第27話
その後のアクス、
屋敷から門に向かう道中、
先ほどの強力な力の事を考える・・・
『いったい何をしたらあんな力が出る? 』
『門まで届くあの力の波動は、まるで"S"ランクオーバーの戦い、いや、そんなランクで測れるような力ではなかった』
『全てを諦めさせるような力・・・』
『王とノラン様はあの場にいた、何があったかは知っているはず、その上で何も聞くなと・・・明日説明すると・・・』
「はぁ〜」思わずため息が漏れる、
「逃げるのも一つの手段か・・・」
街が見えてくる、取り敢えず今は、マルガ様に報告を・・・
街を抜け門が見えてきた、何人かが戦闘装備で集まっている、マルガ様の姿もある・・・
『そりゃ当然か』
マルガがこちらの気づいた、駆け寄り馬を降りる、
「アクス何があった? 」
「クーマ殿案件です・・・」
マルガは頭を押さえる、
「やはりか・・・」
「被害は? 」
「何人か倒れた」
「だめですね、鍛え直さないと」
「メイドたちは焦ってましたけど、誰も倒れていません」
「そうか、本当だな、訓練を見直さないとな」
「慣れもあるのでしょうけど」
「慣れか」
「はい、それと、女王から伝言が」
「女王は、なんと? 」
「明日、クーマ殿が出発したあとに、とのことです」
「・・・わかった」
「全員解散! 今日はよく休息をとっておけ! 」
「はっ! 」
衛兵は駆け足で戻っていく、
「アクス」
「はい」
「コーヒーでも付き合え」
「コーヒーですか? 」
「嫌か? 」
「いえ、喜んでお供します」
二人は建物へ消えていく、
どうしたのか左腕が重い、違うな、何かに掴まれている、そっと触ってみる、温かい、ムニッとした感触・・・『何だ? 』
少し力を入れる、
「あ~ん、クーマ様、だめですぅ〜 」
『シフォン・・・? 』「シフォン! 」
慌てて飛び上がる、
何故かベッドにシフォンがいる、
『えっ、昨日やらかした・・・』
必死で記憶をたどる・・・
『いや、昨日は間違いなく一人で寝た』
「間違いないはず? いや、絶対に一人だった」
「シフォンさん・・・」
取り敢えずシーツをかける、
「シフォンさん」
薄っすら目を開け俺を見る、
「あっ、クーマ様だぁ〜、来てくださったんですね」寝ぼけて抱きついてくる、
『えっ、ここは、シフォンの部屋? 』
慌てて周りを見る、
『いや、ここは俺の部屋だ』
「シフォンさん、起きてください、シフォンさん」ゆすってみる、
首がグラグラしてる、目を覚ます、
「何? 」
「あっ、クーマ様、何があったのですか? 」
まだ寝ぼけているようだ・・・俺から離れ周りを見て、状況を知る・・・
見る見る顔が赤くなり・・・絶叫!
「キャ〜・・・」
扉が開き、ノランが飛び込んでくる、
状況を見て、一瞬動きが止まる、すぐに我に返り、『このエロ娘! 』
シフォンを捕まえて部屋から出ていく、
部屋を出る時、ノランが、
「間もなく朝食です、申し訳ございませんが、
食堂まで先に行って頂いても宜しいでしょうか? 」
「わかりました・・・」
「さぁ、行きますよ! 」
「クーマ様ぁ〜・・・」
シフォンは連行されていった、シフォンの叫びが廊下にこだましたように感じた、
朝食の席で
今朝もアルベルトはいない、
「先に食べられますか? 」
メイドが聞いてくる、
「いえ、待ちます」
一人席に座って待っていると、慌てた様子でシフォンが入って来る、
「クーマ様お待たせしました」
ノランも居る、
「いえ、いま座ったところですよ」
ノランが厨房に声を掛ける、
「ミーニャ、大丈夫? 」
「はい、準備は出来ています」
そう言うと料理が運ばれてくる、
「こっ、こっ、これは・・・」
テーブルに料理が並べられていく、
真ん中には、大きな皿に、魚の切り身が並べられている、昨日の塩焼きもある、
「これはすごい・・・」『朝食だよな? 』
「あの、シフォンさん」
「はい! 」
「朝食ですよね? 」
「そうです、朝食です」
「さぁ、食べましょう」
「いっ、頂きます・・・」
その時、厨房からいい香りがする、
出てきたのは・・・『スープ? 』
