第3話
「では、次はこちらへ」
そう言って、また、手をひっぱっていく、
倉庫を出て、屋敷へ向かうと屋敷の裏にメイドさんが見える、シフォンはそこに向かっているようだ、
近づくとそこは、洗い場のようになっている、
なるほど、採取から帰ったらここで洗って入ってこいと、
シフォンは、メイドに何かを伝え、俺に、また後ほど、と、言って先に、中に入ってしまった
「お客様、こちらへ」
メイドに促され足場で足を洗う、メイドの差し出したタオルを受け取り足を拭く、
(かなりの高級品だな、手触りがいい)
では、こちらへ、
入ったところはいくつも棚があり、倉庫のようだが、すごく、きれいに掃除されている、なんだか、いい香りもする、
「お履物を脱いで、お上がりください」
脱衣所? 風呂か?
「いいのですか? 」
「はい、自慢の浴場です」
『ありがたい! 』
「有難うございます・・・」
にっこり、無言
(あれ? 出ていく気配がない)
「早速使わせて頂きます・・・」
にっこり、無言
(なんか変? 出ていく気配がない)
「服は脱ぐのですよね? 」
(不思議な顔で)
「着たまま入るのですか? 」
(驚いた顔)
「いえ裸で入りますが・・・」
『いや、貴方がいたら脱げないでしょ』
「脱ぎます・・・」
「はい」
「脱ぎますよ」
ズボンに手をかける
「ああ、失礼しました」
『わかってくれたようでよかった』
「お気にせずにどうぞ」
にっこり、笑う
『いや、こっちがきにするんですけど』
「服を洗濯させていただきます」
「いえ、自分でしますので」
「それでは主人に怒られます」
きっぱり言われた
「わかりました、しかし替えの服を持っていませんので」
抵抗してみる
「こちらで用意いたしますのでご心配なく」
(逃げようがない)
「それでは失礼します」
服を脱ぐ、脱いだ服はメイドさんが大事そうに、まとめてくれている、
非常に申し訳ない、流石に下着は申し訳ないので、棚に置こうとするとすぐに取られた、
スッポンポンを見られるのは、非常に恥ずかしい、
すぐに風呂に行こうとすると、メイドさんが不思議そうに服を見ている、
「何か変ですか? 」
「見たことのない生地が使われています」
そういえば、確かに俺の服はこの辺りでは見ないな、いや、コボルの町にもいなかった・・・俺は一体どこから来た?
メイドさんは慌てた様子で
「申し訳ありません冒険者の装備は詮索しないのがルールでしたね、どうぞ、ごゆっくりお入りください」
そう言って風呂の扉を開けてくれた
そこには、別のメイドさんが二人待っていた、思わず戻ろうとしたが、いつの間にかもう一人、メイドさんが後ろに立っていて逃げ道をふさがれた
「どうぞこちらへ」
三人そろって、ニッコリ、笑う
(諦めました素直になりましょう)
居心地の悪さを感じながら、三人の女性に体を洗われていると、ふと気づいたことがある、石鹸の匂いがしない、いや、かすかに匂いはするが、どこかで嗅いだことがある、
「薬草! かすかに薬草の匂いがする」
「気づかれましたか? 」
「これは薬草の石鹸ですか? 」
「そうです、特殊な製法ですが、薬草から作られた石鹸です、これなら匂いがあっても魔獣に気づかれにくいでしょ」
にっこり笑う
「たしかにこれなら安心して使えます」
「それだけじゃないんですよ」
「と、いいますと? 」
「回復効果もありますので疲れが取れます」
「なるほど、道理で落ち着くと思いました」
「お褒めにいただき光栄です、この街の特産ですから」
お気遣い有難うございます
「さ、流しますね」
後はゆっくり湯にお浸かりください
「はい」
湯に浸かって足を伸ばす
(極楽だなこの湯にも薬草が使われている)
「気づかれましたか? 」
「この湯にも薬草が? 」
「はい、使っております」
見を閉じホッとする・・・何か視線を感じる・・・そっと目を開く、メイドさん達がこちらを見ている、潤んだ瞳で舌なめずりしている、
(なんかやばい?)
「上がろうかな」
「もうよろしいのですか? 」
「はい十分温まりました」
「わかりました」
(ちょっと残念そうに見える
何を企んでいた?)
風呂から上がり、開けてくれた扉を出ると脱衣所には、先ほどのメイドさんが待っていて、水を差し出してくれた、
それを受け取るよく冷えている、すかさず同じく風呂から上がった、メイドさんが体を拭き始める、水を用意してくれたメイドさんが服を渡してくれた、
新しい服、「これは? 」
「お預かりした服は洗濯をしておりますので、新しいものをご用意しました」
「有難うございます」
「サイズは合っていると思いますが」
着てみるとゆったりとした着心地
「部屋着にお使いください」
「何から何までありがとうございます」
「それはご主人様とお嬢様にお伝え下さい」
「わかりました」
「ではお部屋にご案内いたします、どうぞこちらへ」
屋敷の中を移動して2階へ、
案内された部屋は広く大きなベッドに応接セット、いかにもふっかふっかなソファー、窓際にもテーブルがある、元々高台にある屋敷なので、壁を越え森や遠くの山々までよく見えるいい景色だな、(どんな高級宿だよ)
初心者冒険者が泊まっていい部屋じゃない・・・
「あの、この部屋は何かの間違いでは? 」
「いえ、お嬢様からはこちらにご案内するように
申し使っております」
「そ〜、ですか・・・」
「まもなくお食事の準備が整います、後ほどお迎えにあがりますので、しばしご休息を」
「はい」
「失礼いたします」
メイドさんが部屋から出ていった
改めて部屋を見回してみる、広い、落ち着かない
窓際の椅子に腰掛け、外の景色を眺める、防壁の上には少なくない数の衛兵がいる、
ふと思い出す、この屋敷のもてなしは、はっきり言って異常だな(苦笑い)すごくありがたい、
(何もなければ・・・)
部屋の扉がノックされる、シフォンの声が聞こえる、
「どうぞ」
扉を開けシフォンが入ってくる、真っ赤な薄手のドレスが目を引く、肩から胸元に流れるような金髪が美しい、そこにはイタズラっ子なシフォンの姿はなく大人の女性がいた、
一瞬固まってしまった
お食事の準備ができました、どうかされましたか?(一瞬我を忘れ見惚れた)
シフォンの後ろにいたメイドさんが
「お嬢様に見惚れましたか? 」
と、からかってくる、
シフォンは子供のようにメイドに抗議している、
その顔はどこか幼くほんのり赤い、先ほどまでのシフォンだ、
案内され食堂に入る、そこには、領主アルベルトがすでに座っていた、
「お待たせして申し訳ありません」
「気にするな私も席に着いたところだ」
向かいの席に案内され席に着く、すかさずシフォンが俺の横に座る、向かいにいる父親と、軽くあいさつを交わし、こちらを見てニッコリと笑う、
また、いたずらっ子の顔だ、
奥から食欲の湧くいい匂いが漂ってくる、アルベルトが俺に向かって、
「君はメイドたちに気に入られたようだな、この香りを嗅げばわかる、しっかり食べてくれ」
「有難うございます」
出てきた料理は大変美味しく
(精力がつきそう・・・)
シフォンが横で何かと世話をしてくれる
三人で雑談をしながら、楽しく食事を終えた、食後すぐにアルベルトは、仕事ができたからと書斎に戻っていった、何でも俺がきたからギルドの仕事をしなければならないらしい、
『申し訳ない』
俺とシフォンはメイドに促され
お互い部屋に戻った