第29話
力はドンドン減っていく、
既に体は痩せ細り、艶とハリを失った鱗は、
パリパリとひび割れながら風化していく、
『何が起きている? 』
『魔力を吸われている何処から? 』
自分の体を見る、『そこかっ! 』
喉元に突き刺さる指先から急速に力が吸われている、
『こやつが吸っているのか? 』
いや、今はそれどころではない、
早く振りほどかなければ、
しかしすべてが遅かった、
もう振りほどく力どころか
体を動かす力もない
『どうしてこうなった? このままでは消滅する
消滅すれば復活は二度とない』
『いやじゃ、消滅などしとうない』
思わず声が、『”助けて』 が出そうになる、
直ぐにしまったと思う、
人族ごときに助けを求めるなど、
死んだほうがましだ、
意識が遠のく消滅する、
最後の思いが後悔とは・・・
いきなり意識が覚醒する、
『ここは何処だ? 何があった? 』
一瞬状況が把握できない、
力が戻ってくる、『戻ってくる? 』
喉元に痛みが走る、『うぐっ』
目を向ける、意識がハッキリする、
そうだ、こいつだ、こいつに力を全て吸われた、
『吸われた? 』
どういう事だ? また混乱する、
しかし状況は先ほどとは違う、
どんどん力が溢れてくる、
『こやつの力を吸い取っている? 』
何でもいい今ならこやつを葬れる、
『この力なら・・・止まらない? 』
もういい、これ以上は必要ない、
『やめろっ! 』魂が叫ぶ、
それでも魔力の注入は止まらない、
『ギィガァー・・・溢れる! 』
力が制御できない、
吸い取っているんじゃない、
『注入されているっ!? 』意味がわからん、
溢れる、もう限界だこれ以上は、身体が持たない、
ビシッ、はち切れんばかりの体から、鱗が飛び散る、
早く魔力を放出しなければこのままでは、間に合わない、
魔法を唱える、自信もダメージを受けるほどの威力、
この辺り一面を消滅させるほどの強力な魔法を解き放つ・・・?
『何も起きない? 発動しなかった? 』
力も減っていない、まだ増え続けている、
周りの景色が赤黒く染まる、
目が飛び出しそうだ、血が噴き出す、
限界だ身体が裂ける、
知らぬ間に声にならない、断末魔の悲鳴を上げる、意識が遠のく、
気が遠くなる、『死ぬ・・・』
「ギィヤァー」まだ激痛が体を襲う、
『悲鳴を上げる? 死んだはず? 」
裂けた自身の体が見える、痛みが薄れ急速に傷が癒える、
『何が起きている? 』
『力が減っていく放出に成功した? 』
だが魔法は発動しなかった、
頭によぎる認めたくない現実、
首筋に痛みが走る、食い込む指先、
急激に力が抜ける・・・
また力を吸われている、
急激に力を失っていく、『現実? 』
体の自由が利かなくなる、
デジャヴ、先程も見た光景、
消滅を覚悟した、あの瞬間を思い出す?
『冗談ではない、我をいたぶるつもりか? 』
『たかが人族が我を嬲るだと? 』
『許さん万死に値する、殺す』
『これ以上ない苦痛を味あわせてやる』
しかし時は冷酷にヘビに微笑む、既に力は残っていない、
先ほどと同じく消滅まであと一歩、
悔しい鱗が砂となり崩れてゆく、
あの美しかった鱗は艶を失い砂となり、
崩れていく・・・
『なんでこうなった? 私は何をしている? 』
『消滅する? 消えてしまう? 』
『いやじゃ消えとうない』
『誰か我を助けよ・・・』
「助けて、助けてっ! 」
気がつけば、
かすれるような声で、叫び続けていた・・・
温かいものが我を包む、
『夢か? 嫌な夢じゃ』
首筋に痛み・・・『何故? 』
また力が注がれている?
意識が一気に現実に引き戻される、
このままでは先程の二の舞い、
『どうする? どうすればいい? 』
魔法は使えない、
ならば力で振り払うのみ、
『たかが人族、我の力に叶うはずがない』
痛みに堪え渾身の力を使って首を振る、
こ奴を弾き飛ばし、地面に叩きつける・・・
『動かない? 』
『びくともしない』「なぜじゃ? 」
奴の顔がにやりと笑う、
その途端全身に怖気が走る・・・
『敵わない、こ奴には何も出来ない』
「なぜじゃ? 」
『この我が人族如きに敵わない? 』
「なぜじゃ? 」
注入される力が全身に行き渡り暴走する、
必死に抑えようと、もがく、しかし力の注入は止まらない、
限界まで膨らんだ体が悲鳴を上げる、
ブチッ、鱗が弾け飛ぶ、
ブチッ、ブチッ、と次から次に弾ける、
限界を超えている、
恐怖? が魂の扉を叩く、
このままでは身体が弾け飛ぶ、
それを察したように、奴は話しかけてきた?