また俺の知らない記憶が反応している、
俺の前に置かれたのは、
『スープと白い穀物? 』
「クーマ様」
シフォンが二本の細い棒? 枝? でも記憶にある・・・『俺の知らない記憶に・・・』
渡された、棒? ハシと言うらしい、それを手に取る・・・
「クーマ様、こう使うんですよ」
そう言って使い方を教えてくれる、
俺は言われた通りにハシを持つ、何度か動かしてみる、違和感がない・・・
シフォンが取り分けてくれた切り身を言われた通りに緑の葉っぱ? と、昨日の黒い液体をちょっとつけて、口に運ぶ、
「う〜ん、うんまい! これは美味い! 」
次を口に運ぶ、
「美味い! 本当に美味い! 」
横ではシフォンが満面の笑みで見ている、
「クーマ様、このゴハンとすごく合いますよ〜」
ごきゅっと、つばを飲む・・・
ゴハンの上に赤い切り身と緑の葉っぱ黒い液体をちょっと付ける・・・
一緒に口に放り込む・・・『うまい・・・』
「美味い! 」
次から次に口に運ぶ・・・
『美味い、美味くて止まらない、あっ、忘れていた、さっきのスープ・・・一口飲む、あ〜〜優しい、美味い、料理とすごく合う』
ほっとしていると、横でシフォンが笑っている・・・
「あっ、すみません・・・美味しくて我を忘れてました・・・」
「いいんです、そんなに喜んで頂けるなんて、用意させて頂いてよかった」
「有難うございます、生の魚がこんなに美味いなんて、感激です」
「生で食べたことがあるのですか? 」
「ええ、最も捕まえた魚を、丸かじりしただけですが、ハハハ・・・」
「丸かじりですか・・・」
「アハハハ・・・」
奥でノランの笑い声がする・・・
食後のコーヒーを頂いてから、部屋に戻り今日の準備を始める、
「クーマ様、今日も早くお帰りくださいね」
「はい、しかし、昨日は予定より、だいぶ少なくなってしまったので、今日は頑張らないと」
「無理はだめです! 」
「わかっています、無理はしません」
「今日も湖ですか? 」
「はい、岬の素材を採取したいので、最も、行ってみないとわかりませんが」
「クーマ様・・・」
「大丈夫です、無理はしませんから」
「絶対ですよ」
「はい、では、行くとしましょう」
屋敷を出ると、いつものように、ポニーが、待っててくれる、今日はノランも馬を引いている、
「ノランどうしたの? 」
シフォンが問いかける、
「はい、アルベルト様から、水槽の魚を取りに行くように、申し使っておりますので、ご一緒させて頂こうかと」
「お父様から? 」
「はい、クーマ様にと・・・」
「そう、わかったわ、後でお父様にはお礼を言わないと」
「さぁ、クーマ様行きましょう」
「はい、お願いします」
シフォンと俺はポニーに乗る、三人は門に向かう、
門の前に人だかりが見える、
見知った顔ぶれが、難しい顔をして何かを話している、その周りを衛兵が走り回っている、何かあったのか、
「シフォンさん」
「はい」
ポニーが少し早足になる、
アクスがこちらに気づいた、
「お嬢様、お早うございます」
「お早うございます、何があったのですか? 」
「おー、シフォン来たかクーマ君も一緒だな」
「おはよう、シフォン、クーマ殿おはよう」
「お早うございます、何かありましたか? 」
「うむ・・・アクス、説明を頼む」
「はい、実は、朝から魔獣の気配が一切感じられません」
「気配が無い? 」
「そうです、気配がない・・・」
「今、探知に長けたもの数人で調査しています、少し時間がかかると思いますので、詰所でお待ち願いますか? 」
俺は少し気配を探ってみる、確かに周辺に気配が無い?
「ポニーどうだ? 」
グアウ、
「そうか、お前も感じないか」
「クーマ様・・・」
「はい」
シフォンがこちらを見ている、
「今日はおやめになりますか? 」
少し考え・・・
「いえ、調査結果を聞いてからにします」
「それが良いだろう」
「お姉様・・・」
「クーマ殿そういう事だ、暫く時間はかかる、コーヒーを用意しよう」
「有難うございます」
「クーマ様」そう言って俺の腕を掴む、
「行きましょう」
「はい」




