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第39話

シフォンが語る昔話・・・


 私たちは以前、北の森に小さな国・・・

いえ、どちらかと言えば街ですね、

そこで王のもと、平和に暮らしておりました、

王は、周りから見ても、民の平和を願う、良き王だったと思います、

北の森も、今でこそ危険な森ですが、当時は此処まで、危険な森ではありませんでした、

 ただ、人族にとっては、大変危険な森で、来る者は無く、極稀に冒険者が来る程度、

 私たち夢魔族は、他者の生命力を分けてもらって・・・いえ、もともとは対象を襲い生命力を奪い、糧としておりました、しかし豊かな森も限界はあります、

比較的弱い魔獣ばかりを襲っていたので、数が減ってしまった・・・

殺しすぎたんです、その結果、簡単には生命力を得ることができなくなりました、

当然、その様な比較的弱い魔獣は、他のより強力な魔獣も餌にしていましたので、食料の奪い合いが始まります、

やむを得ず、我々もより強力な魔獣を狙うことになります、

しかし、今までのように簡単には行きません、

王は食料調達のため、グループを幾つか作りました、生命力を得るための、

そう、冒険者で言うところの、パーティーのようなものです、魔獣を討伐するのではなく、魔獣を捕獲する為のパーティー、

捕獲した魔獣は、街に持ち帰り、皆で分けました、今までに比べれば、得る生命力は減りましたが、それでも飢えるほどではありません、もともと普通の食事でも、生きていけるのですから、

そんな中、王に新たな力が目覚めます、自分を通して他者に生命力を分け与える力? 

クーマ様は一度ご覧になっていますね、ほんのり顔が赤くなる、

民もそれに気づき、捕獲した魔獣は王に献上されることになります、王は吸収した生命力を、皆に均等に分け与えました、それと同時に、食料となる魔獣の保護も始めました、

徐々に魔獣の数も増え始め、強力な魔獣との衝突も減っていき、それに合わせて人的被害も減っていきました、

暫くは平和な時が続きます、

しかし、一部の者はずっと、より強い魔獣を、狩りを続けていました、

理由は、強い魔獣の生命力・・・

高位の魔獣程、得られる満足度は高い、そして、歯車が狂い始めます、

ある時、一部のものに変化が起こります、内容は、他者の生命力とその能力を、自分の力にする、と言うものでした、

始めは誰も気づかなかった、事件が起きるまでは、

仲間同士の争いで、その力を使ってしまった、

使用した者の力は上昇し、暴力的になり、貪欲になった、

王はそれを許さず、捕縛し牢に閉じ込めた、

私たちは、王に忠誠を誓っており、忠誠が高ければ高いほど、王より得られる力は大きくなると、信じていました、

実際はそんな事はありません、与えられる力は全て均等、より高い忠誠心が、満足度を高めていただけ、

しかし、その一族はそれが理解できなかった、湧き上がる疑心は、徐々に妬みに変わり、王を敵視する様になる、

王に忠誠を誓う現王派と反乱者達、

小競り合いが増えます、しかし現王派は強かった、反乱者達を追い払い、平和を取り戻します、

しかし、その争いの中、投獄されていた、後の吸生鬼達の王、ドラーラが脱獄しました、

反乱者達はその後、姿を晦ましました、

それから街は、暫く平和な時を送ります、


逃走したドラーラ達、

「ドラーラ様、無事で良かった」

「今しばらくご辛抱を」

森を抜ける途中、幾度となく魔獣に襲われ仲間が失われる、それでも、ドラーラを守り森を抜ける、西の街道に出た時には、仲間は半分になっていた、

先導者が合図を送る、隠れていた仲間が現れる、

「ドラーラ様こちらへ」

案内された馬車に乗り込み一息つく、

「ドラーラ様、今はおやすみを」

「すまない助かった・・・」そのまま眠りにつく、


馬車は数日走り続け、大陸のほぼ中央、オーべジュエルの街にたどり着く、

街の端、人通りの少ない一角に少し大きな屋敷がある、馬車はそこへ走り込む、

メイドが迎える、吸生鬼だ、次々と人が集まる、皆、吸生鬼だ、そこに男が現れる、

『こいつは人族? 』

「ゲイターやっと来たか、こいつか特殊な力を持っているというのは、何だ、こ汚い奴だ、厩舎に井戸がある洗ってから連れてこい、病気になる」「ご主人様」

「何だ! 」

膝裏を蹴られ、その場に両膝を着く、

「貴様、何をする! 」

ゲイターが頭髪を掴み、後ろに引く、

「ギャ」喉元が剥き出しになる、

「な、何を」

「ドラーラ様、先ずはこちらを・・・」

恐怖に顔が歪む、

いい顔だ、その首筋に、ドラーラが喰らいつく、恍惚の笑みを浮かべ、男の生命力を吸い尽くす、

「はぁ~、久し振りだ、美味くは無いが、美味い」

ドラーラの身体に魔力が戻る、ドラーラの容姿が変わる、先程まで居た、主人と呼ばれた人族に・・・

周りの吸生鬼達が、一斉に跪き声を揃える、「「「我らの王に忠誠を」」」


シフォンが語る昔話・・・続き、

しかし、平和な時は動き始めます、

ある時、人族の冒険者パーティーが、西の町よりやって来ました、

冒険者は六人、リーダーの名はアーノルド、この者たちは強かった、西側の森の魔獣を討伐し、この地に野営地を作った、そして周辺の魔獣を討伐しながら野営地を拡大していきました、