「このまま弾け飛べ、ここいらの魔獣には、いい餌になる」
周りには大小様々な魔獣が身を潜め餌を待っている、
「お前は食われるのさ」ニヤリと笑う、
頭に情景が映る、想像してしまう、
魂の扉がこじ開けられた、
恐怖がなだれ込んでくる、
魂が恐怖に食われる、
弾け飛び肉片となった自身を食われる光景が頭から離れない、
我は絶叫し、助けを懇願していた、
「やめて下さい! 助けて下さい! 」
「貴方に従います! 助けて下さい! 」
「どんな望みも叶えます、助けて下さい! 」
力の注入が止まる、
希望が見えた、
「苦しい助けて! お願いします! 」
既に自尊心は無い、恐怖に全て喰われた、
今はこの恐怖から解放されたい、
奴の声が聞こえる
「どんな望みも叶える、と言ったか? 」
「はい、申しましたっ! 貴方様の望みを叶えます! 」
必死で訴える、
奴は冷たい視線で我を見た、
ニヤリと笑う、
「ならば・・・死んでくれ」
そしてまた魔力注入が再開される、
絶望が襲う、魂が壊れる、
「いやじゃ〜! いやじゃ〜! 喰われたくない! 死にとうない! 助けて! 助けてぇっ!
お願いです、もう身体が持たない! 身体が弾けるぅ! 」
「こんな惨めな死に方はいやじゃぁ〜! 」
もう自尊心も恥もない必死に訴える、
身体は既に限界、いつ裂け飛んでもおかしくない、
その時奴は笑った、確かに口許に笑みを浮かべた、全てが終わった奴の力が増大する、
トドメを刺すつもりだ、既に悲鳴も声にならない、意識が遠のきすべてが赤に染まる、
我は裂け飛び真っ赤な血が夕日を染める、
・・・ここは何処じゃ?
・・・何があった?
・・・夢を見たのか?
思わず身体を見る傷はない、
周りは暗く星が見える夜風が心地よい、
『どうなっている? 』
身体を動かしてみる、痛みは無い・・・
その時体が硬直する、怖気が走る、
恐怖で頭の芯が痺れる、ゆっくり恐怖の方を見る、
あ奴がいる、こちらを見下ろしている、
この距離なら一飲みに・・・愚かな考えは止めよう、
既に我はこの方の下僕、礼を欠いてはならぬ、
「ご主人様、お待たせ致しました、ただいま目覚めました、ご主人様の慈悲に感謝いたします」
「気にするな」
「俺はしばらくの間、この街で仕事をする、内容は素材集めだ、お前といちゃついたおかげで予定が狂った」
「申し訳ございません」
「なので修正する、まず、周りの観客を始末しろ、お前を食いに来た奴らだ、遠慮はいらん、それが終わったら俺を小屋まで運べ」
「分かりました、今暫くお待ちください」
「ああ」
ヘビは怒っていた、我を喰おうなど、身の程を知るが良い、逃げ惑う魔獣、辺りに悲鳴が響き渡る、ヘビは蹂躙する自身に恐怖を与えるもの、慈悲を与えた者に仕えるため、待たせることはできない、暫くして静寂が訪れる、辺りには魔獣たちの屍があるのみ・・・
「お待たせ致しました、私の背にお乗り下さい」
「うむ」
俺はヘビの背に跨がる、
ゆっくりヘビが移動を始める、
首をもたげ俺が乗りやすいように注意しているようだ、
「この辺りの魔獣はどうなっている? 」
「はい、我がいる間は近づいては来ないでしょう」
「そうか」
草むらを抜け湖畔を移動する、
程なく小屋が見えて来る、
ヘビが止まる、前には結界がある、
「ご主人様、結界を破壊しても宜しいですか? 」
「いや今は辞めておこう、ここで構わん、降ろせ」
「畏まりました」
俺は蛇から降り、蛇に指示を出す、
この辺りを探索・採取をする間の警護、
ただし、俺以外のものにその姿を見られぬように注意する事、
「畏まりました」
「今日は遅くなった、今夜は小屋に泊まる」
「あ~そうだ忘れていた、お前といちゃついていた時に、採取した素材を駄目にした、少し集めておいてくれ、丁寧にな、集めすぎるなよ」
「承りました」
「では、行け! 」
「はっ! おやすみなさいませ」
俺は小屋に入る、取り敢えず今は寝るとしよう、
『シフォンは怒っているかもな・・・連絡しようもないが、今日は疲れた』
睡魔が襲う・・・




