第32話
「わかりました」
「クーマ様とポニーがじゃれていた、と聞いております」
「なるほど・・・で、どう感じた? 」
「どうとは? 」
「恐怖を感じたか? 」
「ああ、それはありません、初めは少し皆焦りはしましたが、クーマ様案件とお聞きしましたので」
「ああ、何故かジェルダだけは怯えていましたが」
「なるほど・・・」
「マーリー、あなた達は、クーマ様をどう見ますか? 」
マーリーは回答に困り周りを見る、他のメイドが、目をそらす・・・
『この、裏切り者』
「私は、危険を感じてはいません、むしろ、毎日が楽しくなりました」
「楽しい? 」
「はい、お嬢様もノラン様も、よく笑っておいでで、楽しそうですよ」
「「えっ」」シフォンとノランの顔が少し赤い、
真面目な顔になって、話を続ける、
「しかし、万が一にも敵であるなら、女王の逃げる道は守って見せます」
「逃げる? 」
「はい、数秒ですが・・・」
「ありがとう、そうならなければ良いわね」
「はい、・・・お願いします・・・」
アルベルトが聞く、
「他のものも同じか? 」
メイド達が頷く、
「じょ、シフォン、どうする・・・」
「わかりました・・・説明は必要なかったようですね」
「では、ジェルダ、あなたの言う影響を受けているとは、クーマ様のことね? 」
「そうです」
「どの様な影響を受けていると? 」
「え~と、全てを確認した訳では、有りません、
まず、私ですが、魔力が、上がっています」
「それは、結界の事? 」
「はい、全体に魔力が上がっています、なので、クーマ様の力が見えるようになりました、あの力は異常です、我々にとっては"きょうい"です」
「危険だ、と? 」
「それについては、わかりません・・・」
「脅威なのか驚異なのか・・・」
「同じではないのか? 」
マルガが聞く、
「前者であれば、逃げたほうが良いです」
「後者であれば・・・」
「後者であれば? 何だ? 」
「我々にとっては、良いことだと思います」
シフォンが聞く、
「あなたはどちらだと? 」
「現状では、後者だと思います・・・」
「ハッキリはしないと? 」
「はい、だから怖いんです・・・」
アルベルトが何か考えている・・・
「どうかしましたか? 」
「はい、先の戦闘で少し気になることが・・・」
「気になること? 」
「私も少し・・・」
「マルガも? 」
「はい、門の戦闘に駆けつけた時、一瞬、アルベルトの動きが止まった、そこに魔獣が襲いかかった、間に合わなかった・・・」
「しかし、気がつけば魔獣を切り捨てていた」
「あの時か、私も、斬りつけた魔獣が砕け散ったのを見て、一瞬我を忘れていた」
「魔力が上がっていたと? 」
「いえ、魔力と言うより、力と速度が上がっていた・・・」
ジェルダが口を挟む、
「ちょっと待ってください、力と速度、ですか? 」
「どうしました? 」
シフォンが問う、
「影響で魔力だけでなく身体能力まで上がるなんて・・・」
「そんな・・・加護? 」
「加護? 」
「今、言われた事を考えると」
「クーマ様の力は魔力だけでなく身体能力をも上げたことになります」
「魔法で魔力や身体能力を、一時的に上げることは可能で、ですが継続的に上げ続けるような魔法はありません、いえ、私の知る限りありません」
「それは、存在しない魔法を・・・」
ハッとなる・・・「だから、加護、と」
「はい」
「しかし、ならば、いつ? 」
「ですから、継続です・・・」
「継続? それは、ここに来てから・・・」
「多分・・・」
「護られていた? クーマ様に・・・」
「どうして? 」
「それに、先ほど申しましたように、全てを確認したわけではありません、しかし、影響はこの防壁都市に住むもの全てではないかと」
「全て・・・?」
「先の戦闘で、波動を感じた時、魔獣が怯え襲って来た、と・・・でも、ポニーは怯えてなかった」
「皆様はどうですか? 衛兵たちは? 恐怖を感じましたか? 」
アルベルトが答える、
「恐怖は無かった、むしろ、誰かに護られているような・・・」
シフォンとノランは顔を見合わせ、微笑んでいる、
マルガは遠くを見て、何かを考えている、
アクスは今まで起きたことを振り返り、ニヤリと笑う・・・
メイド達は何故か皆頷いている、
ジェルダが続ける、
「いつからかはわかりませんが、あの力は相手を限定しています、対象となる者には加護を、敵には恐怖を、そう言った力です・・・では、何故? 」
「何故? か」
「何故、我々全てに・・・です」
明け方近く、
防壁の建物内、この部屋には防壁の外が見える窓がある、
その前に座りシフォンは考える・・・
『結局答えは出なかった、クーマ様は何者なのか? あの力は何なのか? 結局謎が増えただけ』
「私は・・・」
『クーマ様が何者なのか? そんなことはどうでもいい』
『あの力は? それもどうでもいい』
『敵なのか・・・それもどうでもいい』と言うわけには行かない、
「ハッキリさせないと、いけない・・・」
ノックの音がする?
