第41話
「はい! 」
ジェルダも二階へ、
二階は既に制圧済み、首のない死体が一つ、黒焦げの死体が一つ、氷の彫像が一つ、
『流石ノラン様、師匠たち、所詮雑魚では歯が立たない』
二人は既に大結界の魔法陣を構築している、
『七つの異なる魔法を重ねる大結界、この二人が万全の状態でも、ほぼ魔力を使い切る』
『今の二人は此処に来るまでに、かなりの魔力を消費している、今使えば命の危険すらある』
『だからこそ最後のキーワードを私に任せた』
ジェルダは魔力感知を使い状況を確認する、一階のホールに皆、集まっている、ホールに掛けた結界は問題なし、フォニア様はポニーと部屋の隅に隠れている、
『ポニーが前に立ちふさがっている、かわいい』
『師匠たちの魔法陣はもうすぐ完成する、これで一安心』
氷が砕ける・・・
吸生鬼が剣を振り下ろす、ノランが気づき剣を振る、吸生鬼の胴を両断する、
シャリーンの背中から血飛沫が上がる、シャリーンが一瞬怯む、しかし踏ん張り直し、呪文を継続する、
「シャリーン! 」
「師匠! 」
「ジェルダまだです! 」
「しかしその傷、早く治癒を」
「その余裕はありません、ジェルダよく聞きなさい、今の私では最後の魔法陣は維持できません、私が構築します、貴方が維持、発動を行いなさい」
「師匠・・・」
「良い弟子でしたよ、ミーニャ、お願いね」
「わかったは、後は任せて」
シャリーンとミーニャの魔力が上がる、最後の魔法陣が構築される、
ジェルダがそれを引き継ぎ、魔力を注ぎ発動させる、
ジェルダがキーワードを呟く、
「セブンス・オフリミッツ・エリア! 」
七つの魔法陣が光り輝き一つになる、
シャリーンの姿が薄れていく、
ジェルダが呟く、「師匠・・・」
シャリーンの姿が消える、
『結界が作動しない! 何で? 魔力不足? 』
ミーニャが、フッと笑う、
ジェルダが気づく、
ミーニャの魔力が上がる、自身の生命力を魔力に変えている、
「師匠・・・」
このままでは二人も師匠をなくしてしまう、ジェルダが魔力を上げる、
ミーニャが気づく、ジェルダは真剣な顔で師匠を見返す、
ミーニャが、また、フッと笑う、
その瞬間、結界が作動した、光が広がって行く、少しづつ加速しながら光が強くなる、光が弾ける、
ミーニャがその場に崩れ落ちる、
慌ててジェルダが駆け寄る、
ミーニャの身体は、一回り小さくなったような気がする、服がダブついている、顔に血の気が無い、呼吸は既に止まろうとしている、
「師匠! 」ジェルダが叫ぶ、
ジェルダの身体が光りに包まれる、その光はミーニャを包み込む、ミーニャの顔に血の気が戻る、
ミーニャが目を開きジェルダを見る、
「貴方やったわね」
「師匠・・・」
「シャリーンが、まだ来るなって」
自分を見て少し笑う、
「かなり若返ったみたいね」
ジェルダが笑う、
「私の妹みたいです」
「馬鹿弟子・・・」
その時、
一階に張ったジェルダの結界が破壊された、冒険者達が入口に殺到する、他の侵入経路からも入って来る、
直ぐに一階のホールは戦場になる、
アルベルが剣を振る、
『手応えがない? 数はいるがレベルが低い』
マーリーが叫ぶ、
「我ら近衛を舐めるな」
マーリー達の剣が走る、
一階ホールは一瞬で血の海に変わる、
アルベルが庭に飛び出す、
マーリーが後を追う、
残ったものは、もう一度ホールの防御を固め直す、
その後も数人の奇襲に会うが、ホールの防御は強く、襲撃者達では歯が立たない、
庭で奮戦する二人にも、敵は居ない、
程なく冒険者は殲滅され、一時的な休息となる、
アルベルとマーリーが屋敷に戻って来る、
アニー、アルマ、セルファが合流する、二階から、ノランとジェルダが合流する、
「ノラン、結界は? 」
「成功した、これで防壁外からの、攻撃も侵入も防げる」
「仲間はどうなる? 」
「ジェルダが認可するものであれば、結界は通り抜けられる、心配はいらない」
「そうか・・・先ずは一安心だな」
「シャリーンが消滅した・・・」
ノランが伝える、
「そうか・・・ミーニャは? 」
