いします」
「では、クーマ様、こちらへ」
ジェルダに案内され作業所へ向かう、
「女王? シフォン? 」
マルガが困惑している、
「マルガ、どちらでも構いません」
「あっ、すいません、では、女王で」
「女王、先に着替えさせていただいても宜しいでしょうか」
「あっ、ごめんなさい、着替えて下さい、あちらで待っています」
「あれは、どうしたのですか? 」
「後で説明します」
「はい、では、少し失礼します」
アクスが後を追う、
シフォンはポニーに向き直り、
「クーマ様との散歩は楽しかった? 」
ガウゥ〜ガゥガゥ、グァ〜、
「そう、良かったわね、次からは私も呼ぶんですよ」
グァ、
「お嬢様、私たちです」
「「そうだったわね、フフフ」」
クァックァッ、
一緒に笑っているようだ、
ノランが急に何か考え始めた、
「お嬢様、クーマ様の成果、見たいのですが」
二人は顔を見合わせ走り出す、ポニーが後を追っていく、
防壁の作業場
「クーマ様こちらへお出し下さい」
屋敷と違い、かなり広い作業場、
「ジェルダさん」
「早く出して下さい」
「あの〜、ちょ〜と狭いかも」
「えっ」ジェルダの顔が曇る、
ジェルダが無言のまま、探るように訓練所の方を指差す、
「・・・では? 」
「何とか」頭を掻く、
ジェルダは頭を抱える、
「取り敢えず出して下さい」
「わかりました」
俺は訓練所にレプタイルを取り出し始める、
ルビーを13体、続いてサファイアを15体、
ジェルダの顔色が変わる、
「ミー、スー、アン、すぐに応援を呼んできて」三人はダッシュで走っていく、
その横で俺は続きを取り出す、
ジェルダの顔つきが変わる、
取り出したのは、グルナ、10体、続けてスマラカタ5体
「クーマ様これは・・・」
「はい、大変珍しいとお聞きしています」
「珍しいどころじゃありません、出会うことすら稀、出会っても生き残れる可能性が限りなく低い、それがこんなに? 」
「私の師匠でも、グルナを見かけた程度、スマラカタに至っては話でしか聞いたことがない」
「みたいですね、じゃあこれはもっと珍しいかも」
ジェルダに緊張が走る
『まさか、伝説? 』
俺は最後のレプタイル、アダマスを取り出す、
「キャ〜」ジェルダが絶叫する、既に興奮は最大に達しているようだ、アダマスに飛びつき調べだした、
そこへ、ミー、スー、アン、が帰ってきた、ジェルダを見て固まっている、
「クーマ様どうされたのですか? 」
「あれを出したら、ジェルダさんが飛びつきました」
「あれ? 」
三人があれを見る、
「あれって伝説? 」
「キャ〜」二人が同じ様に飛びついた、
スーは俺に、
「後はお任せ下さい、お嬢様が待っています」
「わかりました、アダマスとスマラカタ、グルナの素材は確保しておいてください、後で加工しますので」
「わかりました」
「宜しくお願いします」
「はい」
そう言うとスーも飛びついた、
「クーマ様」
振り向くとそこには、シフォンとノラン
アルベルとメイド? 達が立っていた、
ポニーがシフォンとノランの間から顔を出す、
「これは・・・」
視線の先にはひときわ大きなレプタイルの死骸、死してなお、その鱗は光を受け、七色に光る、
「美しい」皆の声が揃う、それ以外の言葉が見つからない、
「皆さんも来たんですね」
俺の言葉に我に返る、
皆はアダマスに見惚れて気づいていなかった、訓練場を埋め尽くすレプタイルの死骸に・・・
「女王、これは」
「ええ、凄いですね」
「凄いどころではありません、伝説級がこんなに」
「クーマ様、こんなに? 」
「はい、一部ですが」
「一部ですか? これで? 」
「はい、後のやつは結構ボロボロで、回収出来ませんでした」
グアウッ、ポニーが吠える、
「そうだな頑張ったな」
俺はポニーを撫でてやる、多少厳つくなったが、やっぱりポニーだ、
「ポニー厩舎で待っていてくれるか」
ガウ、
「ゆっくり休め」
ガウゥー
ポニーは一度俺たちを見て厩舎に向かった、
「クーマ様、戻りましょう」
俺は二人に引かれて一緒にその場を離れた、
門へ戻ってくるとカフェ? の規模が大きくなっている、
メイドが駆け寄り、ひときわ大きなテーブルに、案内される、周りを見ると、見慣れない者がいる、
『人族、今までは関わってこなかったが』
席に着くと、シフォンとノランが寄り添い見つめてくる、その目には薄っすら涙が溜まる、
「心配かけました、すみません」
二人を抱き寄せる、
「心配はしていません、寂しかっただけです」
「そうです、置いて行くなんて」
「良いですか? 」
見たことの無い女性が声をかけてくる
『人族』
気づいたシフォンが紹介してくれる、
「彼女は人族のマイコです」
「人族? 」
「はい、お話したように、この都市には人族も暮らしています」
「マイコ、お父様とお母様を呼んでくれる」
「わかりました」
「それとクーマ様にはコーヒーを」
「クーマ様甘いものは大丈夫ですか? 」
「はい、好きです」
「ではケーキもお願い」
「はい、ご用意します」
「ありがとう」
「何故ご両親を? 」
「はい、クーマ様には全てお話ししましたので、ごまかす必要もないかと」
「ああ、そう言えば」
「すみません」
「お気になさらず、私は気にしていません」
暫くして二人の男女がコーヒーとケーキを持ってやって来た、
シフォンが声を掛ける、
「二人も座って」
「失礼します」軽く頭を下げ席に着く、
「紹介します二人は人族の代表、ケンとマイカです」
「こちらは」
「クーマです、宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しく」
俺はケン、マイカと握手を交わす、