「誰? 」
「ノランです」
「ノラン? どうぞ」
「失礼します、お早うございます、眠れませんでしたか」
「分かっているでしょ・・・」
「わかっていますけどね・・・少し、お辛いですか」
「えっ」
「分かっていますよ」
「そうね、あなたには・・・」
(ノランは私の気持ちに気づいている、でも、あなただって)
「ところで、あなたの方はどうなの? 」
いたずらっ子の顔だ、
「なっ、何の事ですか」
声が裏返っている、
「あなたに分かるように、私にも分かるのよ」
「おっ、お嬢様・・・」
(私の気持ち・・・気づかれていた)
「お互い長い付き合いだもの、あなたには感謝しているわ」
「もったいなき御言葉」
「ノランそれはやめて、今の私はシフォンよ」
ノックの音がする、
二人は顔を見合わせる、
ノランが答える、
「どうぞ」
アルベルトとマルガが入って来る、
「どうしたのです、あなたが来るなど珍しい」
「はい、来たほうが良いかと思いましたので」
「どういう事ですか? 」
ノランが答える、
「クーマ君の件といえば宜しいですか」
シフォンの顔が少し険しくなる、
「女王、私は、いえ、私たちは皆、女王に忠誠を誓っております、お忘れですか? 」
「どういう事です? 」
「私も、女王とのお付き合いは、長いのですよ、ノランほどでは無いですが」
「私を含め皆、女王には感謝しております、
そして、女王が自由に生きることを望んでおります」
「それが出来ると・・・」
シフォンの顔に怒りが見える、
「アルベルト! 」
ノランの声が大きくなる、
それを無視して、応える、
「はい、今であれば可能だと判断します」
「可能? 」
シフォンの顔が困惑に変わる、
「どういう事? 」
「はい、女王の思い人に助力を願いますが・・・可能です、勿論私の考えが、間違っていなければの話ですが」
「聞きましょう・・・」
(私の思い人、クーマ様)
「昨日の一件、ジェルダの説明、それらから分かることは・・・」
「クーマ君は敵ではないであろうこと、そして我らに理解出来ない、強力な力を持っているということ」
「力? 」
「はい、我々の言う魔力とは違う力、女王は既に気づいているのでは? 」
「事実、女王の力は以前より上がっています、気づいていますか? 」
「あの包まれるような、温かい力、あれがクーマ様の力・・・」
「ノラン、あなたも影響を受けています」
「私も・・・ノランが胸に手を当てる」
「でも、何故? 」
「それはわかりません、クーマ君がそれに気づいているかもわかりません、ただ、ご自分の力はわかっているはずですが? 」
「さて、話を戻しますが、シフォン」
「はい」
いきなりアルベルトが父になる、思わず返事をしてしまった
「クーマ君の事が好きならば私は、歓迎しよう、屋敷のメイド達も歓迎してくれるだろう」
「それが、許されると? 」
「そうだな、クーマ君の好みもあるし」
「ちょっと! アルベルト! 」
ノランが声を大きくする、
「女王なら大丈夫ですよ、頑張って口説いてください」
「アルベルト・・・」
「ノラン」
「何ですか! 」
「恋敵が女王では不満か? 」
「あ、アルベルト・・・な、何を・・・」
「周りで見ていれば分かるさ」
ノランはシフォンの顔を見つめる、
シフォンが一言、
「ノラン負けませんよ」
「お嬢様・・・私も負けません」
「いいことだ、二人共、頑張ってください」
『ただし・・・もし敵ならば、私は全能力をかけて女王を守る』
「で、いいかな? 」
マルガが声を掛ける、
「どうした」
「そろそろ、クーマ殿の捜索指示を出そうと思うのだが、アクスが今にも飛び出しそうなんだ」
シフォンが答える、「魔獣の気配は? 」
「ありません」
「では、すぐに出発を、くれぐれも注意を怠らずに」
「わかっております」
「所でクーマ殿への対応はどうなされますか」
「当面は今まで通りに、昨日の件は適当に合わせなさい」