「ジェルダが助けた、見た目は少し変わったが、今はフォニア様と一緒にいる」
「そうか、救われたな、ジェルダ、よくやった! 」
「有難うございます・・・アルベル様、まだ油断は早いようです」
「何だ? 」
「人族が集まってきています」
「数は? 」
「100と200程」
「まだそんなにいたか、どれぐらいで着く」
「10分程、後は5分遅れかと、もう一つ悪い知らせが」
「まだあるのか? 」
「はい、残念ながら、街の方から反応が有ります、約500」
「500か・・・戦闘に立てるものは五人、一人100ちょっとか、アルベルが呟く」
「ねじ伏せてみせるわ」
ノランが答える、
「当然です! 」
皆が一斉に返事をする、
「アルベル様、ノラン様、最初の一撃は私が行います、ただ、一発撃ったら後ろに引っ込みます良いですか「
「策が有るのか? 」
「勿論」
そう言うと、ジェルダが庭に出ていく、
「ノランと私以外は、フォニア様を護れ、任せたぞ」
「はい! 」
「アルマ、セルファは二階を、アニーはここで打ち漏らしを潰す、いいな! 」
「了解! 「
アルベルとノランがジェルダの後ろに付く、
屋敷の門に人影が一人二人と、どんどん増える、
少しづつ庭に入り左右に分かれる、既に100人は超えている、
襲撃者が叫ぶ、「行くぞ、殺れ! 」
ジェルダがキーワードを唱える、風が巻き起こり、冒険者を飲み込み、真空の刃が切り裂く、風が真っ赤に染まる、そして炎が巻き上がる、炎が風に巻かれ、炎の風に変わる、
巻き込まれなかった襲撃者を炎が襲う、風と炎がはれた時、そこに動く者はいなかった、
アルベルとノランが呆れている、
ノランが言う、「お茶を用意するべきでした」
アルベルが笑っている、
ジェルダがふらつく、アルベルが支え抱きとめる、
「ジェルダ、お前を見直した」
「アルベル、ジェルダを中へ、直ぐに戻って来て、次が来る、ざっと見て、200程」
「わかった」
アルベルが屋敷に走る、
襲撃者達は魔法を警戒している、屋敷の塀に隠れこちらを伺っている、
庭にはノランが一人、剣を抜き動かない、
先の魔法攻撃を避けたものが言う、
「魔法士はもう居ない、いるのは戦士だけだ」
新しく来た襲撃者が言う・・・
「女か、楽しませてやるよ」
そう言って数名が走り出す、
ノランが一瞬揺れる、愚かな冒険者が肉片に変わった、
襲撃者達に動揺が走る、誰かが叫ぶ、
「たかが女一人ビビってんじゃねえ」
その瞬間、目の前にノランが居た、襲撃者の首が転がる、ノランはそのまま剣を振るい続ける、悲鳴と血飛沫が舞う、まばらになった敵の向こうに、新たな襲撃者の一団が見える、
「お茶の時間はお預けですね・・・」
『もう何人斬っただろう』
鎧を返り血が滴り落ちる、剣を振るうたび血が飛び散る、だが、まだ終われない、全て殲滅するまで、後ろでは戻ったアルベルが剣を振る、塀を越え、屋敷に向かったものはマーリー達が迎撃している、
どれぐらい経ったのか、目の前が赤い、
『夕方? そんなに戦っているのか? 』
目の前に剣を構えた襲撃者が見える、
『しまった! 』
襲撃者が崩れ落ちる、
いつの間にか、横にはアルベルがいる、アルベルの鎧も血で真っ赤に見える、
「ノラン大丈夫か! しっかりしろ! 」
そう言われ我に返る、
「アルベルすまない」
「お前は後ろに下がれ」
「いや、まだ大丈夫だ! 」
「いいから下がれ、暫くは俺の後ろを護れ」
「すまない、そうさせてもら・・・」
アルベルを見る、
「ノラン、すまないな、そうはいかなくなりそうだ」
アルベルの視線を追う、
「みたいですね」
目の前には、明らかに、今までとは違う集団がいる、同じ鎧に身を包み、統制された動き、明らかに訓練を受けた兵士、
『どこにいた!? 気配は無かった』
集団が動き始める、アニー、アルマ、セルファが合流する、
「お前達、フォニア様は」
「マーリーを残しました」
ノランが言う、
「ゆっくりお茶が飲みたかった」
アルベルが答える、
「後で、皆で飲むとしよう」