アーノルド達は、魔獣たちの希少素材を王族や貴族相手に商売を行い、地位を確立していきます、冒険者も多くなり、仕事を求め、多くの労働者も集まって来ました、

数年も経った頃、野営地は一つの街と呼べる大きさになり、街に名前が付きます、アルケミと・・・

宿屋ができ武具屋や雑貨屋も出来上がり、街は繁栄していきます、その頃アルケミのギルドも出来ました、

ただ、冒険者達のレベルはそれほど高くは無く、主に街周辺の魔獣討伐と素材の採取が仕事でしたが、

それでも常に危険と隣り合わせの生活は、冒険者達のレベル上げには良かったようです・・・

死者も多くでたと聞いております、

その頃はまだ、我々との接触はありません、王も気にはしているものの、そこまで警戒はしていなかったと、

冒険者たちも何故か、ある一定のラインを超えることはなく、共に干渉はせずに、時は過ぎていきます、

街は定住する者も増え、少しづつ大きくなり、魔獣の侵入を防ぐ防壁を作り始めます、数年かけ防壁は今の形になります、防壁都市アルケミの誕生です、

領主はアーノルド、既に現役を離れ、行政に力を入れていきます、その頃東の森で希少金属の鉱脈が発見されます、領主は鉱夫を募り、鉱山の採掘を始めます、

しかし東に人が集まったことにより、魔獣が集まり始めます、領主はギルドに魔獣討伐の依頼を出し冒険者を集めます、報酬が高かった事もあり、また冒険者が集まります、既に、街に住んでいた冒険者のレベルは充分上がっており、元々いた冒険者が新しい冒険者を育てながら、依頼をこなしていきます、鉱山の採掘も軌道に乗り、冒険者達のレベルも上がり、最も多くの高ランク冒険者を持つ街となりました、

ある日・・・

冒険者の複数パーティーが、今まで超えたことのないラインを越え、我らの街に近付きます、

数日ごとに場所を変え、少しラインを越える、それが繰り返される、そんな日が続き民はあまり注意しなくなった、しかし王は何か嫌な予感に心がざわめく、そして運命の日・・・

二つの月が重なったあの日・・・


 皆が深い眠りについた頃、突然鳴り響く轟音、間髪入れず降り注ぐ火球、それは明らかに攻撃、

兵舎が炎に包まれ、兵が飛び散る、生き残った者も炎に包まれる、

街の至る所に炎が降り注ぎ、逃げ惑う人々、そこに襲撃者達がなだれ込む、老若男女関わらず襲いかかる、

生き残った兵が防戦に向かう、

地底宮にも報告が入り、王が兵に指示を出す、

「民を守れ! 」

複数の部隊が走り出す、

王妃が王に寄り添う、王は王妃を見て頷く、王妃の力が王に注がれる、それを受けた王が力を使い、民に分け与える、死にかけていたものが回復し、怪我人の傷が癒える、そこへ兵士達が駆けつける、

回復した者に民の避難を任せ、兵士達は襲撃者を迎撃する、

しかし小グループで、一撃離脱を繰り返す襲撃者達は、中々に手強く、兵士たちが翻弄されている、一進一退を繰り返すが決め手がない、

アクスが報告に戻って来る、

王が聞く、

「現状は? 」

「はい、襲撃者達は一撃離脱を繰り返し、兵士たちでは攻めきれません、現状は一進一退状態です」

「マルガ! 王宮の兵を連れて民を守れ」

「しかし、王の護衛が」

「心配いらん、民を守れ」

「はっ! 数人残します、ご無事で」

マルガが兵に声をかけ走り出す、


マルガがいった後、王宮ではアルベルを中心に近衛兵と王宮兵が王と王妃を護っている、

王と王妃は力をほぼ使い切っており、肩で息をして殆ど動けない、

その時、王宮前の洞窟の壁が崩れ、中から吸生鬼達が飛び出してくる、

「陽動か!? 近衛隊! 王と王妃を守れ! 」

アルベルが叫ぶ、

兵士達が襲い来る吸生鬼達を薙ぎ払い、倒してゆく、次から次へと襲いかかる吸生鬼達、

少しづつ、王達から引き離される、

近衛隊が抜けてくる吸生鬼達を薙ぎ払う、

そこに、穴から新たな吸生鬼達が現れる、

先頭にいるのは「ドラーラ! 」

王と王妃が立ち上がる「皆戻れ! 」

兵士達が王の元へ集まる、

王が小声でアルベルに告げる、

「娘を頼む・・・」

皆が一斉に王を見る

「王・・・」

「アルベル、お願いね」

「王妃・・・」

「アルベル、行け! 」

「ご武運を! 」

アルベルを先頭に近衛兵の一部が駆け出す、

「アクスだったかな」

王が声を掛ける、

「マルガに伝えよ、民を守りこの地を去れ」

「民を頼んだ」

「王・・・」

「それと、娘を頼む・・・」


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